店舗展開する飲食チェーンのための就業規則設計ポイント〜統一ルール vs 各店舗ごとの差異、変更手続、従業員説明のコツ〜
目次
🏠店舗が増えると「就業ルールのズレ」が生まれる
飲食業で店舗を増やしていくと、いつの間にか店舗ごとにルールが異なってしまうことがあります。
たとえば、
- A店:まかない無料/B店:半額
- A店:休憩60分厳守/B店:繁忙時は短縮気味
- A店:社員は固定シフト/B店:週ごとに変動
このような差が積み重なると、「不公平感」や「本部との認識ずれ」によって、トラブルや離職につながるケースもあります。
そのため、店舗展開を見据えた就業規則設計が非常に重要です。
🧾1.「統一ルール」の設計は本部で明確に
まず前提として、複数店舗を持つ会社では「会社全体で共通するルール」を本社で決めておく必要があります。
🔹統一しておくべき項目例
| 区分 | 統一ルールにすべき内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 労働時間・休日 | 1日の労働時間、残業・深夜割増、休日の定義 | 法令遵守・監督署対応上重要 |
| 賃金体系 | 基本給、割増率、支払日・締日 | 公平性・システム統一 |
| 慶弔・懲戒 | 適用基準、手続、処分内容 | トラブル防止 |
| ハラスメント対策 | 相談窓口・対応体制 | 義務化事項 |
これらは、全店舗共通の就業規則として作成・届出し、従業員に周知します。
🍳2.「店舗差」を反映する仕組みをつくる
一方で、すべての店舗が同じ条件で運営されているわけではありません。
たとえば、
- 営業時間・客層の違い(カフェ業態/居酒屋業態など)
- 地域による時給相場
- 家賃や交通費支給上限の違い
これらは就業規則本体には書かず、「店舗別運用マニュアル」や「賃金規程別表」として別紙で管理する方法がおすすめです。
💡実務上の工夫
- 「就業規則:会社全体のルール」
- 「店舗別マニュアル:現場運用ルール」
- 「シフト表・店長通達:日常的な運用」
このように階層構造で整理しておくと、運用がスムーズになります。
⚖️3.就業規則を変更する際の手続き
新店舗オープンや業態変更などで、ルールを変える必要が出ることもあります。
この場合、次の手続を正しく行うことが重要です。
✅変更手続の流れ
1️⃣ 労働者代表から意見聴取
→ 店舗代表者や社員代表に意見をもらう
2️⃣ 労働基準監督署への届出
→ 変更後の就業規則と意見書を提出
3️⃣ 従業員への周知
→ 紙、社内掲示、LINE通知、社内アプリなどで実施
💬 「口頭で説明したつもり」では周知と認められません。
後の紛争時には、「周知方法が適切だったか」が争点になるため、書面や記録の残る形で説明することが大切です。
☕4.従業員説明のポイント:「理解」よりも「納得」
ルールを変える際、従業員の理解を得ることは非常に重要です。
特にアルバイト・パートスタッフが多い飲食店では、感覚的な納得を得る説明が効果的です。
💬説明のコツ
- 「なぜ変えるのか」を明確に
→ 例:「残業時間を減らすため」「公平な評価をするため」 - 「あなたたちのための改善」を伝える
→ 例:「シフトの融通が利きやすくなる」「まかないが全店舗で同じ扱いに」 - 店長・副店長がまず内容を理解しておく
→ 現場で質問が出たときに即答できるように
説明会やLINEグループ、動画配信などを活用し、「伝わる工夫」をしましょう。
💬5.トラブル防止のためのチェックポイント
最後に、就業規則整備時に確認しておきたいポイントをまとめます。
| チェック項目 | 重要度 | 対応状況 |
|---|---|---|
| 各店舗の実態をヒアリングしたか | ★★★★★ | □ |
| 現場リーダーが就業規則を理解しているか | ★★★★☆ | □ |
| 最新の法改正を反映しているか | ★★★★★ | □ |
| 就業規則変更時の説明・記録を残しているか | ★★★★★ | □ |
| 店舗別マニュアルが整備されているか | ★★★★☆ | □ |
これらを整えることで、労務トラブルの9割は未然に防げます。
🧭まとめ:統一と柔軟性の「ハイブリッド設計」を
店舗展開を成功させる就業規則のポイントは、
- 統一すべき部分を明確に
- 店舗差を運用マニュアルで吸収
- 変更時は説明と手続きを確実に
この3つを押さえることです。
飲食業は人の力で成り立つビジネス。
だからこそ、スタッフが安心して働ける「わかりやすいルール作り」が、お店の信頼と定着率を高める第一歩になります。
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当事務所では、飲食業専門の社会保険労務士として、
- チェーン展開向けの就業規則設計・見直し
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