飲食店の就業規則「不利益変更」とは?違法になるケース・適法になるケース

飲食店で「就業規則の不利益変更」が問題になりやすい理由

飲食店経営において、人件費の高騰、原材料費・光熱費の上昇、人手不足による経営圧迫といった理由から、「就業規則を見直してコストを抑えたい」と考える経営者は少なくありません。

しかし、ここで注意が必要なのが「就業規則の不利益変更」です。

知らずに変更した結果、労基署から是正指導、未払い賃金の請求、元従業員から訴訟という事態に発展するケースが、飲食業では特に多く見られます。


就業規則の「不利益変更」とは?

不利益変更の定義

就業規則の不利益変更とは、従業員にとって、労働条件が「今より不利になる方向」に変更されることをいいます。

賃金だけでなく、あらゆる労働条件が対象です。


不利益変更に該当する代表例

賃金・手当の減額

  • 基本給を下げる
  • 役職手当・店長手当を廃止
  • 深夜手当・休日手当の計算方法を不利に変更

👉 典型的な不利益変更


賞与・インセンティブの削減

  • 賞与支給月数を減らす
  • インセンティブ制度を廃止

労働時間・休日の不利益変更

  • 所定休日を減らす
  • シフトの自由度を下げる
  • 変形労働時間制を導入し、実質的に労働時間が増える

休暇制度の後退

  • 有給休暇の取得方法を厳しくする
  • 特別休暇(誕生日休暇等)を廃止

退職金・福利厚生の縮小

  • 退職金制度の廃止・減額
  • 食事補助・社割の廃止

「就業規則を変えればOK」は大間違い

多くの飲食店で見られる誤解があります。

「就業規則は会社のルールだから、会社が変えれば従業員は従うしかない」
これは誤りです。

労働契約法の大原則

労働契約法では、就業規則の変更により、労働者の不利益になる場合、原則として無効とされています。


不利益変更が「有効」になるための要件

労働契約法第10条の考え方

不利益変更が有効とされるには、以下を総合的に判断されます。

  1. 変更の必要性
  2. 不利益の程度
  3. 代償措置の有無
  4. 労働組合・従業員との交渉状況
  5. 社会的相当性

変更の必要性

  • 赤字が続いている
  • 店舗閉鎖の危機
  • 人件費率が業界平均を大きく超えている

👉 客観的資料が重要


不利益の程度

  • 減額幅が大きすぎないか
  • 生活に重大な影響を与えないか

代償措置の有無

  • 賃金は下がるが、休日を増やす
  • 手当廃止の代わりに基本給を調整

👉 代償措置がないと無効になりやすい


説明・協議を尽くしたか

  • 一方的に通達していないか
  • 個別説明をしているか

社会的相当性

裁判所は「社会通念上、やむを得ないか」を厳しく見ます。


飲食店でよくある「違法な不利益変更」NG例

NG例① 赤字を理由に一方的に賃下げ

ほぼ無効


NG例② 正社員をパート並みの条件に変更

→ 不利益が大きすぎて無効になりやすい


NG例③ 同意書にサインさせたから大丈夫?

実務で非常に多い誤解です。

  • 内容を理解していない
  • 実質的に拒否できない状況

👉 形式的な同意は無効とされることも


「同意があればOK」と「同意があってもNG」の違い

状況有効性
内容を十分説明し、自由意思で同意有効になりやすい
拒否できない雰囲気無効の可能性
書面だけ渡して即日署名無効リスク大

飲食店が不利益変更を行うときの正しい手順

ステップ① 変更の必要性を整理

  • 数字で説明できる資料を準備

ステップ② 代償措置を検討

  • 賃金だけでなく、休日・働き方で調整

ステップ③ 個別説明・十分な期間

  • 全体説明+個別フォロー

ステップ④ 同意書の取得

  • 強制にならない工夫が必要

ステップ⑤ 就業規則変更・届出

  • 労基署への届出も忘れずに

トラブルを防ぐために社労士ができること

  • 不利益変更に該当するかの判断
  • リスクの高い条文の洗い出し
  • 説明資料の作成
  • 従業員対応のアドバイス

👉 飲食業は特に専門性が必要です


当事務所からのアドバイス(飲食店専門)

就業規則の不利益変更は、「やり方を間違えると、経営改善どころか、大きなトラブルを招く」非常にリスクの高い対応です。

変更前に必ず専門家へ相談することを強くおすすめします。


  • 就業規則を見直したい
  • この変更は不利益になる?
  • 従業員と揉めそうで不安

そんな時は、飲食業専門の社会保険労務士が対応します。
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