健康保険料・厚生年金保険料を会社が未納だったらどうなる?従業員も未納扱い?
飲食店を経営していると、「社会保険料が高くて支払いが苦しい」、「一時的に資金繰りが厳しく、社会保険料を後回しにしてしまった」、「会社が払っていないと、従業員も未納になるの?」といった不安や疑問を抱く経営者・従業員の方は少なくありません。
特に近年は、「人件費の上昇」、「原材料費の高騰」、「インボイス制度や最低賃金引上げ」などの影響で、社会保険料の未納・滞納問題が飲食業界でも急増しています。
目次
従業員は未納になりません
まず結論です。
会社が社会保険料を未納していても、従業員個人が「未納」になることはありません。
理由は明確で、健康保険・厚生年金は「事業主が納付義務者」だからです。
社会保険料の仕組み
健康保険・厚生年金の基本構造
社会保険料は、会社負担分:50%、従業員負担分:50%となっています。
ただし重要なのは、 従業員が直接納める制度ではないという点です。
納付義務者は「会社」
健康保険法・厚生年金保険法では、社会保険料の納付義務者は 事業主(会社)と明確に定められています。
そのため、会社が保険料を納めていない、経営者が資金繰りを理由に滞納している場合でも、 従業員が「未納者」扱いされることはありませんし、年金記録が消えることもありません。
では、従業員にどんな影響があるのか?
健康保険証は使える?
原則:使えます
会社が保険料を滞納していても、被保険者資格が取り消されない限り、健康保険証は有効です。
ただし注意点があります。
長期・高額滞納の場合
事業主が日本年金機構から再三の督促、財産調査、差し押さえと進む中で、最悪の場合、資格喪失処理がされる可能性があります。
ただしこれは、悪質、長期間、故意性が高いなど、かなり例外的なケースです。
年金はもらえる?
原則:もらえます
厚生年金は、資格取得・喪失の記録、標準報酬月額の届出が適正に行われていれば、 会社が未納でも、従業員の加入期間としてカウントされます。
将来、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金の計算においても、不利になりません。
従業員に「後から請求」される?
結論から言うと、 従業員に直接請求されることはありません。
社会保険料は、会社がまとめて納付、従業員個人に納付義務なし。
そのため、退職後、何年も経ってから「あなたの分を払ってください」と日本年金機構から請求が来ることはありません。
それでも会社側のリスクは非常に大きい
遡及請求(最大2年)
社会保険料は、原則2年、悪質な場合はさらに厳しい対応で、遡って一括請求されます。
例)
月50万円の保険料 × 24か月
→ 1,200万円
延滞金が発生
未納期間があると、本来の保険料+延滞金(年率最大14.6%)が加算されます。
飲食店の利益率を考えると、これは致命的です。
差し押さえリスク
実務上、本当に多いのがこれです。
- 売上金の差し押さえ
- 銀行口座の差し押さえ
- クレジット決済入金口座の差し押さえ
予告なしで実行されるため、給与が払えない、仕入れが止まる、営業継続不能という最悪の事態に発展します。
飲食店でよくある未納パターン
人を増やしたタイミング
店舗拡大、社員登用、社保加入義務発生により 想定以上に保険料が増加
資金繰り悪化で後回し
家賃、仕入れ、給与を優先し、「社会保険料は後で」となる。
手続きミス・認識不足
加入義務を知らなかった、アルバイトだから不要だと思っていた、法人化=自動加入だと思っていなかった
未納に気づいたときの正しい対応
絶対にやってはいけないこと
❌ 放置
❌ 督促を無視
❌ 連絡せずに滞納継続
これは状況を悪化させるだけです。
正しい対応ステップ
1️⃣ 早めに年金事務所へ相談
2️⃣ 分割納付の相談
3️⃣ 専門家(社労士)に同席依頼
早期相談=差し押さえ回避につながります。
当事務所からのアドバイス
飲食業は、売上変動が大きい、人件費比率が高い、現金流出が激しいという特性があります。
そのため、 社会保険料の設計、 人員構成(社員・パート比率)、 賞与・手当の設計を 最初から戦略的に設計すること が重要です。
よくある質問(Q&A)
Q. 従業員から「会社、保険料払ってますか?」と聞かれたら?
A. 原則、従業員に未納の不利益はないため、正しく説明しましょう。
Q. 退職した従業員に迷惑はかかる?
A. 原則かかりません。
Q. 分割納付は必ず認められる?
A. 事情説明と誠実な対応が重要です。
まとめ
- 社会保険料の未納は会社の問題
- 従業員が未納扱いになることはない
- しかし、会社側のリスクは極めて大きい
- 早期相談がすべてを左右する
「うち、実は少し遅れていて…」「これって未納になる?」そんな段階でも構いません。
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