スポットワークの労務管理|直前キャンセル・休業手当・労働契約成立時期


飲食業で急増する「スポットワーク」利用の落とし穴

「急に人が足りない」
「週末だけ人手を増やしたい」

そんなときに便利なのが、いわゆるスポットワーク(単発・短時間就労)です。
飲食業では、ホール・キッチン補助・洗い場などで利用が急増しています。

しかし最近、「キャンセルしたら賃金を請求された」、「来てもらわなかったのに支払い義務があると言われた」といった労務トラブルの相談が、当事務所にも急増しています。

その背景にあるのが、厚生労働省が公表した「スポットワークに関するリーフレット」と、スポットワーク協会による労働契約成立時期の明確化です。


そもそも「スポットワーク」とは?

厚生労働省のリーフレットでは、スポットワークを次のように整理しています。

  • 短時間、単発の就労
  • アプリ等を通じてマッチング
  • 事業主とスポットワーカーが直接、労働契約を結ぶ

⚠️ 重要ポイント
スポットワーク仲介事業者(アプリ会社)と労働契約を結ぶわけではありません。
労働基準法の責任は、すべて事業主(飲食店側)にあります。


労働契約は「いつ成立するのか?」

ここが最大の誤解ポイントです。

面接なし・先着順求人の場合

厚労省リーフレット

面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、
応募が完了した時点で労働契約が成立すると一般的に考えられる

「まだ働いていない」、 「来ていないから契約前」ではありません。


2025年9月1日以降の重要な考え方

スポットワーク協会は、2025年9月1日以降、応募完了時点で「解約権留保付労働契約」が成立するという考え方を統一しました。

解約権留保付労働契約とは?

  • 一旦は労働契約が成立
  • ただし、一定の条件下でキャンセル(解約)が可能

👉 「契約していないからキャンセル自由」ではないという点が、飲食店経営者にとって極めて重要です。


使用者(飲食店)からのキャンセルは原則NG

就労開始24時間前以降

飲食店側からの解約は、原則できません

例外として認められるのは、次のような場合です。

解約が認められる主な事由(抜粋)

  • 天災などの不可抗力
  • 必要資格が確認できない
  • 募集条件に明示した経験・身だしなみを満たさない
  • 反社会的行為があった など

⚠️ 注意
「忙しくなくなった」
「思ったより人が足りていた」

👉 これだけでは、解約は無効になる可能性があります。


キャンセルできない場合は「休業手当」が必要

もし、解約できないのに「来てもらわなかった」、「途中で帰ってもらった」場合は、労働基準法26条の休業手当が必要です。

休業手当の原則

  • 平均賃金の60%以上
  • ただし、約束した賃金を全額支払ってもOK

👉 実務上は、予定賃金の満額支払いを選ぶ店舗が多いです。


労働条件通知書は「必須」

スポットワークでも、以下の明示は必須です。

  • 賃金額
  • 労働時間
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 解約条件

仲介事業者が代行している場合でも、最終的な責任は飲食店側にあります。


着替え・待機時間も「労働時間」

飲食業で特に注意が必要なのが、「制服への着替え」、「指示による待機」、「開店準備・閉店後の片付け」 すべて労働時間に該当する可能性があります。

「更衣は勤務前だから無給」は通用しません。


労災・ハラスメント対策も必要

スポットワーカーでも、「労災保険の対象」、「パワハラ・セクハラ防止措置の対象」になります。

「単発だから関係ない」は完全にNGです。


飲食店が今すぐ見直すべきチェックリスト

✔ 募集条件は具体的に書いているか
✔ 身だしなみ・経験条件を明示しているか
✔ キャンセル基準を整理しているか
✔ 休業手当の理解はあるか
✔ 現場スタッフが勝手に帰らせていないか


社労士からのアドバイス|スポットワークは「使い方」が9割

スポットワーク自体は、飲食業にとって非常に有効な人材確保手段です。

しかし、「労働契約の理解不足」、「現場任せの運用」、「曖昧な募集条件」があると、一気にリスクに変わります。


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