安全配慮義務とは?~飲食店経営者が絶対に知っておくべき法的責任と実務対応~
飲食店を経営していると、「従業員が厨房でケガをした」、「長時間労働が続き、体調を崩したスタッフが出た」、「パワハラ・カスハラが原因でメンタル不調になった」、「深夜勤務が続き、うつ病で休職・退職した」こうした場面に直面することがあります。
このとき、必ず問題になるのが「安全配慮義務」です。
「労災保険に入っているから大丈夫」
「本人の不注意では?」
「忙しい業界だから仕方ない」
そう考えていると、後から高額な損害賠償請求や訴訟リスクに発展することもあります。
目次
安全配慮義務とは?
安全配慮義務の基本的な意味
安全配慮義務とは、「従業員が安全かつ健康に働けるように配慮する義務」のことです。
会社(使用者)は、従業員の生命・身体・精神の安全を守る責任があります。
単に「危険なことをさせなければいい」という話ではなく、「ケガをしない環境づくり」、「心身に過度な負担をかけない労働環境」、「ハラスメントを放置しない体制」まで含まれます。
法律上の根拠はどこにある?
安全配慮義務は、主に次の法律から導かれています。
① 労働契約法 第5条
使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、
必要な配慮をするものとする。
これが、安全配慮義務の直接的な根拠条文です。
② 民法(債務不履行責任・不法行為責任)
安全配慮義務違反は、債務不履行(民法415条)、不法行為(民法709条)として、損害賠償請求の対象になります。
③ 労働安全衛生法
労働災害防止のための具体的な措置を定めており、安全配慮義務を具体化した法律といえます。
飲食業で特に問題になりやすい安全配慮義務
飲食業は、他業種と比べて安全配慮義務違反が問題になりやすい業界です。
理由は以下の通りです。
- 高温・刃物・油を使う厨房
- 慢性的な人手不足
- 長時間労働・深夜勤務
- クレーム・カスタマーハラスメント
- 若年・アルバイト比率が高い
それぞれ見ていきましょう。
厨房内の事故(火傷・切創・転倒)
- 油で滑りやすい床
- 整理されていない動線
- 高温のフライヤー
- 包丁・スライサー
これらによるケガは、「業務上予見できた危険」と判断されやすいです。
つまり、対策できたのに放置していたとされると、安全配慮義務違反が成立します。
長時間労働・過重労働
- 人が足りないから連勤
- 繁忙期の連続残業
- 店長が休めない
飲食業では「当たり前」になりがちですが、法律的には極めて危険です。
過労による「心疾患」、「脳疾患」、「メンタル不調」は、安全配慮義務違反の典型例です。
メンタルヘルス不調(うつ病・適応障害)
最近特に増えているのが、「パワハラ」、「厳しい叱責」、「過度なプレッシャー」、「クレーム対応のストレス」によるメンタル不調です。
「本人が弱かった」、「気にしすぎ」では済まされず、「異変に気づけたか」、「相談体制はあったか」、「配置転換などの配慮をしたか」が厳しく問われます。
カスタマーハラスメント(カスハラ)
飲食業では、「暴言」、「土下座要求」、「長時間のクレーム」、「SNS晒し」などが発生しやすいです。
これを放置すると、会社が従業員を守らなかったとして、安全配慮義務違反になる可能性があります。
安全配慮義務違反になるとどうなる?
労災とは別に損害賠償請求される
よくある誤解が、労災保険に入っているから会社は責任なしというものです。
これは誤りです。
労災保険は「国の保険制度」であり、会社の民事責任を免除するものではありません。
安全配慮義務違反があれば、「治療費」、「休業損害」、「慰謝料」、「後遺障害逸失利益」などを会社が別途支払う可能性があります。
高額賠償になることも珍しくない
過労死・自殺案件では、数千万円場合によっては1億円超の賠償が命じられた判例もあります。
中小飲食店にとっては、経営が傾くレベルのリスクです。
企業イメージ・採用への影響
- 労基署の是正
- 送検
- SNS・口コミ
これらにより、人が集まらない、離職が増えるという二次被害も起こります。
判例から見る安全配慮義務
長時間労働による過労自殺
裁判所は、「業務量」、「残業時間」、「上司の対応」、「異変の兆候」を総合的に判断し、会社は危険を予見できたとして、安全配慮義務違反を認定しました。
ハラスメントを放置したケース
上司の暴言・叱責を、「指導の一環」、「昔からの社風」として放置した結果、うつ病発症 → 休職。
裁判所は、適切な対応を取らなかったとして会社の責任を認めています。
飲食店経営者が取るべき実務対応
危険の洗い出し
厨房動線、作業手順、人員配置を定期的に見直すことが重要です。
労働時間管理の徹底
- タイムカード・勤怠管理
- サービス残業の排除
- 店長の長時間化防止
「忙しいから仕方ない」は通用しません。
メンタル不調の早期対応
- 相談窓口の明確化
- 異変があれば業務軽減
- 産業医・社労士への相談
就業規則・社内ルール整備
「ハラスメント規程」、「カスハラ対応方針」、「休職・復職ルール」を書面化しておくことで、
会社を守る証拠にもなります。
6.社会保険労務士からのアドバイス
安全配慮義務は、事故が起きてから考えるものではありません。
起きる前に整えておくことが、結果的に、従業員を守り、経営者自身を守る、ことにつながります。
特に飲食業は、人手不足、高回転、現場判断が多いため、第三者の専門家視点が非常に有効です。
当事務所では、飲食業専門の社会保険労務士として、以下のサポートをしています。
- 安全配慮義務の実務相談
- 労災・メンタル不調対応
- 就業規則整備
- 労基署対応
- トラブル予防型労務管理
「これって安全配慮義務違反になる?」、「今のやり方で大丈夫?」と感じたら、問題が大きくなる前にご相談ください。
お電話や お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。


