深夜勤務の健康診断(特定業務従事者健診)とは

飲食業では、深夜営業・24時間営業・シフト制勤務が一般的です。
その中で見落とされがちなのが、深夜業に従事する労働者に対する健康診断(特定業務従事者健康診断)です。

「年1回の定期健康診断をやっているから大丈夫」 「アルバイトだから対象外だと思っていた」

こうした誤解は非常に多く、労働基準監督署の調査で是正指導を受けやすいポイントでもあります。


特定業務従事者健康診断の法的根拠

特定業務従事者健康診断は、労働安全衛生法第66条第2項および労働安全衛生規則第13条に基づき、事業者に実施が義務付けられている健康診断です。

労働安全衛生法 第66条(抜粋)

事業者は、政令で定める有害な業務に常時従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。

深夜業は、この「有害な業務」の一つとして位置づけられています。


深夜業とは?(22時〜翌5時)

深夜業とは、午後10時から午前5時までの時間帯に行う業務をいいます。

飲食業では、以下のようなケースが典型です。

  • 居酒屋・バーの深夜営業
  • 深夜帯の仕込み・清掃
  • 24時間営業店舗の夜勤シフト
  • 深夜のデリバリー対応

対象となる頻度

深夜業に「月4回以上」従事する労働者が対象です。

  • 正社員・契約社員・アルバイト・パートすべて対象
  • 雇用形態は一切関係なし
  • 社会保険の加入有無も関係なし

つまり、週1回程度でも深夜勤務があれば対象になる可能性があるという点が重要です。


年2回の健康診断が必要(6か月以内ごとに1回)

特定業務従事者健診の最大の特徴は、年2回(6か月以内ごとに1回)の実施義務がある点です。

通常の定期健康診断との違い

項目定期健康診断特定業務従事者健診
実施頻度年1回年2回
対象常時使用する労働者深夜業等の特定業務従事者
法的義務ありあり(より厳格)

「定期健診を年1回やっているからOK」という認識は誤りです。


実施タイミング(開始時・配置転換時・定期)

特定業務従事者健診は、次のタイミングで実施が求められます。

  1. 深夜業に就かせる前(配置前)
  2. 深夜業への配置転換時
  3. その後6か月以内ごとに1回

特に注意が必要なのが、人手不足で急きょ深夜シフトに入れた、アルバイトのシフトがいつの間にか固定化したといったケースです。結果的に月4回以上深夜勤務となれば対象になります。


健診項目は「ほぼフルセット」

特定業務従事者健診の内容は、通常の定期健康診断項目をほぼすべて網羅します。

主な健診項目

  • 既往歴・業務歴の調査
  • 自覚症状・他覚症状
  • 身長・体重・腹囲
  • 視力・聴力
  • 血圧測定
  • 胸部X線検査
  • 血液検査(貧血・肝機能・血中脂質・血糖)
  • 心電図検査
  • 尿検査

深夜業は、生活リズムの乱れ・循環器疾患・糖代謝異常などのリスクが高いため、内容も手厚く設定されています。


費用負担は誰がする?

健康診断の費用は、全額事業者負担です。

  • 労働者に自己負担させる → ❌違法
  • 賃金から天引き → ❌違法

アルバイト・短時間労働者であっても例外はありません。


未実施の場合のリスク

労基署からの是正指導・勧告

特定業務従事者健診を実施していない場合、労働基準監督署の調査で是正勧告を受ける可能性があります。

労災・安全配慮義務違反

深夜勤務中の体調不良や事故が発生した場合、健康診断未実施、医師の意見聴取未実施があると、安全配慮義務違反として事業者責任が問われるリスクが高まります。


飲食店でよくある勘違い

  • 「学生アルバイトだから対象外」
  • 「深夜手当を払っているからOK」
  • 「本人が希望しているから問題ない」

いずれも法的には通用しません


実務対応のポイント

  1. 深夜勤務者をリストアップする
  2. 月4回以上の該当者を確認
  3. 健診実施日・結果の管理
  4. 医師の意見聴取・就業措置
  5. 就業規則・シフト管理の整備

当事務所からのアドバイス

深夜業の健康管理は、労務トラブル防止、労基署対応、人材定着すべてに直結します。

「うちは大丈夫だろう」と思っている店舗ほど、指摘を受けやすい分野です。

  • 深夜勤務者の健康診断、どう管理すべき?
  • アルバイトにも年2回必要?
  • 労基署から指摘を受けた

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