「期間の定めなし」は消し忘れでも有期?~東京地裁が“雇用期間満了終了”を認めた判決から、飲食店が学ぶべき契約書の落とし穴 ~

2025年12月18日、労働新聞にて「雇用期間満了終了を認める 契約書は“消し忘れ” 東京地裁」
という、実務上きわめて重要な判決が報じられました。

一見すると「え?契約書に“期間の定めなし”って書いてあるのに?」と驚く内容ですが、飲食業の現場では“決して他人事ではない判決”です。


判決の概要|何が争われたのか?

事件のポイント

  • 勤務先:東京都内の税理士法人
  • 労働者の主張:
    • 自分は「無期労働契約」で雇われていた
    • 期間満了を理由に本採用を拒否するのは違法
  • 会社の主張:
    • 契約は有期
    • 契約期間満了で終了しただけ

問題となった契約書

驚くべきことに、契約書には次のような状態でした。

  • 「期間の定めあり」
  • 「期間の定めなし」

併記されていたのです。


東京地裁の判断|「消し忘れ」と評価

裁判所の結論

東京地裁(令和7年11月26日判決)は、本件労働契約は有期労働契約であるよって、期間満了による終了は有効と判断しました。

なぜ「無期」ではなかったのか?

裁判所は、以下の事情を総合的に評価しています。

① 契約書の「期間の定めなし」は消し忘れ

  • 契約書の様式上、「期間の定めあり」「なし」が並列で記載
  • 本来チェックや削除をすべき箇所が残っていた
  • 実態としては「有期契約」で合意していた

👉 単なる形式ミス(消し忘れ)と評価

② 面接時に有期である説明があった

  • 採用面接の場で、「契約期間があること」、「一定期間後に判断すること」を説明
  • 労働者も理解・同意していた

③ ハローワーク求人票との関係

  • 求人票には「期間の定めなし」と記載
  • しかし、「求人票はあくまで募集段階の資料」、「最終的な契約内容は労使合意が基準」

    👉 求人票の記載だけで無期とはならない

この判決、飲食店にどう関係する?

「税理士法人の話でしょ?」と思われた方、要注意です。

飲食業こそ“同じ構図”が多い

飲食業では、次のようなケースが非常に多く見られます。

  • アルバイト・パートの契約更新
  • 試用期間付き採用
  • 正社員登用前提の有期契約
  • 人手不足で説明が曖昧なまま契約

そして、契約書のテンプレを使い回しているこれが最大のリスクです。


「期間の定めあり/なし」併記の危険性

よくある契約書の実態

飲食店で実際によく見る契約書👇

  • 昔の様式を修正しながら使用
  • チェックボックスが複数残ったまま
  • Wordで削除したつもりが残っている
  • 手書きで修正して意味が不明確

今回は会社が勝ったが

今回の判決は、「たまたま」会社側に有利な事情が揃っていただけです。

もし次のような事情があれば、結果は逆だった可能性もあります。

  • 面接時の説明が曖昧
  • 説明した証拠がない
  • 更新を何度も繰り返していた
  • 正社員同様の扱いをしていた

有期契約と無期契約の基本整理

有期労働契約とは

  • 契約期間が明確(例:6か月、1年)
  • 原則、期間満了で終了
  • ただし「更新期待」があると雇止めリスク

無期労働契約とは

  • 契約期間の定めなし
  • 解雇には厳格な理由が必要
  • 試用期間終了=自動的に継続

「求人票」と「契約書」のズレが招くトラブル

求人票あるある

  • ハローワーク任せで内容を確認していない
  • 「とりあえず期間の定めなし」にチェック
  • 実際は試用期間や有期前提

👉 求人票と契約書が食い違う

裁判ではどう見られる?

  • 求人票:参考資料
  • 契約書・説明内容:決定的証拠

ただし、説明した「証拠」がなければ、会社は不利


飲食店が今すぐやるべき3つの対策

① 契約書様式の総点検

  • 「期間の定めあり/なし」が併記されていないか
  • チェック方法は明確か
  • 第三者が見て誤解しないか

👉 1文字のミスが裁判リスクに直結

② 面接・採用時の説明を「証拠化」

  • 契約期間
  • 更新の有無
  • 正社員登用の条件

これらを「書面」、「契約書」、「説明確認書」として残すことが重要です。

③ 更新時の「なんとなく継続」をやめる

  • 更新理由を明確に
  • 評価・判断基準を説明
  • 更新回数を意識する

今回の判決からの最大の教訓

「契約書は、実態と一致していなければ意味がない」
そして、「消し忘れ」は、命取りになることもあるということです。


飲食店の労務は“後回し”が一番高くつく

  • 人手不足だから
  • 忙しいから
  • 今までは大丈夫だったから

こうした理由で放置された労務管理が、ある日突然「裁判」「労基署」「未払い請求」になります。


お電話や  お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。
初回相談はオンライン・無料対応しています。