外国人スタッフを安心して雇うための「在留資格と労務管理」



外国人スタッフの雇用が増える背景

近年、飲食業界では深刻な人手不足が続いており、外国人スタッフの活用が欠かせない時代になっています。

厚生労働省のデータによると、飲食・宿泊業における外国人労働者数はこの10年で約3倍以上に増加。
特に「留学生アルバイト」「特定技能」「技能実習」など、さまざまな在留資格での就労が一般化しています。

しかし、外国人雇用には日本人雇用とは異なる法的ルールと行政手続きがあり、理解不足のまま採用・運用すると、以下のような経営リスクが大きくなります。
不法就労助長罪(3年以下の懲役または罰金)
入管法違反による行政指導・罰則
トラブルによる離職や労使紛争


雇用前に必ず確認すべき「在留資格」とは?

外国人を採用する際、最初に必ず行うべきは在留カードの確認です。

在留カードには次の情報が記載されています。

  • 在留資格の種類(例:技能実習、特定技能、留学、永住者、定住者など)
  • 在留期間(有効期限)
  • 就労制限の有無

ここがポイント:

  • 「留学」「家族滞在」などは原則就労不可(資格外活動許可が必要)
  • 「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」などは職種限定で就労可能
  • 「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」は自由に就労可能

特に「資格外活動許可書(アルバイト可)」を確認せず雇用すると、知らぬ間に「不法就労助長」に該当するおそれがあります。

在留カードのコピーは雇用時に必ず取得・保管
有効期限を定期的に確認(更新漏れ防止)


労働条件は日本人と同じ基準で

外国人スタッフも、労働基準法・最低賃金法・労働契約法の適用対象です。
国籍による例外は一切ありません。

✅ 具体的に注意すべきポイント

  • 時給は最低賃金以上(東京都なら2025年10月現在:1,226円)
  • 残業・休日出勤には割増賃金を支給
  • 労働契約書を交付(やさしい日本語または母国語翻訳も推奨)
  • 36協定・シフト制限の遵守

特に留学生の場合、「週28時間以内(長期休暇中は週40時間まで)」を超えると資格外活動違反となり、本人だけでなく雇用主も処罰対象となる可能性があります。


社会保険・労働保険の加入も義務あり!

外国人労働者であっても、日本国内で雇用契約を結んで働く場合は原則として社会保険の加入対象です。

🧾 加入条件

保険主な条件備考
雇用保険週20時間以上勤務、31日以上の雇用見込み
※昼間学生は除く
国籍問わず加入必須
健康保険・厚生年金<従業員51人以上の規模の会社>
・週の所定労働時間が20時間以上
・所定内賃金が月額8万8千円以上 
・雇用期間が2か月を超える見込みがある
・学生以外
<従業員50人以下の規模の会社>
・所定労働時間が正社員の4分の3以上
扶養家族も日本で医療を受けられる
労災保険全労働者対象(加入手続き不要)国籍関係なく適用

特に「アルバイトでも加入できる」点を誤解している店舗が多く、トラブルの原因となります。

社会保険未加入のままケガや病気が発生した場合、本人の生活だけでなく、事業主責任(補償・報告義務)が問われることもあります。


トラブル防止のための現場対応ポイント

外国人スタッフとの間でトラブルが起こる原因の多くは、「言葉の壁」よりも「制度・文化の違いによる誤解」です。

💬 よくあるトラブル例

  • 「休憩時間の取り方がわからない」
  • 「宗教上の理由でまかないが食べられない」
  • 「残業拒否が理解されず退職」

🧭 対応のコツ

  • 多言語マニュアル・図解マニュアルを活用
  • 通訳アプリや翻訳シートで指示を明確に
  • 文化や宗教(ハラール・礼拝時間等)への配慮
  • 相談しやすい環境づくり(外国人担当者の設置)

また、就業規則に「外国人スタッフ向け補足」を設けることも有効です。


「特定技能」活用と登録支援機関との連携

2024年以降、飲食分野での「特定技能」制度が拡大しています。
特定技能スタッフを採用する場合は、登録支援機関との契約・支援計画の届出が必要です。

  • 生活オリエンテーション
  • 相談窓口対応
  • 日本語学習支援
  • 定期的な面談・報告

これらはすべて「支援責任」として事業主側にも求められます。


労務管理体制を整えて“安心して雇える環境”を

外国人スタッフが定着する店舗は、「多様性を受け入れる仕組み」ができています。

  • 契約・労務ルールの可視化
  • 教育体制の整備
  • 相談しやすい社風づくり

これらが整っていれば、外国人スタッフも安心して長く働き、結果的に人材定着率や店舗の評判も向上します。


高田馬場労務事務所からのアドバイス

外国人雇用に関する労務管理は、「入管法」と「労働法」の両方の理解が必要です。

当事務所では、
✅ 在留資格確認・雇用契約書の整備
✅ 外国人スタッフの社会保険加入支援
✅ トラブル防止マニュアル・就業規則の作成
✅ 特定技能・登録支援機関との連携サポート

など、飲食店の外国人雇用をワンストップで支援しています。

💬 外国人スタッフの雇用で迷ったら、👉 お電話や  お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。