業務終了後の「三次会」でセクハラ 労災認定はされにい?

「三次会だから会社は関係ない」は通用しない時代へ

忘年会、新年会シーズンになると、飲食業でも、スタッフ同士の懇親会、本部・エリアマネージャー同席の飲み会、二次会・三次会への流れが増えてきます。

経営者の方から、よくこんな声を聞きます。

「業務後の三次会なんて、完全にプライベートでしょ?」
「自由参加なら会社の責任じゃないですよね?」

しかし、2024年12月15日の大阪地裁判決は、この“常識”に警鐘を鳴らす内容でした。


事件の概要|三次会のガールズバーで起きたセクハラ

報道(毎日新聞・弁護士ドットコムニュース)によると、事案は次のようなものです。

  • IT企業に有期雇用で勤務する女性社員
  • 東京出張後、会社主催の懇親会(一次会)に参加
  • その後、支社長らとともに二次会・三次会へ参加
  • 三次会として入ったガールズバーで、支社長の指示により女性店員とのキスその後、女性は適応障害を発症し休職

女性は労災申請を行いましたが、労基署は不支給と判断しました。

理由は「三次会への参加は個人の意思」

しかし、この判断が大阪地裁で覆されます


労災認定のカギ|「業務遂行性」と「業務起因性」

精神疾患が労災として認められるには、主に次の2点が問われます。

① 業務遂行性

その出来事が起きたとき、労働者は事業主の支配下にあったか

② 業務起因性

その出来事と発症との間に因果関係があるか

業務後の飲み会は、なぜ否定されやすいのか

一般論として、業務後の飲み会は自由参加、不参加でも不利益がない、上司が必ず参加するわけではない

こうした事情から 「事業主の支配下」とは言いにくい、 業務遂行性が否定されやすいという傾向があります。


なぜ今回は労基署の判断が覆ったのか

ポイント①「業務後の予定を空けておくよう指示」

裁判所が重視したのは、東京出張前に支社長が女性に対し「業務後の予定を空けておくように」
と指示していた事実

三次会が出張行程に組み込まれていたと判断されました。


ポイント②「有期雇用×正社員登用への影響力」

さらに裁判所は、女性が有期雇用であったこと

正社員登用について支社長が強い影響力を持っていたことを踏まえ、「三次会への参加を断ることは困難だった」と判断。

👉 形式的に自由参加でも、実質的には断れない
👉 事業主の支配下にあったと評価

結果として✅ 業務遂行性が肯定されました。


セクハラと業務起因性|「業務後」でも関係ない

セクハラは時間帯を問わない

厚労省の指針では、セクハラ防止は業務時間内に限られない

業務後の飲み会、懇親会、出張先での会食も含めて、配慮義務があるとされています。


今回のケースで業務起因性が認められた理由

  • 支社長からのキス・身体接触の強要
  • 女性に明確な持病なし、私生活上の別要因なし

👉 セクハラ行為と 適応障害発症の因果関係が認定


飲食業こそ他人事ではない理由

飲食業界では、特に次のような場面が多く見られます。

  • 忘年会・新年会が事実上の強制参加
  • 店長・エリアマネージャーの同席
  • 二次会・三次会で
    • キャバクラ
    • ガールズバー
    • スナック

「連れていく感覚」そのものがリスク

今回の判決が示すのは、「三次会だから」、「夜の店だから」、「プライベートだから」では済まされない、という点です。

部下である女性従業員をガールズバーに連れていく判断自体が、すでに強く問われています。


社労士からの実務アドバイス

飲み会は「自由参加」を明確に

  • 不参加による不利益なし
  • 評価・昇進に影響しない
  • 文書・LINE等で明確化

二次会・三次会は管理職が慎重に

  • 管理職主導は避ける
  • 夜の店への同行は原則NG
  • 「断りやすい雰囲気」作り

セクハラ防止研修は必須

  • 店長・料理長・エリア責任者向け
  • 「業務後も対象」であることを明確に

就業規則・ハラスメント規程の整備

  • 飲み会・懇親会時の行為も対象
  • 懲戒対象となることを明示

まとめ|「三次会だから大丈夫」は最も危険

  • 業務後・三次会でも労災認定される可能性あり
  • セクハラ判断は時間・場所を問わない
  • 飲食業は忘年会リスクが特に高い業種

当事務所では、ハラスメント規程の整備、管理職向け研修、労災・トラブル発生時の初動対応を飲食業特化でサポートしています。

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