固定残業(みなし残業)手当の計算方法

固定残業手当を導入する場合、大きくわけて2つのパターンの計算方法が考えられます。
1つは、基本給から固定残業手当を計算するパターンで、もう1つは給与総額から、基本給と固定残業手当に分けるパターンです。
ここでは固定残業手当の概要や種類、固定残業代をパターン別に紹介します。

固定残業手当とは

「固定残業手当」は、従業員がある一定の残業をすることが予測される場合に、給与にあらかじめ決められた時間分だけ残業手当等の割増賃金を支給する制度です。

通常、労働契約や労働規程で定められ、従業員が定時労働を超えて働くことが予定されている場合に、その残業時間があらかじめ設定されています。

なお、実際の残業時間が固定残業手当で設定した時間を超えた場合は、その差額の手当は支給する必要があります。

固定残業手当の設定時間

固定残業時間の設定時間は、特に決まりはありませんが、労働基準監督署へ届け出ている36協定(時間外・休日労働に関する協定書)の1か月の上限労働時間の範囲内で設定することになります。

固定残業時間30時間の場合

36協定の時間外労働の上限(「限度時間」)は、月45時間・年360時間ですので、年の上限時間360時間を根拠にする場合です。
年360時間/12カ月=30時間とする場合です。

固定残業時間45時間の場合

36協定の時間外労働の上限(「限度時間」)は、月45時間・年360時間ですので、月の上限時間45時間を根拠にする場合です。

固定残業時間60時間の場合

36協定を特別条項付きで協定し、月45時間を超えて残業することがある場合、60時間を超えて残業するときは、残業手当の割増率が1.5になりますので、通常の割増率1.25の範囲内の固定残業時間を60時間にすることが考えられます。

深夜手当も

飲食業、小売業にように深夜時間(22時以降)も勤務する場合は、固定残業手当とは別に固定深夜手当を設定することも考えられます。
その場合は、毎月想定される深夜時間を固定深夜手当とすることもできます。

基本給から固定残業手当を計算する場合

基本給から固定残業手当は次の計算方法になります。
残業手当を含めるため、残業手当を別で支払うより人件費の把握はしやすい、基本給が低く採用の応募が来ない場合など有効な方法ですが、給与計算は複雑になるためあまりお勧めしません。

「基本給/月の平均所定労働時間×固定残業時間×1.25」

月の平均所定労働時間数は、「年間の総労働時間/12カ月」で算出します。
飲食業、小売業に多い「1か月単位の変形労働時間制※」を採用している場合は、次のようになります。
365日/7日×40時間/12カ月=173時間(小数点以下切捨)

※1か月単位の変形労働時間制とは、詳細は割愛しますが、1か月を平均して週40時間労働内にする制度です。

基本給20万円、固定残業時間が30時間の場合

月の平均所定労働時間が173時間とした場合で計算してみます。

固定残業手当:200,000円/173時間×30時間×1.25=43,353円(50銭以上切上)

給与総額から基本給と固定残業手当に分ける場合

給与総額とは、通勤手当など残業の基礎から除く手当がある場合は、その手当を除いた金額になります。

元々残業手当込みで給与を支給している場合には、給与総額から基本給と固定残業手当に分ける計算方法です。
こちらのほうが固定残業を導入する場合多いと思います。

<基本給、固定残業の場合>
1時間当たりの単価=給与総額/(月の所定労働時間+固定残業時間×1.25)
固定残業=1時間当たりの単価×固定残業時間×1.25
基本給=給与総額‐固定残業手当

<基本給、固定残業、固定深夜の場合>
1時間当たりの単価=給与総額/(月の所定労働時間+固定残業時間×1.25+固定深夜時間×0.25)
固定残業=1時間当たりの単価×固定残業時間×1.25
固定深夜=1時間当たりの単価×固定深夜時間×0.25
基本給=給与総額‐固定残業手当-固定深夜手当

円未満の端数は固定残業、固定深夜を切り上げます。
基本給を円未満を切り上げてしまうと、1円単位で残業手当の未払いが発生する可能性があります。

給与総額30万円、固定残業時間が45時間の場合

月の平均所定労働時間が173時間とした場合で計算してみます。

固定残業手当:300,000円/(173時間+45時間×1.25)×45時間×1.25=73,610円(50銭以上切上)
基本給:300,000円‐73,610円=226,390円

計算式の例では、わかりやすく「1時間当たりの単価」と「固定残業手当」を分けて計算しましたが、端数処理の問題で一緒にしました。

給与総額30万円、固定残業時間が45時間、深夜時間50時間の場合

今度はあらかじめ深夜時間数を固定深夜手当とする場合です。
月の平均所定労働時間は前回同様に173時間とした場合で計算してみます。

固定残業手当:300,000円/(173時間+45時間×1.25+50時間×0.25)×45時間×1.25=69,804円(円未満切上)
固定深夜手当:300,000円/(173時間+45時間×1.25+50時間×0.25)×50時間×0.25=15,512円(円未満切上)
基本給:300,000円‐69,804円‐15,512円=214,684円

計算をシンプルに

上記の計算式を一人一人計算していくことになりますが、計算式が複雑になります。

私が計算する場合は、基本給と固定残業、深夜手当の割合(パーセント)をあらかじめ計算してしまい、その割合を当てはめるようにしています。
計算式が複雑になりますし、給与額がいくらであっても、割合は変わらないので一度計算してしまえば、固定残業時間、固定深夜時間が変わらなければ同じ割合で計算できます。

1時間の残業時間の場合、所定労働時間に1.25時間働いた場合と同じになりますので以下の計算式が成り立ちます。

<割合>
割増率を考慮した総労働時間:所定労働時間+固定残業時間×1.25+深夜時間×0.25
固定残業時間の割合:固定残業時間×1.25/割増率を考慮した総労働時間×100
固定深夜時間の割合:固定深夜時間×0.25/割増率を考慮した総労働時間

<金額>
固定残業手当:給与総額×固定残業時間の割合
固定深夜手当:給与総額×固定深夜時間の割合
基本給:給与総額‐固定残業手当‐固定深夜手当

給与総額30万円、固定残業時間が45時間、深夜時間50時間の場合

月の平均所定労働時間が173時間とした場合で計算してみます。

<割合>
割増率を考慮した総労働時間:173時間+45時間×1.25+50時間*0.25=241.75時間
固定残業時間の割合:45時間×1.25/241.75時間*100=23.27%
固定深夜時間の割合:50時間×0.25/241.75時間*100=5.17%

<金額>
固定残業手当:300,000円×23.3%=69,900円
固定深夜手当:300,000円×5.2%=15,600円
基本給:300,000円‐69,900円‐15,600円=214,500円

基本通りに計算した場合と、若干差が出ますが、小数点未満の割合を細かくすればするほど差は小さくなります。
あまり細かくすると計算が煩雑になりますので小数点第1位くらいで切上げが良いと思います。
また、ざっくりの割合にすると基本給が少なくなりますので、1時間当たりの単価は下がります。