自宅待機を命じるときの注意点!給与の取り扱い・出勤停止との違い

「とりあえず自宅待機」が一番危ない

飲食店の現場では、クレーム対応、金銭トラブル、ハラスメントの疑い、感染症の疑い、内部調査が必要な不正行為などを理由に、「一旦、自宅待機で」と従業員に伝えるケースが少なくありません。

しかし、自宅待機は出し方を間違えると未払い賃金・労基署是正・訴訟リスクにつながります。
特に飲食業では「人手不足」「感情的判断」「口頭指示」が重なり、トラブルになりやすいのが実情です。


自宅待機とは?

自宅待機とは「業務命令」

自宅待機とは、会社が業務命令として従業員に出勤を命じず、自宅で待機させる状態をいいます。

ポイントは、「従業員の自由意思ではない」、「あくまで会社の判断」、「就労意思・就労能力があるケースが多い」という点です。

「休んでいいよ」と言っていても、実態が会社の都合による待機であれば「自宅待機」と評価されます。


自宅待機を命ずるケースの具体例

飲食業で多いのは、次のような場面です。

  • レジ金の不一致があり、事実確認が必要
  • お客様から深刻なクレームが入った
  • セクハラ・パワハラの申告があった
  • SNS炎上リスクのある行動があった
  • ノロウイルス・インフルエンザ疑い
  • 突然の店舗閉鎖・改装・営業停止

これらは懲戒処分ではなく、調査・安全確保目的で行われることが多く、自宅待機に該当します。


自宅待機命令を出す際の注意点

給与の支払い義務は「原則あり」

自宅待機で最も揉めるのが給与です。

結論から言うと、 会社都合の自宅待機は、原則として賃金支払い義務があります。

労働基準法26条

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、休業手当(平均賃金の60%以上)を支払わなければならない

  • シフトに入っていた
  • 働く意思があった
  • 店舗都合で出勤させなかった

この場合、「休業」に該当する可能性が高いです。


不当な目的・不合理に長期間の自宅待機は違法の可能性

以下のようなケースは、違法と判断されやすいです。

  • 退職に追い込む目的
  • 嫌がらせ・見せしめ
  • 調査もせず長期間放置
  • 明確な理由を説明しない
  • 期限を決めない自宅待機

裁判例でも、「実質的な懲戒処分」「人格権侵害」と判断された例があります。

自宅待機は“短期間・必要最小限”が原則です。


自宅待機と出勤停止処分の違いは?

自宅待機=業務命令/出勤停止=懲戒処分

ここを混同すると、トラブルになります。

区分自宅待機出勤停止
性質業務命令懲戒処分
目的調査・安全確保制裁
就業規則記載不要懲戒規定が必要
給与原則支払必要原則不要

出勤停止期間中の給与支払いは不要

出勤停止は懲戒処分のため、就業規則に定めがあり、適法であれば無給とできます。

  • 懲戒理由が不十分
  • 処分が重すぎる
  • 手続きが不適切

この場合は、無効となり賃金請求されるリスクがあります。


出勤停止処分を行う際の注意点

懲戒事由の存在を厳密に確認

飲食業でありがちなNG例:

  • 「店長がムカついたから」
  • 「雰囲気を乱した」
  • 「信用できない」

👉 具体的事実・証拠・規定が必須です。


出勤停止期間が不相当に長期間に及ばないように

  • 数日〜1週間程度:比較的認められやすい
  • 数週間〜1か月超:違法リスク上昇

特にアルバイト・パートに長期出勤停止は危険です。


自宅待機を命じた場合、会社に給与の支払い義務はあるか

会社都合の自宅待機命令の場合は支払い義務あり

次のような場合は、原則支払い義務ありです。

  • 店舗判断
  • 調査のため
  • 人員整理
  • クレーム対応

最低でも休業手当(60%)は必要となるケースが多いです。


不可抗力の場合は支払義務なし(ただし慎重に)

不可抗力とされるのは、天災(地震・台風)、行政命令による強制休業

感染症の場合は、「誰の責任か」「予見可能性」が厳しく見られます。

「念のため休ませた」は不可抗力にならない可能性が高いです。


6.自宅待機命令を検討する際には専門家に相談を

自宅待機は、懲戒との境界が曖昧、感情的判断になりやすい、後から争われやすいという非常にリスクの高い対応です。

  • 口頭指示だけで済ませない
  • 期間・理由・給与を明確に
  • 就業規則との整合性を確認
  • 迷ったら必ず専門家へ

📩 当事務所では、飲食店特化で自宅待機・懲戒対応の事前相談を行っています。
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