賃金台帳の虚偽記載で書類送検|労働時間の過少記載は「形式ミス」では済まされない
2025年12月11日、労働新聞ニュースで報じられた 「賃金台帳の虚偽記載で送検 労働時間を過少に 大淀労基署」というニュースは、 飲食業を含むすべての事業者にとって、決して他人事ではありません。
- 毎月の労働時間を
- 1人につき数十時間も過少に記載
- 賃金台帳に虚偽の内容を記載していた
会社と取締役個人が、労働基準法第108条違反等で書類送検されました。
「賃金台帳の記載ミスくらいで、送検までいくの?」 そう感じた飲食店経営者・店長の方も多いのではないでしょうか。
しかし、今回の事件が示すとおり、 賃金台帳の虚偽記載は、重大な労働基準法違反です。
本記事では、飲食業専門の社会保険労務士として、
- 賃金台帳とは何か
- なぜ「虚偽記載」が送検にまで発展したのか
- 「遅滞なく記入」の本当の意味
- 飲食店で起こりがちな賃金台帳トラブル
- 労基署調査で実際に見られるポイント
- 今日からできる実務対策
まで、できるだけ分かりやすく、実務目線で詳しく解説します。
目次
事件の概要|賃金台帳の「虚偽記載」で書類送検
奈良・大淀労働基準監督署は、 木材加工業の有限会社と、その取締役を、労働基準法第108条(賃金台帳)違法残業などの疑いで奈良地検に書類送検しました。
ポイントとなったのは、毎月の労働時間を実際よりも数十時間少なく意図的に賃金台帳へ記載していたという点です。
労基署は、「虚偽記載の場合も、記入すべき事項を正確に記入していないとして法違反になる」
と明確に判断しています。
つまり、❌ 書いてあるからOK ❌ 後から帳尻を合わせればOKではない、ということです。
賃金台帳とは?|飲食店でも必須の法定帳簿
賃金台帳は「作ればよい書類」ではありません
賃金台帳は、労働基準法第108条で作成・保存が義務付けられている、 れっきとした法定帳簿です。
- 正社員
- アルバイト
- パート
- 短時間労働者
飲食店でも、すべての労働者について作成が必要です。
記載が必要な主な項目
賃金台帳には、以下の事項を記載しなければなりません。
- 氏名
- 性別
- 賃金計算期間
- 労働日数
- 労働時間数
- 時間外労働時間数
- 深夜労働時間数
- 休日労働時間数
- 基本給
- 各種手当
- 控除額
特に重要なのが、 労働時間の正確な記載です。
「遅滞なく記入」とはどういう意味か
今回の事件で、労基署が特に問題視したのが、「遅滞なく記入」といえないという点です。
「遅滞なく」とは?
法律上の「遅滞なく」とは、「意図的に遅らせない」、「事後的な修正を前提としない」、「実態に基づいて速やかに記入する」という意味を持ちます。
つまり、❌ 残業時間を削ってから記入 ❌ タイムカードと合わないけどそのまま ❌ 後で直す前提で仮の数字を書くこれらはすべてアウトです。
なぜ「虚偽記載」は特に重いのか
単なる記載漏れや計算ミスと異なり、 虚偽記載は「意図性」が疑われます。
今回のように、毎月、複数人、数十時間単位で過少記載している場合、 「たまたま」「うっかり」では済まされません。
労基署の視点
労基署は、賃金台帳を「賃金不払い残業」、「違法な長時間労働」を隠すための偽装と見ます。
その結果、複数の違反ががセットで送検されることも珍しくありません。
- 賃金台帳違反
- 残業代不払い
- 労働時間管理不備
飲食店で特に起こりやすい賃金台帳トラブル
タイムカードと賃金台帳が合っていない
- 打刻はしている
- でも賃金台帳は別管理
このケース、非常に多いです。
サービス残業を前提にしている
- 開店準備
- 閉店作業
- 清掃
これらを「労働時間に含めていない」ケースは要注意です。
シフト制で管理があいまい
- 予定シフト=労働時間
- 実働時間を見ていない
これも典型的な指摘ポイントです。
労基署調査で実際に見られるポイント
飲食店への労基署調査では、以下の書類をが突き合わせて確認されます。
- タイムカード
- シフト表
- 賃金台帳
- 雇用契約書
そこで、「タイムカード:月220時間」、「賃金台帳:月180時間」のようなズレがあると、 一発でアウトです。
違反した場合のリスク
刑事責任
- 書類送検
- 罰金刑の可能性
企業イメージの低下
- 社名報道
- ネット記事への掲載
金銭的リスク
- 未払い残業代の遡及請求
- 付加金
飲食店経営にとっては、 致命的なダメージになりかねません。
今日からできる実務対策
✔ 労働時間の「実績」で管理する
- 打刻=労働時間
- シフトはあくまで予定
✔ 賃金台帳は毎月確定させる
- 後回しにしない
- 修正前提で作らない
✔ 残業・深夜・休日を正しく区分
飲食業は、深夜(22時〜5時)、休日労働が特に多いため、要注意です。
当事務所からのアドバイス|「今は大丈夫」が一番危険
今回の事件は、「うちも似たようなことをしているかも」と感じた方ほど、 早めの見直しが必要です。
賃金台帳は、労基署調査、労働トラブルの際に、必ず証拠として使われます。
無料相談のご案内|飲食業専門社労士が対応します
- 賃金台帳のチェック
- 労働時間管理の見直し
- 労基署対応の事前対策
飲食業に特化した社会保険労務士が、 実務目線でサポートします。
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