2026年労働基準法の改正案(検討事項)~連続勤務上限・勤務間インターバル・週44時間特例廃止まで~
目次
飲食業にとって「労基法改正」は経営の根幹に関わる問題
近年の飲食業界は、深刻な人手不足、長時間労働、店舗オペレーションの複雑化など、多くの課題を抱えています。「ギリギリで何とか回している」という店舗も決して少なくありません。
そこへ加えて、現在議論が進んでいる 労働基準法の大幅な改正案(検討事項) が実現すると、飲食業の働き方は根本から見直しを迫られる可能性があります。
特に次の7項目は飲食店に直撃する内容です。
- 連続勤務の上限規制(14日以上の連続勤務禁止)
- 法定休日の明確な特定義務
- 勤務間インターバル制度の義務化(原則11時間)
- 有給休暇の賃金算定方式の統一(通常賃金方式へ)
- 「つながらない権利」ガイドラインの策定
- 副業・兼業者の割増賃金算定ルール見直し
- 週44時間特例の廃止(すべて週40時間へ統一)
これらはどれも、飲食店の人員配置やシフト作成、給与計算、休日管理に直結するものばかりです。
連続勤務の上限規制(14日以上の連続勤務禁止)
背景:長時間労働の是正が最重要課題に
飲食業では「気づけば2週間以上休んでいない」スタッフが珍しくありません。特に店長・料理長レベルでは、休みのはずが人員不足で出勤…というケースもあります。
現状の労基法には、「連続勤務日数の上限」の規定はありません。
法定休日さえ月4回与えれば、極端にいえば「29日連勤」も理論上は可能です。
これを国が問題視し、“14日以上の連続勤務を禁止する”という方向で検討が進んでいます。
飲食業への影響
- 店長の長期連勤が禁止になる
- シフトの「穴埋め出勤」が不可になる
- スタッフの休日取得管理が必須になる
つまり、「欠員が出たら店長でカバー」という従来の方法が通用しなくなります。
今やるべき対応
- 店長の労働時間・休日の「見える化」
- 店長業務の標準化・分担
- 店舗間ヘルプ体制の再構築
- 週休2日制の早期導入
飲食店の働き方改革の核となる論点であり、最も早く準備すべき部分です。
法定休日の「明確な特定」義務
これまでの運用は曖昧だった
多くの飲食店では、「週に1日は休みを与えている」程度の感覚で管理しており、「どの日が法定休日なのか」を就業規則に明示している企業は多くありません。
今回検討されている改正案では、毎週特定の曜日を“法定休日として明確に決める”ことを義務化
する方向です。
例:日曜日を法定休日とする
→ 月曜日に休ませても、それは「所定休日」であり「法定休日」ではない
ここは経営者がよく誤解するポイントです。
なぜここまで厳しくするのか?
- 法定休日が特定されていない事業者が多い
- 休日労働の割増賃金の判断が曖昧
- 労基署調査でトラブルが増えている
飲食業の実務への影響
- 繁忙期は「法定休日を別日に振り替える」必要がある
- シフト作成時に休日が明確に管理されているかがチェック対象になる
- 法定休日に働かせる場合は事前に「振替休日の設定」が必要
- 単純な休日出勤が“違法”扱いになるリスクが増える
今やるべきこと
- 就業規則に法定休日を明記(例:毎週日曜日など)
- シフト表に「法定休日」マークをつける
- 店長に休日管理のルールを教育する
勤務間インターバル制度の義務化(原則11時間)
勤務間インターバルとは、退勤から次の出勤まで一定時間を空ける制度。
欧州ではすでに義務化されている国が多く、日本でも導入が議論されています。
飲食業で起きがちな問題
- 「閉店作業で23:30退勤 → 翌7:00出勤」のような連勤
- シフトのしわ寄せで休息時間が不足
- 業務量が増え、実質休めない店長・正社員の存在
これを改善するため、原則11時間(短縮しても最低9時間)のインターバルを確保する案が進んでいます。
飲食店での現実的な影響
- 早番/遅番の区別がさらに明確になる
- ダブルワーク従業員のシフト調整が難しくなる
- アルバイトの急な欠勤に店長が出ることが困難に
対応策
- 「閉店作業担当者」「開店作業担当者」を分ける
- 遅番メンバーの固定化
- 店長の「残業しない仕組み」づくり
有休の賃金算定方式の統一(通常賃金方式へ)
現行では以下の3つから会社が選択できます。
- 平均賃金方式
- 通常賃金方式
- 健康保険法の標準報酬日額方式
飲食店では「平均賃金方式」を使う企業も多く、その理由は「通常賃金より安くなる」からです。
