懲戒目的の配転は無効?~天翔物産福岡事件(福岡高判令和5年2月21日)~

店長を侮辱 → 平手打ち → 配転命令 → 拒否 → 解雇、この流れは有効か?


事件のポイント(結論)

福岡高裁は、以下の判断をしました。

✔ 配転には業務上の必要性は一定程度ある
✔ しかし「懲戒目的」と推認できる
✔ 懲戒規定を潜脱する不当な動機
✔ よって 配転命令は権利濫用で無効
✔ 解雇も無効

つまり、必要性があっても、動機が不当なら無効になるという重要な判示です。


事案の整理

暴行トラブル発生

宮城県内A店で、店長Jと従業員Xが口論。

店長が、平手打ち、胸を拳で叩くという暴行。

双方が手を出した喧嘩状態。


会社の対応

・店長 → 停職4日
・従業員 → 「過失処分+B店→C店へ配転」

C店は秋田県。

かなりの遠隔地配転。


従業員が拒否

・C店への異動拒否
・有休取得
・出勤せず

→ 解雇


裁判所の判断構造

配転命令の有効性判断は、判例上、次の枠組みで判断されます(東亜ペイント事件法理)。

  1. 業務上の必要性
  2. 不当な動機・目的の有無
  3. 労働者への著しい不利益

今回のポイント

業務上の必要性

包丁などを扱う飲食業、喧嘩があれば危険。

→ 一定の必要性は認められる。


懲戒目的と評価

・暴行の直接原因は双方
・店長には停職
・従業員は遠隔地配転

形式上は「配転」だが、実質は「懲戒」

つまり、懲戒処分として定められていない不利益処分を配転という形で行った。

これを裁判所は、懲戒規定の趣旨を潜脱と評価しました。


飲食業への実務的インパクト

この判決は飲食業にとって非常に重要です。

なぜなら、店舗数が多い、エリアをまたぐ異動が多い、人間関係トラブルが起こりやすいという業界特性があるからです。


飲食店でよくある誤解

❌ 問題社員は遠くへ飛ばせばいい
❌ 店舗トラブルは片方を移せば解決
❌ 懲戒より配転の方が安全

これは危険です。


懲戒目的配転が無効になる理由

懲戒処分は、就業規則の根拠、手続保障、比例原則が必要です。

それを回避するために「配転」で処理する

→ これは法的にアウト。


経営者がやるべき正しい対応

事実調査を慎重に

・録音
・防犯カメラ
・第三者ヒアリング


懲戒なら懲戒で処理

・就業規則に基づく
・弁明機会付与
・処分相当性検討


配転は「純粋な業務目的」で

・人間関係調整
・店舗安全確保
・営業体制維持

目的が明確であること。


解雇が無効になるとどうなる?

・バックペイ(未払い賃金)
・付加金
・社会保険遡及
・紛争長期化

中小飲食店では致命傷になります。


当事務所からのアドバイス

✔ 問題社員対応マニュアル整備
✔ 店長教育(ハラスメント防止)
✔ 懲戒規定の見直し
✔ 広域配転条項の整備
✔ トラブル発生時の初動支援

「とりあえず異動」は非常に危険です。


こんな方は今すぐご相談ください

・店舗トラブルが頻発している
・配転拒否で揉めている
・問題社員をどう処理すべきか悩んでいる
・懲戒規定が古いまま

飲食業専門だからこそ、現場を理解した対応が可能です。

問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。