無断欠勤7カ月でも懲戒解雇は無効?配転命令拒否をめぐる東京地裁判決
「7カ月も無断欠勤したのに、懲戒解雇が無効?」
この見出しを見て、驚かれた飲食店経営者の方も多いのではないでしょうか。
2026年1月29日の東京地裁判決では、約7カ月にわたる無断欠勤があっても、懲戒解雇は無効と判断されました。
目次
事件の概要
本件は、出版社「二見書房」の元編集者が起こした訴訟です。
- 2023年9月
編集部 → 総務部への配転命令 - 元社員はこれを拒否
- その後、約7カ月間の無断欠勤
- 会社は懲戒解雇
- 元社員が「解雇は無効」として提訴
一見すると、「無断欠勤7カ月=即アウト」と思われがちですが、裁判所の判断は違いました。
東京地裁の結論
東京地裁は、懲戒解雇は無効と判断しました。
ポイントは以下の3点です。
- 配転命令に業務上の必要性がない
- 職種限定の合意があった
- 無断欠勤の原因は会社側にある
なぜ配転命令が違法とされたのか
裁判官は、労働契約書に注目しました。
労働契約書には、「編集企画業務」とだけ記載されていました。
これは、「編集の仕事をする前提で雇われている」と解釈でき、職種限定の合意が成立していると判断されました。
つまり、編集 → 総務という異動は、本人の同意が必要だったのです。
「嫌がらせ配転」と判断された理由
さらに裁判所は、配転に業務上の必要性が見当たらない、元社員を職場から排除する目的だった可能性を指摘し、配転命令は権利の乱用と判断しました。
これは飲食業でも非常に重要なポイントです。
無断欠勤7カ月でも懲戒事由にならなかった理由
通常、無断欠勤は重大な懲戒事由になります。
しかし今回は、そもそも違法な配転命令が原因、会社の対応に問題があったとして、「欠勤の理由は会社側にある」と判断されました。
違法な命令に従わなかった結果の欠勤
→ 懲戒理由にはならない
能力不足を理由にできなかった理由
会社側は、「編集者として能力が足りなかった」と主張しました。
しかし裁判所は、解雇に値するほどの能力不足はない、改善指導や配置転換の正当性が説明されていないとして、この主張を退けました。
飲食業で考えるとどうなる?
飲食業に置き換えると、よくあるのが次のケースです。
キッチンスタッフを突然ホールへ、店長を本部事務へ、ベテラン調理人を倉庫作業へ
これらも、労働契約書に職種限定がある、業務上の必要性が弱い、事実上の嫌がらせと判断されると、配転命令が無効になる可能性があります。
「無断欠勤=即解雇」は危険
本判決が示す最大の教訓は、無断欠勤があってもその原因が会社にあれば、解雇は無効になり得るという点です。
感情的に、「来ないならクビだ!」は、最も危険な対応です。
飲食店経営者が今すぐ見直すべき3点
労働契約書の職種記載
- 「ホール業務」「調理業務」など限定されていないか
- 配転可能性の記載があるか
配転の理由を説明できるか
- 人員配置上の必要性
- 経営上の合理性
懲戒前の手順
- 注意・指導の記録
- 話し合いの実施
- 書面での通知
社労士からの実務アドバイス
この判決は、「問題社員を異動で追い出す」という安易な対応に、強い警鐘を鳴らしています。
特に飲食業は、人手不足、感情的なトラブル、現場判断の多さから、リスクが高い業界です。
- 配転命令には業務上の必要性が必須
- 職種限定があれば本人同意が必要
- 無断欠勤があっても解雇が有効とは限らない
- 事前の設計と手順が命
配転・解雇・問題社員対応でお悩みの飲食店経営者様は、
飲食業専門社労士の当事務所までお問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。


