スシロー 労基署が是正勧告 労働時間5分未満切捨

概要

大手回転ずしチェーンのスシローを運営する「あきんどスシロー」が、アルバイトの5分未満の端数を切り捨てて労働時間を計算していたため未払い賃金が生じているとして、中央労働基準監督署(東京都)から是正勧告を受けていたことが2024年1月11日に分かった。

20年秋以降に勤務した店舗で労働時間の端数切り捨てがあり、会社側に未払い賃金があると訴えたが解決せず、労基署に申告した。

会社側は22年9月から労働時間を1分単位で計算する運用に改めたが、労基署は22年8月以前で賃金請求権の時効(3年)にかからない期間の未払い分について是正するよう、23年12月25日付で勧告したという。

朝日新聞デジタル、日本経済新聞デジタルより

労働時間は原則1分単位ですが例外も

日々の労働時間を15分単位で把握している会社もありますが、労働時間は1分単位が原則になります。

ただし、次のような範囲であれば、賃金不払いの法違反として取り扱わないこととされています。

1か月の合計時間が、時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の時間数に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。(昭和63年3月14日付け基発150号)

つまり、給与計算をするときは1時間単位で計算することになります。

労働者からの労働基準監督署への申告

今回のような件は、労働基準監督署の定期調査では、指摘されない可能性もありますが、労働者からの申告があったから是正勧告を受けたとものと思われます。

労働組合(ユニオン)がついていたことも要因の1つではないでしょうか。

労働組合(ユニオン)とは

ユニオンは、企業内の労働組合とは異なり、複数の会社や異業種の会社の労働者が、その加入員となっています。業種や職業、地域別に組織されます。

ユニオン(労働組合)とは、労働者が一人でも加盟できる会社の外の労働組合です。
ユニオンは、従業員保護のための重要な役割を担っており、一定の条件を満たせばその活動は法律(憲法や労働組合法)で保障されています。

中小企業で、労働組合が社内にあるところは少ないと思いますが、社員でもアルバイトでもユニオンに加入することもありえます。

未払い賃金の時効

未払い賃金の時効は以前は2年でしたが、2020年4月に改正があり、現在は3年になります。
起算日は、給与支払日です。
給与支払い日から3年が経過した時点で時効となります。

スシローも2022年9月に1分単位に変更したようですが、時効にかからない約1年半分が未払いとなると思われます。

以前、スシローに対しユニオンからこんな要求も

2022年10月
回転ずし店「スシロー」のアルバイトが加入する労働組合が、着替えなど準備時間分の賃金を支払うよう運営会社に求めている。
会社は先月から「手洗いなどの時間」として3分間の賃金を支払い始めたが、過去の未払い分の支払いには応じていないという。労組は対応が不十分だとして、さらなる改善を求めている。

アルバイトが加入する労組「首都圏青年ユニオン」が27日に会見して明らかにした。それによると、従業員はタイムカードを打刻する前に、手洗いや着替えなどを済ますように指示されている。手洗いは指をこする回数などを指定されており、準備時間は計10~15分かかるという。
朝日新聞デジタルより

準備時間も労働時間

着替えなどの時間は、労働基準法では明確にはされていませんが、過去の裁判例から更衣室で制服に着替えるように指示されているような場合は労働時間とする考えが一般的です。

ここで問題になるのが、着替えの時間は人によってまちまちなことです。

女性の場合、着替えながらお化粧もするような人がいた場合、かなりの時間がかかることになります。

従業員とも話しあい、着替えをする平均的な時間を測定し、その時間を着替えに要する時間とみなすような対応も必要になると思います。