労働基準法の「平均賃金」とは?

どんなときに使う?計算方法・具体例・飲食店が注意すべきポイント

飲食店を経営していると、「従業員が急に休業した」、「解雇退職トラブルが発生した」、「労災減給処分を検討する場面になった」こうしたタイミングで、突然出てくるのが「平均賃金で支払ってください」という言葉です。

「時給じゃないの?」
「月給の平均?」
「普段払っている給料と何が違うの?」

この疑問を放置したまま対応すると、未払い賃金・労基署是正・送検リスクにつながることもあります。


労働基準法における「平均賃金」とは?

法律上の定義

労働基準法第12条では、平均賃金を次のように定義しています。

平均賃金
原則として、算定事由発生日以前3か月間に、その労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額

ポイントは次の3つです。

  • 直前3か月を見る
  • 支払われた賃金の総額が対象
  • **暦日数(出勤日数ではない)**で割る

「平均賃金」と「平均給与」はまったく別物

よくある誤解が、「 月給を3で割る」、「 時給の平均」、「 直近の給与明細を基準にする」これはすべて間違いです。

平均賃金は「労基法専用の計算ルール」であり、普段の給与計算とは切り離して考える必要があります。


平均賃金の計算方法

基本式

平均賃金 = 直前3か月の賃金総額 ÷ 直前3か月の総日数

※「総日数」は、30日×3か月ではなく、実際の暦日(90日・91日・92日など)


賃金総額に含まれるもの・含まれないもの

含まれるもの(原則)

  • 基本給
  • 時間外手当
  • 深夜手当
  • 休日手当
  • 通勤手当(原則含む)
  • 役職手当

含まれないもの(例外)

  • 臨時に支払われた賃金
  • 賞与(3か月を超える期間ごとに支払われるもの)
  • 結婚祝金・見舞金など

※ここは実務で争いになりやすいため、注意が必要です。


平均賃金を「使う場面」はいつ?

休業手当を支払うとき

労基法第26条

使用者の責に帰すべき事由による休業
平均賃金の60%以上

例:

  • 店舗改装
  • シフト管理ミス
  • 経営判断による休業

飲食店では特に多いケースです。


解雇予告手当を支払うとき

  • 即日解雇
  • 30日前予告なし

この場合、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。


(3)年次有給休暇を平均賃金で支払う場合

年休の賃金は、以下の3つから選択できます。

  1. 通常の賃金
  2. 平均賃金
  3. 標準報酬日額

飲食業では、シフト制・変動給のため平均賃金を選択するケースも少なくありません。


業務上・通勤災害(労災)

  • 休業補償給付
  • 休業特別支給金

これらの算定基礎にも平均賃金が使われます。


減給の制裁を行うとき

減給には厳しい制限があります。

  • 1回の減給額
     → 平均賃金の1日分の半額まで
  • 総額
     → 一賃金支払期における賃金総額の10分の1まで

知らずに違反している飲食店は非常に多いです。


最低保障額にも注意

平均賃金には、最低保障があります。

平均賃金 = 
① 原則計算額
② 賃金総額 ÷ 実労働日数 × 60%
→ 高い方を採用

アルバイト・パートが多い飲食店では、この最低保障が問題になることがあります。


飲食店で特に多いトラブル事例

事例①「休業手当を時給60%で計算していた」

平均賃金ベースで再計算が必要
→ 是正勧告の対象に


事例②「解雇予告手当を月給で支払った」

→ 実は平均賃金の方が高く、不足
→ 追加支払い+指導


事例③「減給処分が違法だった」

→ 就業規則未整備
→ 労基法91条違反


よくある質問(Q&A)

Q1.直前3か月に欠勤が多い場合は?
A.原則そのまま計算。ただし最低保障に注意。

Q2.入社して3か月未満の場合は?
A.入社後の期間で計算します。

Q3.歩合給が多い従業員は?
A.支払実績ベースで計算します。


当事務所(飲食業専門社労士)からのアドバイス

平均賃金は、トラブルが起きた後労基署対応の場面で必ず問題になります。

特に飲食業では、シフト制、時給+手当、アルバイト比率が高いという特徴から、平均賃金の計算ミスが非常に起こりやすい業種です。


「問題が起きる前」に相談することが最大のリスク回避

  • 就業規則にどう書くべきか
  • 休業・解雇時の正しい対応
  • 労基署が見ているポイント

これらは、事前対応がすべてです。


「うちは大丈夫かな?」
そう思った時点で、お電話や  お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。