飲食店の「スタッフ健康管理・メンタルヘルス」から見る労務管理~過重労働・飲酒対策・休養制度を整えない店は“働き方の事故”が起きる~


飲食店の労務管理は「衛生管理」と同じくらい“健康管理”が重要な時代へ

飲食業は、他の業界と比較しても 心身への負荷が高い職場 です。

  • 深夜勤務
  • 長時間の立ち仕事
  • 厨房の暑さ・ホールの寒暖差
  • 騒音・クレーム対応
  • シフトの不規則さ
  • 社内飲食(まかない)や飲酒の機会

これらは、一般の事業場と比べても 肉体疲労・精神疲労が蓄積しやすい構造 を持っています。

しかし、多くの飲食店では「労務管理=給与計算・36協定」という狭い認識にとどまっており、スタッフの健康状態を管理する視点が抜けているのが実情です。


健康管理は“労務管理の一部”

飲食店の労働環境が厳しいのは事実。
だからこそ 体調・メンタルのケアは店側の労務管理の義務 と言えます。


元気なスタッフが、結局いちばん良いサービスをつくる

飲食店では「サービスの質」は スタッフの状態 に直結します。

疲れ切ったスタッフが接客すれば、お客様は敏感に感じ取り、結果として 売上にも悪影響 を及ぼします。


飲食店の“健康リスク”は他業界よりも高い理由

業界の特性上、以下の負荷は避けられません。


長時間×不規則シフト

閉店後の片付け・締め作業も含めると 実働は10〜12時間に達しやすい
週休2日が確保しにくい店がほとんどです。


立ち仕事による肉体疲労

とくに以下の症状が典型です

  • 腰痛
  • 足のむくみ
  • 冷え
  • 手荒れ
  • 慢性疲労

常にテンポの早い動きが求められ、休む間がありません。


厨房の温度・ホールの寒暖差

厨房は夏に40℃近く、冬は足元が冷えるなど、体温調整が難しい職場。
熱中症や脱水が起きやすい環境です。


騒音・クレーム・多客ストレス

「すべてのお客様に気を遣う」職場のため、接客ストレスは一般事務の比ではありません。


飲酒機会が多い(打ち上げ・まかない)

業界特有の文化として、閉店後の飲酒が習慣化している店もあります。
翌日のパフォーマンス低下と慢性疲労を招く典型例。


深夜勤務と生活リズムの乱れ

終電帰宅・夜中就寝は、自律神経の乱れ・メンタル不調の原因に。


健康・メンタル不調が店に与える“深刻な影響”

次のような影響が確実に出ます。


退職率の上昇(特に若手)

飲食店の離職理由の50%以上は 「体力的にきつい」「休めない」


業務クオリティの低下

疲れていると次のようなミスが起きやすくなります。

  • 注文ミス
  • 調理ミス
  • 皿割り
  • レジミス

これらは すべて売上損失と顧客満足度低下に直結


ハラスメント・人間関係トラブルの増加

疲れた脳は他人に厳しくなります。
上司の叱責・スタッフ同士の衝突が増えます。


労災・腰痛・転倒事故

疲労が蓄積すると怪我が増え、長期欠勤→職場負担の悪循環へ。


経営者の“管理コスト増”

退職者が出るたびに発生するコストは、飲食店にとって大きな経済的負担です。

  • 採用コスト
  • 教育コスト
  • 戦力化までの待ち時間

健康管理=労務管理:飲食店が必ず導入すべき3本柱

次の3つを整えるだけで、離職は大幅に減り、サービス品質も上がります。


過重労働の見える化とシフト管理

労働時間の実態把握(これをやっていない店が多い)

