「期間の定めがある労働者」と「期間の定めがない労働者」の違い~雇用区分の誤解がトラブルを招きます~


飲食業は「短期採用」「シフト制」「学生アルバイトが多い」という特性から、期間の定めがある労働者(有期契約) が非常に多い業界です。
しかし、店長や経営者の方から、以下のようなご相談が多くあります。

  • 「契約更新のたびに書面って必要ですか?」
  • 「3年同じ子を雇っているけど、このままでいい?」
  • 「無期転換って何ですか?」
  • 「雇止めってどういうルール?」

労働契約の区分を理解しないまま採用を続けると、思わぬ労務トラブル・損害賠償・不当解雇トラブルにつながるリスクが非常に高くなります。

本記事では、飲食業専門の社会保険労務士の立場から、飲食店が必ず理解すべき「有期」と「無期」の違いをわかりやすく解説します。


期間の定めがある労働者(有期契約)とは?

契約期間を定めた雇用

あらかじめ「雇用の期間」を決めて雇う従業員のことです。

  • 3か月更新
  • 半年更新
  • 1年更新

飲食業では以下のケースが非常に多いです:

  • アルバイト
  • パート
  • 試用期間後に一年更新の契約社員
  • 季節バイト(夏休み・年末年始)

有期契約の特徴

  • “期間満了で雇用終了”ができる(ルールあり)
  • ただし、更新を繰り返すとトラブルの温床に

期間の定めがない労働者(無期契約)とは?

雇用期間に期限がない契約

  • 正社員
  • 無期転換された元アルバイト

無期契約の特徴

  • 「期間満了」という概念がない
  • 途中解雇には厳しい制限
  • シフト制でも無期は一定の保護

飲食店に特有の“有期契約の誤解”

❌ 誤解1:アルバイトはみんな有期契約

→ 実際には「契約書で期間が書いていなければ無期」になります。

❌ 誤解2:更新を口頭ですればOK

→ 法律上は「書面」で明確にしなければなりません。

❌ 誤解3:更新を5年間続けても問題ない

→ 無期転換ルールの対象になります。


無期転換ルール(飲食店こそ重要)

5年を超えて働いたら、労働者は

『無期雇用にしてください』と申し込む権利が発生。

飲食業は「長く働くアルバイト」が多く無視できない

  • 大学生が4年
  • 卒業後も継続
  • 気づいたら6年働いていた

▲ こういうケースで無期転換申込みが発生します。

有期・無期でまったく異なる「退職のルール」

雇用期間の定めがあるかどうかで、退職(自己都合で辞める) に関する扱いも大きく異なります。


期間の定めがない労働者(無期契約)の退職

民法627条により、労働者は2週間前に退職の意思を伝えれば退職が可能です。

正社員はもちろん、「契約書に期間が書かれていないアルバイト」もこの扱いになります。

会社が承諾しなくても、2週間経過で労働契約は終了します。


期間の定めがある労働者(有期契約)の退職

一方、有期契約の場合はルールが大きく異なります。

原則:期間満了まで退職できない

有期契約は「○月○日~○月○日まで働く」という約束で結んでいるため、原則として契約期間の途中で辞めることはできません。

例外

  • やむを得ない事由(体調悪化、強度のハラスメント 等)がある場合
  • 労働者と会社の合意で契約解除する場合

これらの例外を除き、基本的には「期間満了」まで継続勤務が前提となります。


飲食店で起きがちなトラブル

飲食業では、学生アルバイトが急に辞めたり、急な人手不足によりシフトが組めなくなることがよくあります。

しかし有期契約の場合、会社側は「契約期間がある以上すぐ退職は認められない」と主張できます。

逆に、契約期間があるにも関わらず「明日から来なくていい」と会社が急に終了させることもできません。


  • アルバイト契約書に必ず「契約期間」を明記する
  • 有期か無期か分かるように管理台帳を作る
  • 契約更新のたびに書面を交付する
  • 退職ルールを就業規則に明記する

これらを徹底することで、「辞める・辞めない問題」からくる店舗トラブルを大きく防げます。


雇止め(契約終了)のルール

期間満了だからといって自由に切れない

  • 更新を繰り返してきた
  • 店長が「長く働いてほしい」と言っていた
  • 実質的に無期の扱いだった

こうした場合、雇止め=解雇と同じ扱いになることがあります。



飲食店が守るべき実務ポイント

  1. 雇用契約書のテンプレート整備
  2. 更新基準の明確化
  3. 契約期間管理表の作成
  4. 就業規則の整備(無期転換ルール対応)
  5. 雇止めのリスク管理

当事務所からのアドバイス

飲食業は一般企業より「契約更新」「無期転換」「雇止め」が起きやすい業種です。

実務を見てきて痛感するのは、“正しいルールの理解があるかどうか”でトラブルの発生率が大きく変わるということです。

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