経営者と家族従業員(同居親族など)は原則「労災保険・雇用保険の対象外」

飲食店経営において、配偶者、子ども、親、兄弟姉妹といった家族が一緒に働いているケースは非常に多く見られます。

「家族だけど従業員として働いている」
「タイムカードも切っているし、給料も払っている」

このような場合でも、経営者本人および同居親族は、原則として労災保険・雇用保険の対象外となる点は、非常に重要かつ誤解が多いポイントです。


労災保険・雇用保険の「原則ルール」

労災保険とは

労災保険は、業務中や通勤中のケガ・病気・死亡に対して補償する保険です。

本来は、事業主に使用される「労働者」を保護する制度です。


雇用保険とは

雇用保険は、失業したときの失業給付、育児休業給付、高年齢雇用継続給付などを支給する制度で、これも 「労働者性」 が前提となります。


なぜ「経営者本人」は対象外なのか

事業主は「自分を雇用できない」

法人・個人事業を問わず、代表取締役、個人事業主本人は、雇われる側ではなく、雇う側であるため、労働者ではありません。

そのため、労災保険:原則対象外、雇用保険:完全に対象外となります。


「給料をもらっている」=労働者ではない

「役員報酬」や「事業主の取り分」は、労働の対価ではなく 経営上の報酬 と位置づけられます。

よって、どれだけ現場に立っていても長時間働いていても原則として、労働保険の対象にはなりません。


家族従業員(同居親族)が対象外とされる理由

同居親族は「労働者性が弱い」と判断される

労災保険・雇用保険では、同居している親族は、事業主と一体とみなされやすいという考え方があります。

理由は、生活費が同一、指揮命令関係が曖昧、労働条件が書面で明確でないことが多いといった点です。


対象外となる代表例

原則として、以下の人は対象外です。

  • 個人事業主の配偶者(同居)
  • 個人事業主の子(同居)
  • 親族経営の飲食店で同居して働く親族

「雇用契約がある」「給与を払っている」でもダメ?

よくあるご質問です。

Q.雇用契約書を作っていますが?

それだけでは足りません。

Q.最低賃金以上で給与も支払っていますが?

それでも原則対象外です。

重要なのは、実態として、第三者の従業員と同じ労働者性があるかです。


例外的に「加入できる」ケース

別居親族の場合

親族であっても、別居している、他の従業員と同様の勤務形態、明確な指揮命令関係があれば、
労災保険・雇用保険の対象となる可能性があります。


法人の場合

株式会社・合同会社などの法人では、代表者の配偶者、親族であっても、被保険者として認められるケースがあります。

ただし、名ばかり役員でないか、実態として使用従属性があるかが厳しく見られます。


飲食店で実際に起こりやすいトラブル

ケース①:家族がケガをした

「労災に入っていると思っていた」
不支給

ケース②:家族が退職、失業給付を申請

雇用保険未加入で支給なし


では、どうすればいいのか?

労災特別加入を検討する

経営者本人・家族従業員については、労災保険の特別加入制度という救済策があります。

飲食業では非常に重要です。


法人化を含めた制度設計

個人事業のままが良いのか、法人化した方が安全かは、家族の働き方次第で答えが変わります。


「グレーな加入」は絶対に避ける

「とりあえず入れておこう」は、後で必ず問題になります。


当事務所からのアドバイス

飲食店は、ケガのリスクが高い、家族経営が多い、人手不足で現場に立つことが多いという特徴があります。

そのため、「知らなかった」では済まされない場面が多いのが現実です。


  • 家族をどう扱えばいいかわからない
  • 労災・雇用保険の加入が正しいか不安
  • 法人化も含めて整理したい

このようなお悩みがあれば、飲食業専門の社会保険労務士が丁寧に対応します。

お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。