社会保険の106万円の壁、130万円の壁

106万円の壁は、従業員101人以上(令和6年10月からは51人以上)の企業に勤める方が対象で、106万円を超えると、社会保険に加入することになり、健康保険の被扶養者から外れることになります。

130万円の壁は、企業規模に関係なく年収130万円以上になると、健康保険の被扶養者から外れることになります。

従業員数のカウント方法

従業員のカウントは、正社員のみでもなく、アルバイトを含めた全員でもなく、適用拡大前からあった厚生年金に適用するべき人数が基準になります。
具体的には、フルタイムの従業員数+週所定労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数になります。

週の所定労働時間が一定でない場合

飲食業やサービス業などのアルバイトで、シフト制で週の所定労働時間が定まっていない場合は、1か月の所定労働時間×12カ月/52週で算出します。
フルタイムの所定労働時間が1日8時間、週40時間の企業の場合は、1か月130時間以上の場合が該当します。

月によって対象者が増減する場合

フルタイムの3/4以上の従業員数が月によって増減することで101人以上になったりならなかったりする場合です。
この場合、「直近12カ月で6か月以上基準を上回る場合、日本年金機構が職権で適用する」ことになりますので、この基準を参考するのがいいと思います。

社会保険適用事業所の単位

社会保険の場合は、法人の場合は法人ごとの規模になります。
飲食業やサービス業の場合など店舗が複数ある場合は、合計の人数になります。

加入対象者(106万円の壁)

106万円の壁とは、下記(2)の8.8万円×12カ月≒106万円となり、社会保険の被保険者の条件の1つになるからです。

なお、101人以上(令和6年10月からは51人以上)の企業の場合、以下のすべてに該当する場合は、健康保険、厚生年金の加入対象者となります。
加入対象者になるということは、健康保険を配偶者、親などの被扶養者になっている場合、外れることになります。

(1)週の所定労働時間が20時間以上であること

 飲食業やサービス業などのアルバイトで、シフト制で週の所定労働時間が定まっていない場合は、1  か月の所定労働時間×12カ月/52週で算出します。
 フルタイムの所定労働時間が1日8時間、週40時間の企業の場合は、1か月130時間以上の場合が該当します。

(2)所定内賃金が月額8.8万円以上であること

 所定内賃金からは、以下の手当等は除かれます。
 ・臨時に支払われる賃金および1月を超える期間ごとに支払われる賞与などの賃金
 ・残業手当、休日出勤手当、深夜手当など
 ・最低賃金法で算入しないことを定める賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当など

(3)学生でないこと

 雇用保険の取り扱いと同様に、大学、高等学校、専修学校、各種学校等に在学する生徒または学生は適用対象外となります。
※100人以下の企業の場合、学生でないことの基準がありませんので、学生であっても社会保険の対象になる可能性があります。

130万円の壁

130万円の壁とは、年収130万円を超えると健康保険の被扶養者から外れることを言います。
年収とは、所得税のように1月から12月の期間ではなく、被扶養者に該当する時点及び認定された日以降の年間の見込み収入額のことを言います。
したがって、退職などで収入がなくなった場合は、すぐに転職しない場合は、被扶養者として認定されることになります。

また、130万円と言っていますが、被扶養者が年齢が60歳以上の場合や、一定の障がい者の場合は180万円になります。

被扶養者の収入要件

被扶養者になれる家族の範囲はここでは割愛しますが、年収が130万円未満であっても、被扶養者になれない場合もあります。
被扶養者の収入要件は、同居の場合は、年収130万円未満かつ被保険者の収入の半分未満、別居の場合は、家族の収入が被保険者の仕送り額未満となります。

106万円と130万円の壁では、賃金の要件が異なる

106万円の壁の所定内賃金のみですが、130万円の年収要件は賞与や残業手当、通勤手当などすべての賃金が含まれます。
所定内賃金は8.8万円以下であっても、残業手当や通勤手当などを含めると130万円以上になる場合は、勤務する会社では社会保険に加入する要件に当てはまらなくても、被扶養者から外れることになります。
100人以下の企業でも、東京の場合最低賃金が1113円ですので、月100時間労働でも年収は130万円を超えますが、フルタイムの週の所定労働時間は3/4以下になることがほとんどです。
この場合は、国民健康保険と国民年金に加入することになります。

130万円の壁の対策

厚生労働省保険局保険課が健康保険組合に対して、令和2年4月10日 事務連絡として「被扶養者の収入の確認における留意点について」という文書を通知しています。

以下の通知文章でもわかるとおり、年収130万円以上になる場合でも、直ちに被扶養者から外されるわけではありませんが、各健康保険組合での判断に任される部分が多いです。

<一部抜粋>
・今後1年間の収入を見込む際には、例えば、認定時(前回の確認時)には想定していなかった事情により、一時的に収入が増加し、直近3ヶ月の収入を年収に換算すると130万円以上となる場合であっても、直ちに被扶養者認定を取消すのではなく、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書等と照らして、総合的に将来収入の見込みを判断すること。

・ 確認に当たり、被扶養者認定を受けている方の過去1年間の収入が、昇給又は恒久的な勤務時間の増加を伴わない一時的な事情等により、その1年間のみ上昇し、結果的に130万円以上となった場合においても、原則として、被扶養者認定を遡って取り消さないこと。

年収の壁・支援強化パッケージ

事務連絡で健康保険組合に通知されているものの、不透明な部分が残されていました。
そのため「年収の壁・支援強化パッケージ」の1つとして、収入が一時的に上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、最大2年間引き続き扶養に入り続けることが可能となる仕組みができました。

職場の人手不足に対応するため、働く時間を延ばしたことなどによる一時的な収入変動が対象となり、勤務先の事業主が一時的な収入であることを証明することになります。

一時的な収入と認められない事例としては、時給アップによる恒常的な収入増加などがあると思います。

また、証明書の様式は厚生労働省のホームページに公開されています。
証明書は被扶養者の勤務先で証明して、被保険者の勤務先に提出することになります。