残業80時間超が2カ月以上連続~千葉県職員101人問題から考える「長時間労働」と飲食店労務管理の落とし穴~
2024年12月、千葉日報オンラインにて「残業80時間超が2カ月以上連続した千葉県職員が101人いた」というニュースが報じられました。
本件は単なる公務員の働き方問題ではありません。
月80時間以上の時間外労働、いわゆる“過労死ライン”を超える働き方が、組織的に、かつ継続的に発生していたという点で、日本社会全体、特に慢性的な人手不足に直面している飲食業界にとって極めて示唆的な内容です。
飲食店経営者の方からは、「公務員の話でしょう?」「うちは民間だから事情が違う」という声をよく耳にします。しかし実務の現場で断言できるのは、飲食業こそ、この問題と最も距離が近い業界であるという事実です。
本記事では、飲食業専門の社会保険労務士として、千葉県職員の残業問題を起点に、法律・制度・実務・リスク・対策までを網羅的に解説します。そのまま公開・保存版として活用できる内容です。
目次
ニュースの概要と問題の本質
今回明らかになった内容を整理すると、次の通りです。
・月80時間以上の残業を2カ月以上連続で行っていた職員:101人
・最長連続残業:7カ月
・月最大残業時間:300時間(衆院選対応)
・月80時間超職員395人のうち、産業医面談未実施:109人
千葉県では、国の残業時間規制に加え、県独自の条例・規則で「連続する月の時間外労働の平均を80時間以内」と定めています。
つまり今回は、単に忙しかったという話ではなく、明確なルール違反が発生していたという点が極めて重要です。
さらに問題なのは、違反が一部の職員の自己管理不足ではなく、業務配分・勤怠管理・組織体制の問題として指摘されている点です。
月80時間残業が「過労死ライン」と呼ばれる理由
月80時間という数字は、単なる目安ではありません。
労災認定基準において、以下のように位置付けられています。
・発症前1カ月に80時間以上の時間外労働
・または発症前2〜6カ月平均で80時間以上
この水準を超えると、脳・心臓疾患との業務起因性が強く認められやすくなります。
つまり、万が一の事態が起きた場合、企業や組織の責任が極めて重く問われるラインなのです。
飲食業では、「繁忙期だから」「イベント対応だから」という理由でこのラインを軽視しがちですが、法律上は一切の例外はありません。
法律上の残業規制と36協定の基本
時間外労働を行わせるためには、労働基準法第36条に基づく、いわゆる「36協定」の締結・届出が必須です。
原則
・月45時間
・年360時間
臨時的な特別事情がある場合
・年720時間以内 ・単月100時間未満
・複数月平均80時間以内
今回の千葉県のケースは、まさにこの「複数月平均80時間以内」に抵触していた可能性が高いといえます。
飲食店では、「36協定未締結」、「期限切れ」、「実態と乖離した内容」 が非常に多く見受けられます。
産業医面談と安全配慮義務
月80時間を超える残業が発生した場合、事業者には産業医等による面談機会を設ける義務があります。これは努力義務ではなく、実質的な法的責任を伴う義務です。
面談未実施の場合、「安全配慮義務違反」、「労災発生時の企業責任拡大」、「労基署からの是正指導」 につながります。
今回、公的機関ですら109人が未実施だったという事実は、民間企業、特に飲食業の脆弱さを浮き彫りにしています。
飲食業で長時間労働が常態化する構造
飲食業で長時間労働が発生しやすい理由は、個人の意識ではなく構造的問題にあります。
・慢性的な人手不足
・突発的な欠勤
・退職
・仕込み
・閉店作業の長時間化
・店長・料理長への業務集中
・管理職=残業代不要という誤解
特に「店長だから管理職」という認識は、名ばかり管理職問題として、是正勧告・未払い残業代請求の典型例です。
名ばかり管理職と未払い残業代リスク
管理職と認められるためには、 「経営者と一体的立場」、「労働時間裁量」、「十分な待遇」 が必要です。
実際の飲食店では、「シフトに縛られている」、「売上責任のみ重い」、「給与は一般社員並み」 というケースが多く、管理監督者性が否定されやすいのが実情です。
その結果、数年分の未払い残業代請求が発生し、経営に致命的な影響を与える事例も少なくありません。
労基署調査・是正勧告のリアル
長時間労働が疑われると、 「タイムカード」、「シフト表」、「賃金台帳」、「36協定」 などが一斉に確認されます。
是正勧告は「行政指導」ですが、無視すれば企業名公表や書類送検の可能性もあります。
長時間労働が招く経営リスク
・離職率の上昇
・採用コスト増大
・労災
・訴訟
・店舗運営停止
長時間労働は、人の問題であると同時に、経営問題そのものです。
今すぐ飲食店が行うべきチェックリスト
- 36協定は有効か
- 月80時間超はいないか
- 連続残業は発生していないか
- 店長の労働時間を把握しているか
- 健康配慮体制はあるか
飲食業専門社労士による実務的解決策
・残業時間の見える化
・業務分解と役割整理