しかし今回の改正案では、原則「通常賃金方式」で統一される方向です。
飲食業への影響
- 有給休暇取得時の賃金コストが上がる可能性
- 時給制アルバイトでも「手当を含めた賃金」で計算
- 厚労省の調査で不適切計算が多かったことが背景に
早めに準備すべきこと
- 現在の計算方式の確認
- 給与計算システムの見直し
- スタッフの説明資料の準備
- 店長研修での周知徹底
「つながらない権利」ガイドラインの策定
フランスやドイツではすでに法制化されている「つながらない権利」。
働いていない時間は、上司からの連絡や業務指示から“解放される権利”という考え方です。
飲食店に特に多い問題
- 店長が休みの日もLINEで質問が来る
- グループLINEで業務連絡が飛び交う
- 外部からも状況連絡が入る
- 休みの日でも“実質的に働いている状態”
これらはすべて、今後は問題視される方向です。
ガイドラインでは、
- 業務連絡は勤怠時間内に
- 緊急連絡の線引き
- 個人LINEの使用を控える
- 業務用チャットへ統一する
などが検討されています。
飲食店が早めに取り組むべきこと
- 店舗連絡ツールの整理(LINE → 業務用ツールへ)
- 店長の休日対応禁止ルール
- 異常時連絡フローの作成
副業・兼業者の割増賃金ルールの見直し
現在のルールでは、複数企業で働く場合、労働時間を合算して割増賃金の基準にする。
しかし現実的に、他社の勤務時間を正確に把握するのはほぼ不可能です。
今回の見直し案では、
- 副業先の労働時間管理の簡素化
- 割増賃金の負担の配分
- 情報提供の仕組みを見直す
といった方向で議論されています。
飲食店には副業アルバイトが多いため、非常に重要な内容です。
やるべきこと
- ダブルワーク社員への確認方法を整える
- 申告書フォームの作成
- 店長が勝手に調整しない仕組みづくり
週44時間特例の廃止(全業種40時間へ統一)
「週44時間特例」とは、一部の規模が小さい業種で、1週44時間まで労働させても良いという例外規定です。
飲食店でも対象になる店が多く存在します。
これが廃止されると、すべての事業場で週40時間が原則になります。
飲食店の運営に大きな影響
- 正社員の残業時間が増える(割増コストが上がる)
- 店舗の人員配置計画を変更する必要
- 週休2日制の義務化が事実上進む
特に「ギリギリで回している店舗」は直撃します。
今から準備すべきこと
- シフトの再設計
- 店長や正社員の労働時間削減
- 業務効率化とマニュアル整備
- 生産性向上の施策(セルフオーダー・券売機など)
飲食店が取るべき7つの総合対策
- 店長の長時間労働を解消する仕組みを作る
- シフト管理を“勘”ではなく“データ化”する
- 休日・インターバルを確保できる人数配置にする
- アルバイト教育を体系化し、店長依存をなくす
- 連絡ツールの一本化(業務LINE廃止)
- 勤務時間管理を厳格にする(打刻・残業申告など)
- 労務管理を外部専門家に任せ、店長の負荷を減らす
当事務所からのアドバイス
飲食業は、ただでさえ労務リスクが高い業界です。
今回の改正案は、「飲食業の働き方の歴史が変わるレベル」の内容が含まれています。
そのため、「様子を見る」では遅すぎます。
特に以下の店舗は、早急な対策が必要です。
- 店長が長時間労働になっている
- シフトが属人的(店長しか作れない)
- LINEで業務連絡している
- 法定休日を明確に定めていない
- ダブルワークが多い
- 有休計算が不安
- 勤務間インターバルが確保できていない
これらはどれも、労基署調査で必ず見られるポイントです。
まとめ:改正は“待ったなし”。飲食店は今が準備のチャンス
今回の改正案は、飲食店にとって負担も多いですが、裏を返せば「働きやすい店」へ進化するチャンスでもあります。
- 店長が疲弊しない店
- アルバイトが定着する店
- 労基署調査で問題がない店
- 生産性が上がる店
これを一緒に実現していくことが、労務の専門家としての私たちの役目です。
飲食業の労務管理でお困りの方へ
改正対応は早ければ早いほど効果が出ます。
- 就業規則をどう直せばいい?
- 店長の労働時間を改善したい
- 法定休日や有休計算が不安
- インターバル導入のシフトが作れない
- 労基署調査が怖い
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