残業代トラブルを未然に防ぐ就業規則の見直しポイント
目次
飲食店の「残業代トラブル」が絶えない理由
飲食業界では、慢性的に人手不足が続き、1人あたりの業務負担が大きくなりがちです。
その結果として生じやすいのが、「残業代(割増賃金)」を巡るトラブルです。
- 残業代の未払い
- 固定残業代の誤った運用
- みなし労働時間制を誤解した運用
- シフト管理の曖昧さによる労働時間把握漏れ
- 管理職扱いによる不払い問題
裁判例を見ても、飲食店は残業代請求に関する訴訟が多く、数百万円〜数千万円の支払い命令が下るケースも珍しくありません。
しかし実は、この多くのトラブルは 就業規則の整備で高い確率で防げます。
本記事では、飲食業専門で労務管理を支援してきた社会保険労務士として、残業代トラブルを未然に防ぐための就業規則の見直しポイント を徹底的に解説します。
残業代トラブルの典型パターンとリスク
飲食店で多発する残業代トラブルには、共通した“落とし穴”があります。
固定残業代の誤った設定
多いトラブル例:
- 規定の書き方が不十分で無効と判断される
- 実労働時間が固定残業時間を超えているのに追加支払いがない
→ 結果として、全残業代が未払いと判断される危険性があります。
シフト制での労働時間管理が不十分
- シフト変更が店長の口頭指示のみ
- 休憩時間をきちんと付けていない
- タイムカード打刻と実際の勤務が違う
→ 労働時間管理の曖昧さは、最も裁判に発展しやすいポイントです。
役職者を「管理監督者」として扱う誤解
飲食店でよくある誤解:
店長=管理職だから残業代不要
→ これはほぼ誤りです。
裁判では“管理監督者性”は厳しく判断され、店長であっても業務内容・権限・就労状況によっては
残業代を支払わなければならないとされます。
そもそも就業規則が時代に追いついていない
- 時間外労働・休日労働に関する記載が曖昧
- 固定残業代制度を導入したのに規定に反映していない
- 変形労働時間制の要件不足
- 労使協定が未提出・未作成
→ 就業規則が古い=それ自体がリスク
特に飲食業は制度が頻繁に変わるため、毎年の見直しが必須です。
残業代トラブルを防ぐ“就業規則の見直しポイント”
ここからは、飲食店が特に見直すべきポイントを体系的に解説します。
固定残業代制度(みなし残業)の正しい規定方法
固定残業代制度を安全に運用するためには、就業規則に 必ず以下の要件を明記する必要があります。
基本給と固定残業代を明確に区分する
例:
- 基本給:200,000円
- 固定残業代:50,000円(30時間分)
「固定残業代込み」などの表現はNG。
固定残業時間数を明示
- 何時間分か
- 超過した際の支払い方法
を必ず記載する。
深夜割増・休日労働を含めない
固定残業代には 時間外労働の割増分 だけを含める。
深夜・休日を含めると無効になるリスクが高い。
労働時間が固定残業時間を超えた場合の追加支払い規定
「超過分は別途支払う」と明記すること。
シフト制(変形労働時間制)の適正化
飲食店が最も活用すべき制度が 1か月単位の変形労働時間制 です。
しかし、次の要件を満たしていないと 無効 になります。
1カ月単位の変形労働時間制の要件
- 就業規則に制度の導入を明記
- 月の起算日を明示
- 1か月のシフト確定日を明示する
- シフトは原則として事前に社員へ通知
- 月間の総労働時間が法定範囲内
見直しポイント:
- シフト表には始業・終業時刻・休憩を全て記載
- シフト変更ルール(本人同意・店長権限など)を明記
- シフト作成日・変更手続き・通知方法を就業規則に入れる
管理監督者の判断基準の明確化
就業規則に以下のような曖昧な表現があると危険です。
店長は管理監督者として業務を統括する
ポイント:
- 管理監督者の要件を明確化する
- 原則として飲食店の店長は管理監督者に該当しない
- 役職手当=管理職ではない
- “名ばかり管理職”の禁止を明記する
休憩・残業指示ルールの整備
曖昧になりがちなポイントは必ず規定化します。
休憩
- 休憩時間の管理方法(打刻・指示者)
- 休憩に入れない場合の対応
残業
- 残業は事前承認制とする
- 無断残業も実労働として扱うが懲戒対象となる旨を明記
(→これがないと“黙認残業”扱いになります)
労働時間の適正把握義務を就業規則に明記
厚生労働省が義務化している以下を明記:
- タイムカード・勤怠システムによる客観的管理
- 打刻ルール(遅刻・早退・直行直帰)
- 店長の改ざん防止義務
- 従業員の自主的打刻徹底
飲食店は一分単位で客観的管理が必要な時代です。
副業・兼業規定で残業代トラブルを避ける
副業によって過重労働が生じた場合でも、一次雇用主に説明責任が生じることがあります。
規定すべきポイント:
- 副業の申告制
- 健康確保措置
- 労働時間通算のルール
ハラスメント・安全衛生と残業代の関係
ハラスメントが理由で精神不調となり、残業代請求や労災申請につながるケースが非常に多い。
規定すべきポイント:
- 過重労働防止ルール
- ハラスメント相談窓口
- 帰宅指示権(健康確保)
残業代問題は“突然爆発する”
- 不満をためていた従業員の退職時
- 退職後の弁護士からの内容証明
- 労基署の立ち入り監督
- SNSでの炎上
残業代トラブルは、これらを契機として“一気に表面化”します。
しかし実は、事前に、「就業規則の整備」、「勤怠管理ルールの明確化」、「店長教育」、「残業管理のロジック化」を行うことで、70〜80%の残業代トラブルは防止できます。
飲食店のための就業規則チェック
- 固定残業代が違法になっていないか
- 変形労働制が無効になっていないか
- 店長の管理監督者規定が危険ではないか
- 労働時間管理のエビデンスは十分か
労働時間・残業代リスク診断
- 過去の請求リスク
- 店舗別の改善ポイント
- 退職者対応の具体策
まとめ
飲食店における残業代問題の多くは、規定不足、誤った制度運用、労働時間把握の曖昧さによって発生します。
しかし、就業規則と運用の見直しによって大半のトラブルは未然に防止できます。
- 固定残業代を導入している
- シフト制で運用している
- 店長に残業代を払っていない
- 労働時間管理が不安
- 就業規則が古い
このいずれかに当てはまる場合、ぜひ一度ご相談ください。
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