・勤怠管理システム導入
・就業規則
・36協定整備
実際にあった飲食店の長時間労働トラブル事例
ここからは、飲食業専門の社会保険労務士として相談を受けた、または同業他社で起きている事例を基に、長時間労働がどのような結果を招くのかを具体的に見ていきます。
事例1:月100時間超の店長、突然の労災申請
首都圏で複数店舗を展開する居酒屋チェーン。
慢性的な人手不足により、店長がほぼ毎日12〜14時間勤務。
36協定は形式的に締結されていましたが、実態は月100時間を超える残業が常態化していました。
ある日、店長が脳出血で倒れ、労災申請へ。
結果として、長時間労働と業務負荷の因果関係が認められ、労災認定。会社は多額の補償対応と、労基署からの是正勧告を受けることになりました。
事例2:名ばかり管理職として未払い残業代請求
ラーメン店を経営する個人事業主。
店長を「管理職」として残業代を支払っていませんでしたが、実際にはシフト固定・決裁権なし・給与も一般社員並み。
退職後、2年分の未払い残業代を請求され、最終的に数百万円規模の支払いに発展しました。
事例3:繁忙期だけのつもりが是正勧告
観光地の飲食店で、繁忙期(3カ月間)だけ長時間労働が発生。
「一時的だから問題ない」という認識でしたが、複数月平均80時間を超えていたため是正勧告。
以後、労働時間管理体制の全面見直しを迫られました。
よくある質問(Q&A)
Q1:月80時間を1回超えただけでも違法ですか?
A:単月で80時間を超えただけで即違法とは限りませんが、健康リスクが高く、労基署から指導対象になる可能性があります。
特別条項付き36協定が前提です。
Q2:繁忙期やイベント対応でも制限は守らなければなりませんか?
A:はい。理由の如何を問わず、上限規制は適用されます。「忙しい」は免罪符になりません。
Q3:店長は残業代を払わなくていいのでは?
A:いいえ。管理監督者性が認められない限り、残業代支払い義務があります。
飲食業では否定されるケースが大半です。
Q4:タイムカードを打刻していない時間は労働時間ですか?
A:実態として業務に従事していれば労働時間です。
「打刻していない=労働していない」にはなりません。
Q5:80時間超の社員が出たら必ず産業医面談が必要ですか?
A:必要です。実施しない場合、安全配慮義務違反として責任を問われる可能性があります。
Q6:アルバイトにも残業規制は適用されますか?
A:はい。正社員・アルバイトの区別なく、労働基準法は適用されます。
Q7:36協定を結んでいれば残業させ放題ですか?
A:いいえ。36協定はあくまで上限を定めるもので、無制限の残業を認めるものではありません。
Q8:是正勧告を受けたらすぐ罰金ですか?
A:是正勧告自体は行政指導ですが、無視・再違反をすると送検・罰則の可能性があります。
Q9:人が足りない場合、どうすればいいですか?
A:業務の分解・営業時間の見直し・役割整理・IT活用など、労務と経営を一体で考える必要があります。
Q10:どのタイミングで社労士に相談すべきですか?
A:「問題が起きてから」ではなく、「80時間が見えた時点」での相談が最も効果的です。
労基署調査の流れと実務対応
労基署調査は、次のような流れで進みます。
- 申告・情報提供
- 事前通知または抜き打ち調査
- 書類確認(勤怠・賃金・36協定)
- 事情聴取
- 是正勧告・指導
この段階での対応を誤ると、問題が拡大します。専門家の同席・事前準備が極めて重要です。
今すぐ相談すべき危険サイン10
- 月80時間に近い残業者がいる
- 店長の労働時間を把握していない
- 36協定の内容を説明できない
- サービス残業が存在する
- タイムカードが形骸化している
- 突然の退職が続いている
- メンタル不調者が出ている
- 労基署からの電話・郵送物
- 労災申請の兆し
- 経営者自身が長時間労働
飲食業専門社労士に相談するメリット
飲食業は、業界特有の商習慣・繁忙構造を理解していなければ、机上の空論になります。
当事務所は飲食業専門として、現場に即した現実的な解決策を提案します。
千葉県職員の残業問題は、決して他人事ではありません。
飲食業こそ、今この瞬間から対策を講じなければ、同じ問題に直面します。
「何か起きてから」ではなく、「何も起きていない今」こそが、労務管理を見直す最大のチャンスです。
飲食業専門の社会保険労務士として、皆さまの店舗経営を全力で支援いたします。
まとめ・無料相談のご案内
千葉県職員の残業80時間問題は、日本社会全体への警鐘です。
飲食業は特にリスクが高く、放置すれば経営に致命的な影響を与えかねません。
「うちは大丈夫」と思った瞬間が、最も危険です。
当事務所では、飲食業に特化した労務リスク診断・無料相談を実施しています。
問題が表面化する前に、ぜひ一度ご相談ください。
お電話や お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。
初回相談はオンライン・無料対応しています。


