退職・契約解除時の“労務トラブル回避”~引継ぎ・有給消化・退職証明・離職票対応を体系化する~


飲食業は「人が辞めやすい業界」と言われます。
しかし実際にトラブルが最も起きるのは “最後の2週間〜退職後1ヶ月” です。

  • 有給休暇を使わせてもらえなかった
  • 退職日が勝手に変えられた
  • 給与明細がもらえない
  • 離職票を発行してもらえない
  • 次の職場に必要な証明書を出してくれない
  • SNSで不満を書かれて炎上する

多くの飲食店経営者が相談に来られますが、そのほとんどが 「ほんの少しの事前準備」 をしていれば防げたものばかりです。

本記事では、飲食業専門の社会保険労務士として、退職・契約終了を“トラブルゼロ”で終える設計図 をまとめました。

「辞めた後に“あのお店ブラックなの?”と思われないために」ぜひ店舗のルールづくりに役立ててください。


退職トラブルが飲食店で多発する理由

パート・アルバイト比率が高く退職が頻繁

飲食業では年間離職率が高く、多くの店舗が 常に入れ替わり の状態。
その結果、退職の手続きが “場当たり的” になる傾向があります。

店長・オーナーの「忙しすぎ」により後回しになりがち

飲食店は現場が最優先のため、事務手続きは「後でやる」「落ち着いたら」となりがち。
その遅れが 不信感 → SNS書き込み → 炎上 の流れにつながります。

法律を知らないままその場対応してしまう

  • 有給消化を断る
  • 退職日を引き延ばす
  • 保険手続きが遅れる
  • 必要書類を出さない

これらはすべて法律違反リスクを伴います。


退職対応を“設計”しない店舗に起きる典型的なトラブル

有給休暇が使えないと言われた

→ SNSで拡散され「ブラック認定」される典型例。
法律上、退職前の有給は原則取得可能です。

引継ぎが混乱し、アルバイト同士で揉める

→ 店の内部事情がTikTokやXに投稿され炎上。

離職票が遅く、元従業員が怒る

→ 「求職活動ができない!」とハローワークへ相談される。

退職証明を拒否してトラブル化

→ 労基署の調査につながることも。


飲食店が守るべき「退職対応の4本柱」

ここからは “必ず整えるべき実務の型” をまとめます。

引継ぎルール


ポイント1|誰が何を引き継ぐか“一覧化しておく”

退職が決まってから「じゃあ引き継ぎ考えよう」は遅いです。
飲食店は作業が細かいため、次のようなリスト化が有効です。

  • 仕込み手順
  • 発注先・発注曜日
  • マニュアルの更新場所
  • レジ締め・釣銭補充方法
  • 清掃チェックリスト
  • SNS更新担当のID管理

“属人化している業務”ほど先に棚卸しすることが重要です。

ポイント2|代替要員を事前に育てておく

退職が出てから育成しても間に合いません。
最低でも 2名体制で鍵業務を持つ仕組み が安全。

ポイント3|引継ぎ完了チェックリスト

「終わった気がする」は禁止。
書面・アプリでチェックできる機能を導入しましょう。


有給休暇の扱い


有給は“原則すべて取得できる”が正しい法律知識

退職日までに残っている有給は基本的に使用可能です。

“時季変更権”は退職時には使えない

つまり「人手が足りないから出て欲しい」→ 法律上は不可

飲食店としてやるべき対策

  • 有給残数を常に把握(紙ではなくアプリ・システムが吉)
  • 「有給消化スケジュール」を退職日の1ヶ月前に確定
  • 取得できない場合の理由を明文化(例:休業補償)

証明書類の即時発行


退職後すぐに必要になる書類は以下のとおりです。

退職証明書(労基法22条)

請求があれば即時発行が必要。拒否すると違法。
記載できる内容は法律で決まっているため、独自ルールはNG。

健康保険資格喪失証明

転職先が社会保険加入時に必要。遅れると「保険証が使えない」事態に。

源泉徴収票

年末調整・確定申告で使用。発行の遅れは信用失墜に直結。

離職票(希望者のみ)

求職活動に必須。
離職票の遅れは最もトラブルが多いポイントです。

→ 原則10日以内に提出・発行されるよう社労士が代行するのが安全。


離職票対応を“設計化”


トラブル例

  • 「1ヶ月経っても来ない」
  • 「郵送してくれない」
  • 「虚偽の離職理由を書かれた」

離職票の記載ミスは、最終的にハローワークから店舗へ確認が来ます。
その結果、労務管理が不十分だと判断されることも。

店としてやるべきこと

  • 退職届を受けたらその日のうちに社労士へ連絡
  • 退職理由の整理(自己都合/会社都合の判断)
  • 賃金台帳・出勤簿の整合性チェック
  • 退職者へ到着予定日を伝える

「いつ届くか分からない」が一番不信感を生むため、日程提示が必須です。


退職対応は「採用力」そのもの

飲食店でよく聞く悩み

  • 人が集まらない
  • 定着しない
  • 若い人がすぐ辞める

その原因の一つは、実は “退職対応の悪さ” です。

退職者は、意外にも 最強の口コミ拡散者
対応が良ければ「良い店だった」と投稿してくれ、対応が悪ければSNSで一瞬で炎上します。

「終わりよければすべて良し」は飲食業の労務にも当てはまる言葉です。


当事務所のご案内

当事務所では飲食業専門として、以下をフルサポートしています。

  • 退職・契約終了の労務設計
  • 有給管理システムの導入支援
  • 離職票・証明書の即日対応
  • 就業規則・退職ルールの作成
  • 店長向け労務研修
  • SNS炎上対策の内部ルール作成

「辞めたスタッフから不満を書かれた」「トラブル化しそう」など、緊急対応も可能です。

お電話や  お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。
初回相談はオンライン・無料対応しています。