退職届の撤回はできる?~退職届と退職願の違い~

飲食店の現場では、「感情的に退職届を出してしまった」、「店長に強く言われて、退職届を書いた」、「退職願を出したけど、やっぱり撤回したい」といった退職をめぐるトラブルが非常に多く発生します。

特に人手不足が深刻な飲食業では、「辞める・辞めない」 がそのまま店舗運営に直結するため、経営者側・従業員側の認識のズレが問題になりがちです。


退職願と退職届の違いとは?

退職願とは

退職願は、「退職したいという意思表示(お願い)」にすぎません。

  • 会社が承諾する前 → 効力は確定しない
  • 原則として 撤回可能

つまり、 会社が「いいですよ」と承諾するまでは、引っ込めることができるというのが基本的な考え方です。


退職届とは

退職届は、「○年○月○日をもって退職します」という 確定的な意思表示 です。

民法上は、退職届の提出 = 労働契約の解約申入れと扱われます。


退職願と退職届の決定的な違い

項目退職願退職届
性質お願い確定的意思表示
会社の承諾必要原則不要
撤回原則可能原則不可

名前が似ていても、法的意味は全く違うこれがトラブルの出発点です。


退職届は撤回できる?

結論

原則として、退職届の撤回はできません。

理由は、退職届は「労働者からの一方的な解約の意思表示」であり、会社に到達した時点で法律上の効果が発生するからです。


ただし、撤回できる例外もあります

以下のような場合は、退職届でも撤回が認められる可能性があります。


退職届でも撤回が認められる可能性があるケース

強要・脅迫があった場合

  • 「今すぐ書け」
  • 「書かないなら懲戒解雇だ」
  • 「損害賠償を請求するぞ」

このような状況で書かされた退職届は、真意に基づく意思表示とは言えず、無効となる可能性があります。

👉 飲食業では「厨房で怒鳴られ、その場で書かされた」といったケースが実際に問題になります。


錯誤(勘違い)があった場合

例:

  • 「退職届を出しても取り消せると思っていた」
  • 「退職願だと思って署名していた」

内容と本人の認識が明確にズレていれば、錯誤による無効が争われることがあります。


会社がまだ受理していない

  • 退職届を机に置いただけ
  • LINEで送ったが、会社が確認していない

👉 「会社に到達したかどうか」 が重要な判断ポイントになります。


民法上の退職ルール(期間の定めのない雇用)

民法627条

期間の定めのない雇用契約では、退職の意思表示から 2週間経過 で雇用契約は終了とされています。

つまり、会社が了承しなくても2週間経てば退職は成立

👉 これを知らずに「会社が認めてくれないから辞められない」と悩む飲食店スタッフは非常に多いです。


飲食業で特に多い退職トラブル

感情的な退職届

  • 忙しい時間帯
  • クレーム対応後
  • 店長との口論

👉 後悔して撤回したいという相談が後を絶ちません。


人手不足による引き止め

  • 「今辞められると困る」
  • 「代わりが見つかるまで」

👉 法律上、退職を止めることはできません。


「退職届=即日退職」だと思い込む

即日退職できるかどうかは、就業規則、会社との合意によります。


事業主が注意すべきポイント

✔ 退職届と退職願を明確に使い分ける

  • 書式を分ける
  • タイトルを明記する

✔ 感情的な場面で書かせない

後から無効主張・紛争リスク が高まります。


✔ 退職意思の確認は書面で

  • 提出日
  • 退職日
  • 本人の署名

当事務所からのアドバイス

飲食業は、「人間関係が近い」、「感情が表に出やすい」、「書面管理が甘くなりがち」という特性があります。

退職をめぐるトラブルは、採用・定着・労務管理の質 を大きく左右します。


✔ こんな場合は専門家に相談

飲食業の労務トラブルは、業界特性を理解している社労士にご相談ください。

お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。