賞与未払いと最低賃金法違反で書類送検

岡山県の津山労基署は、労働者2人に就業規則で定めた賞与約200万円などを支払わなかったことと、当時岡山県の最低賃金(862円)を下回る額で支給したとして、障害者向け介護福祉事業を行う岡山県鏡野町のNPO法人・稲の穂と同法人の理事長を岡山地検津山支部に書類送検した。

必ず賞与の支払いは必要か?

賞与は労働条件の1つになりますが、労働条件は、「絶対的明示事項」と「相対的明示項」に分けられます。
絶対的明示項とは、必ず明示しなければならない項目で、相対的明示事項は、決めた場合は明示しなければならない項目になります。

絶対的明示項

  • 労働契約の期間
  • 労働契約更新の基準
  • 就業場所及び従事する業務の内容
  • 労働時間、残業、休憩時間、休日、休暇に関する事項
  • 賃金の支給額、計算方法、締め日、支払日、支払い方法に関する事項
  • 退職、及び解雇の事由と手続き方法

相対的明示項

  • 退職金に関する事項
  • 臨時に支払われる賃金(賞与)に関する事項
  • 食費や作業用品など社員が負担すべき費用についての事項
  • 安全及び衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰と制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

賞与は相対的明示事項

賞与の支払いは、相対的事項になりますので、かならずしも支給しなければならないものではありませんが、賞与を支給することを決めた場合は支給する必要があります。

就業規則の記載方法

たんに「賞与は〇月と〇月に支給する。」とした場合は、支給しないと違反になりますが、賞与を支給する会社であっても、業績等で支給しないことがあると思います。

その場合は、「ただし、会社の業績状況等により支給時期を延期し、又は支給しないことがある。」のように規定して、支給しない場合を明示することによって、賞与を支給しないことは可能です。

本件は、就業規則にどのような規定がされていたのか不明ですが、金額が明確になっているところから、労働条件通知書か就業規則に金額まで記載されていたのではないかと思います。

最低賃金について

最低賃金は、従業員全員に適用され、月給制や日給制であっても時間給相当額で計算します。
また、最低賃金には、地域別最低賃金と産業別最低賃金の2種類があります。
この2つの両方が適用される場合には、高い方の最低賃金を支払わなければなりません。

地域別最低賃金

地域別最低賃金とは、毎年10月に都道府県ごとに定められた最低賃金のことです。

産業別最低賃金

産業別最低賃金は、都道府県ごとに特定の産業に設定されている最低賃金になります。

最低賃金の対象となる賃金

最低賃金の対象となる賃金は、毎月定額で支払われる賃金のうち、通勤手当、家族手当などを除く基本的な賃金になります。

具体的には、実際に支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

固定残業手当は除外

固定残業手当は、時間外の割増賃金の一部になりますので、最低賃金の計算からは除外することになります。

最低賃金の確認方法

支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を比較します。

時間給制の場合

時間給≧最低賃金額(時間額)

日給制の場合

日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

月給制の場合

月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合

出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

最低賃金違反は重い罰則

最低賃金に違反すると、50万円以下の罰金の刑事罰が科されるので、重い罰則になります。

刑事罰の定めもあるので、最低賃金違反の場合、労働基準監督署などに通報されると、会社に調査が入り是正勧告されることになります。

是正勧告後、速やかに改善を行い支払などを完了した場合は多くの場合それ以上の問題になることはありませんが、是正勧告を無視した場合や虚偽の報告を行った場合、その他行政が悪質と判断した場合には、書類送検、罰金という手続きに進む場合があります。

本件の場合、詳細は不明ですが、是正勧告を無視したのではないでしょうか?