飲食店で最も多い問題は「実際の労働時間が経営者が把握している時間と違う」ということです。

タイムカード+終業時刻の現場確認 が必要。


忙しい日を見越した“予備シフト”を用意

週末・イベント・雨天などで忙しさが変動します。
補助的に入れるスタッフ枠(ヘルプ)を作ると、長時間労働を防げます。


1か月単位の変形労働時間制の正しい使い方

飲食店は導入率が高い制度ですが、ルールを誤解して違法残業になっている店が多いです。

  • 就業規則に必ず記載
  • シフト表に“労働日・休日”の明示が必要
  • 対象期間と総労働時間の管理が必須

深夜手当と仮眠・休憩を必ず確保

  • 22時以降は25%割増
  • 休憩は6時間で45分、8時間で60分

忙しい店ほど休憩が後回しになりますが、休憩を取らない勤務は労基法違反です。


飲酒対策:飲食業だからこそ必要な“ルール化”

業界慣習「閉店後の飲み」に注意

スタッフ同士のコミュニケーションとしては良い面もありますが、翌日のパフォーマンス低下は重大。


ルールを設けるだけで全体が改善する

例:

  • 閉店後の飲酒は1時間以内
  • 翌日早番のスタッフは飲酒禁止
  • 店内・事務所の飲酒は一切NG
  • 飲酒強要はハラスメント

飲酒が常態化すると遅刻・欠勤・メンタル不調・事故 が圧倒的に増えます。


飲酒の健康リスクを周知する

店内ミーティングや掲示で、アルコールによるパフォーマンス低下や身体への負担も共有しておくと効果的。


休養制度:飲食店が“最も見落とすポイント”

これが本記事の核心です。


飲食店に特に必要な休養制度

① 年次有給休暇

→ 売上重視で“取りにくい雰囲気”が最大の問題。

② 連続休暇制度

→ 月1回の「2連休」があるだけで離職率が一気に下がります。

③ 疲労回復休暇

→ 繁忙期の後に1日付与するだけで体力が戻る。

④ 深夜労働明けの“仮眠+遅出”制度

→ 終電帰りの翌朝9時出勤は不健康の典型。


メンタルヘルスの基礎知識:飲食店で特に起きやすい症状

飲食店で多い精神的トラブルは次のとおり。

  • 睡眠不足
  • 仕事のプレッシャー
  • 毎日の対応ストレス
  • 過重労働
  • 複数業務の同時処理

これらが積み重なると、次のような症状が現れます。

  • イライラ・怒りっぽさ
  • ミス増加
  • 集中力低下
  • 無気力
  • 過食・拒食
  • 不眠

管理職が早期に気づくことが極めて重要です。


飲食店が今日からできる“健康・メンタルの仕組みづくり”

毎月の体調チェックシート

  • 睡眠
  • 食欲
  • 疲労度
  • メンタルの状態

相談しやすい環境を作ります。


休養の見える化(連休義務化)

実際にシフトへ「連休枠」を書き込むだけで効果絶大。


終礼後の“飲酒タイム制限”

10〜20分の軽いミーティング+飲酒はOK。
ダラダラ飲みが問題。


業務マニュアル化で新人の疲労軽減

マニュアルがない店は疲労が倍増します。


相談窓口を明確にする

  • 店長
  • 副店長
  • 社労士
  • 外部相談窓口

悩みを抱え込ませない。


当事務所からのメッセージ:健康管理は“労務”です

飲食店の健康管理は、売上アップ・離職率改善・ハラスメント防止すべてに効果をもたらす“投資”です。

当事務所では、以下をまとめてサポートしています。


過重労働の改善プラン作成

■ 労働時間の見える化
■ シフト分析
■ 36協定の適正化


メンタルヘルス体制づくり

■ 相談窓口の設計
■ 店長向け研修
■ 早期発見シートの導入


休養制度の導入サポート

■ 月1回の連休制度
■ 深夜後遅出制度
■ 繁忙期後の休暇設計


社内飲酒ガイドラインの作成


「スタッフが元気な店は、必ず繁盛店になる」健康管理は、労務であり、経営戦略です。

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