傷病手当金・育児休業給付金の“店側が知っておくべき”基礎知識


なぜ飲食店では「休業・給付金トラブル」が発生するのか

飲食店は、他業種と比べても “人が辞めやすい” “突発欠勤が多い” “働き方が複雑” という特徴があります。

・シフト制で働くスタッフが多い
・主婦パート、学生、Wワーカーの割合が高い
・アルバイト比率が高く、労働時間が不安定
・深夜・土日勤務など負担が大きい
・妊娠・出産を迎える女性スタッフも多い

この環境下では、病気・ケガ・妊娠・出産・育児に関する労務トラブルが他業種より圧倒的に発生しやすい のです。

特に以下の問題は、「飲食店ならでは」の課題です。


飲食店で本当に起きている“危ないトラブル”例

トラブル①

「シフトに入れないんだから、給与ゼロでいいよね?」
傷病手当金の対象なのに説明がない。 後から家族からクレーム。

トラブル②

「妊娠したので休みたいと言われた。うちはパートに育休はないから退職してもらう」
完全に違法。 雇用保険加入パートは育休可能。

トラブル③

「復職できるかは店長が見て判断する」
→ 医師判断が必須。独断復帰は重大事故リスク。

トラブル④

休職の取り扱いが就業規則にない
→ 従業員ともめ、最悪の場合は労基署対応に。

実は、これらは 制度の知識不足 が原因で起こるだけで、正しく理解すれば「ゼロ」にできるトラブルです。

本記事では、飲食店の現場で必ず役立つように、“店側が本当に知っておくべき情報だけ”を専門家の視点で徹底解説します。


傷病手当金とは?

傷病手当金の基本

傷病手当金とは、スタッフが 業務外の病気・けがで働けない 場合に健康保険から支給される制度です。

支給額は 直近の給与の約3分の2(2/3)
支給期間は 最長1年6か月


傷病手当金の支給要件を“飲食店視点”で詳しく

支給要件は4つありますが、「飲食店ではどう当てはまるのか?」を加えて解説します。


【要件1】業務外のケガ・病気

厨房での火傷や転倒は「労災」。
自宅でぎっくり腰、インフルエンザ、メンタル不調は「業務外」。

・ぎっくり腰
・熱中症
・胃腸炎
・インフル・コロナ
・うつ・適応障害
・睡眠障害

これらは 傷病手当金の対象になりやすい です。


【要件2】3日以上の待期

「連続した3日間」がポイント。

「シフトが入っていない日」、「有給休暇」も待期にカウントされます。

飲食店では「シフトがゼロでも待期になる」ことを知らないケースが非常に多いです。


【要件3】労務不能

医師の意見が最重要。

店側が「軽い仕事ならできるでしょ?」と判断してはいけません。

飲食業は重労働であり、“立ち仕事”というだけで労務不能の判断になることがある業種です。


【要件4】給与の支払いがない

飲食店は時給制が多いため、病気で休めばほぼ給与ゼロ。

→ 給付対象になりやすい。


傷病手当金の“飲食店での実務ポイント”

スタッフが病院に行ったら「診断書の内容」を必ず確認

・労務不能期間
・復職可否
・通院の必要性

診断書が無いと揉める原因になります。


待期の計算は店側も必ず把握

店側が間違えて説明し、後から訂正になることが多い制度です。


申請書の事業主記入欄は「事実だけ」を書く

※注意
・“本人が嘘をついているのでは?”
・“本当は働けるはず”
などの推測は絶対NG。


復職判断は“店の都合”で行ってはいけない

医師の復職可否が最優先。

飲食店は
・長時間の立ち仕事
・重いものを持つ
・熱い・湿度の高い環境
など、身体負担が大きく、過剰復職で悪化するケースが多いのが特徴。


育児休業給付金とは?

育児休業給付金の基本

育児休業給付金は、育休を取得したスタッフに対して 雇用保険 から支給される給付金。

支給率

・育休開始〜6か月 → 67%
・7か月〜育休終了 → 50%


飲食店で本当に多い“勘違い”と“誤対応”

❌ 「うちの店はパートに育休はないです」

完全に誤り
雇用保険加入者なら育休を取れる。


❌ 「シフトが安定していないから育休は無理」

→ 勤務時間の多い少ないは関係ありません。


❌ 「復帰日は店が決める」

→ 子どもの保育園状況に応じて本人と相談する必要がある。


❌ 「育休中は社会保険料を払わないといけない?」

免除制度あり
店にもスタッフにもメリット。


育児休業給付金の“飲食店ならではの注意点”

シフト制でも育休は取得できる

シフトの多さは関係ありません。


代替スタッフの確保が課題

飲食店に多い問題は「育休の代わりの人がいない」。


・短時間パートの戦力化
・高校生アルバイトの教育
・業務の分担見直し
など、育休前にシフト構造を整えることが重要


産前休業・産後休業・育児休業の流れを理解する

特に女性スタッフが多い店舗では必須。


育休延長(1歳→1歳半→2歳)の判断

保育園に入れないケースが多く、飲食店は延長申請が頻出します。


就業規則・シフト管理・給与計算で“店側が必ずやるべきこと”

就業規則の整備

・休職制度
・復職基準
・育児休業の流れ
・手続き方法
これらが曖昧だと必ず揉めます。


シフト管理のルール化

・急な欠勤の対応
・代替スタッフの手配
・有給休暇の付与ルール
・深夜・休日手当の整理


診断書・面談記録・休業申出書を残す

労基署対策としても重要。


復職面談の実施

飲食業は身体負荷が大きいため、復帰前の最終確認は欠かせません。


よくある「境界事例」への専門家の見解

ケース①:一部の業務はできるが全部は無理

→ “労務不能”は「仕事内容全体で判断」します。


ケース②:シフトの希望を出したくても出せない

→ 店側が早期面談を行い、誤解を防ぐ。


ケース③:休業中に給与が出ている部分がある

→ 傷病手当金の調整が必要。


ケース④:育休中に短時間だけ働く

→ 可能だが、給付金停止の条件を理解しておく。


店側に降りかかるリスクと回避策

リスク1:スタッフ離職

制度を知らない店は離職しやすい。


リスク2:SNSでの炎上

「育休を拒否された」、「復職できないと言われた」これらはすぐ拡散します。


リスク3:労基署からの指導

育休拒否・不当な休職扱いは重大な違反。


回避策

  1. 制度の理解
  2. 就業規則整備
  3. 記録管理
  4. 専門家の早期相談

当事務所(飲食業専門 社労士)からのアドバイス

飲食店は、「法律・制度・現場感」がすべて揃わないと正しい判断ができない業界 です。

✔ 曖昧なルール
✔ シフト制の勤務
✔ 店長の独断
これらがトラブルの根源となります。

・傷病手当金の実務サポート
・育児休業給付金の申請支援
・シフト管理の整備
・休職制度の設計
・復職面談の運用
・就業規則の見直し

など、飲食業の現場に合わせた実務支援を提供しています。

「うちは小さい店だから…」という店舗ほど仕組み化が重要です。


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