賞与不払いは「不法行為」になる?最高裁が判断

― 日東電工事件(最高裁令和8年2月16日判決)を解説 ―


賞与不払いは不法行為になる?

最高裁が「不法行為は成立しない」と判断

2026年3月、重要な最高裁判決が出ました。

大手電子部品メーカー 日東電工株式会社 で働く日系ブラジル人の非正規労働者60人が、正社員との待遇差は不合理だとして争った裁判です。

この裁判は、旧 労働契約法20条(現在はパート有期法に統合)をめぐる「同一労働同一賃金」裁判の1つです。

そして今回、最高裁判所 第二小法廷は非常に重要な判断を示しました。


判決のポイント

最高裁の結論は次のとおりです。

不法行為は成立しない

賞与を支払わなかったとしてもそれだけで不法行為とはならないと判断しました。

  • 賞与不払い
  • 債務不履行にはなる
  • しかし不法行為にはならない

事件の概要

今回の事件は、非正規労働者60人が会社の待遇差別を訴えたものです。

原告

日系ブラジル人の非正規労働者

被告

電子部品メーカー 日東電工

争点

正社員との待遇差

特に問題となったのは以下になります。

  • 賞与
  • 扶養手当
  • 休暇制度
  • 有給休暇半日取得

二審(大阪高裁)の判断

二審は、会社の対応をかなり厳しく判断しました。

二審の結論

賞与不払いは、不法行為に該当として会社に損害賠償を命じました。

賞与を払わなかった

人格権侵害

不法行為

この判断は、企業側に大きな衝撃を与えました。


最高裁の判断

しかし、最高裁はこの部分を覆しました。

最高裁の考え方

賞与不払いは、あくまで契約上の問題であり、不法行為とは別だとしました。


判決のロジック

最高裁は次のように整理しています。

①賞与不払い

契約違反(債務不履行)


②不法行為

権利侵害が必要

  • 名誉毀損
  • 身体侵害
  • プライバシー侵害 など

結論

賞与不払い=権利侵害ではない

つまり、不法行為ではないと判断しました。


では会社は勝ったのか?

完全に勝ったわけではありません。

次の点は、会社敗訴が確定しました。


不合理とされた待遇差

扶養手当

不合理


リフレッシュ休暇

不合理


特別休暇

不合理


有給休暇の半日取得

不合理


つまり、待遇差別は一部認定されています。


この判決の重要ポイント

今回の判決は、企業実務にとって非常に重要です。

ポイントは3つあります。


ポイント①

不法行為の範囲は広がらなかった

もし、二審の判断が確定していた場合、企業は大きなリスクを抱えていました。

なぜなら、不法行為になると損害賠償が広がる、慰謝料、遅延損害金、時効期間など影響が大きいからです。

しかし、今回最高裁はこれを否定しました。


ポイント②

同一労働同一賃金の判断は継続

賞与の不法行為は否定されましたが、待遇差の判断は依然として厳しいです。

特に手当、これはかなり厳しく判断されています。


ポイント③

外国人労働者問題

今回の原告は、日系ブラジル人でした。

飲食業でも外国人労働者は急増しています。

つまり、この問題は飲食業にとって非常に身近な問題です。


飲食店で起きやすい問題

飲食店では、次のようなケースが多いです。


ケース①

正社員のみ賞与

アルバイトなし


ケース②

社員のみ手当

アルバイトなし


ケース③

外国人のみ待遇差


これらは、場合によっては不合理と判断される可能性があります。


同一労働同一賃金の基本

現在のルールは、パートタイム・有期雇用労働法です。

基本原則は、同一労働同一賃金


不合理な待遇差は禁止

企業は、次の点を説明できる必要があります。

  • 職務内容
  • 責任
  • 配置変更
  • 人材活用 など

社労士からの実務アドバイス

飲食店経営者の方には、次の対応をおすすめします。


①賞与の目的を整理

賞与には、様々な目的があります。

  • 業績配分
  • 長期雇用
  • 責任の重さ など

これを就業規則に明記することが重要です。


②手当の整理

実は、裁判で問題になりやすいのは手当です。

特に、家族手当、住宅手当、通勤手当など理由説明ができないと危険です。


③外国人労働者の待遇

飲食店では、次の在留資格が増えています。

  • 特定技能
  • 技人国
  • 留学生

外国人だけ待遇が低い、これは非常に危険です。


④就業規則の見直し

多くの会社は、同一労働同一賃金対応が中途半端です。

特に、飲食店では次が不足しています。

  • 手当の目的
  • 賞与の基準
  • 雇用区分

まとめ

今回の最高裁判決の結論です。

賞与不払い

不法行為
成立しない

しかし、待遇差は引き続き厳しく審査されます。


飲食店の経営者の皆様へ

同一労働同一賃金は、今後も裁判が増えます。

特に、外国人労働者、非正規雇用

ここが最大のリスクです。

当事務所では、飲食業専門の社労士として以下のサポートを行っています。

対応内容

  • 就業規則の見直し
  • 同一労働同一賃金診断
  • 外国人雇用対応
  • 労務リスク診断

飲食店の労務問題は予防が9割です。

飲食店の労務管理でお困りの方は、問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。