無資格で「社労士」業務請け負ったか 税理士法人代表の男を逮捕― 飲食店経営者が知るべき「正しい専門家の選び方」と労務リスク回避法 ―
2025年10月、「無資格で社会保険労務士業務を請け負った税理士法人代表が逮捕」されるニュースが報道されました。
税理士法人の代表者が、正式な社労士資格を持たないまま、企業の社会保険や労働保険の手続きを代行していたとされる事件です。
一見、他業界の話に思えるかもしれません。
しかし、実は飲食店経営者こそ、最も注意すべきニュースです。
なぜなら、飲食店は「人」にまつわるトラブルや手続きが非常に多く、労務管理・社会保険・雇用契約といった業務を外部に委託するケースが多いからです。
その委託先が「無資格者」であった場合、手続きの不備、罰則、過去分の追徴、従業員トラブルなど、経営に深刻なダメージを与える可能性があります。
この記事では、実務・法律・経営の3つの視点から徹底解説します。
- ニュースの概要
- 無資格業務がなぜ問題なのか
- 飲食店における労務管理の正しい体制
- 信頼できる専門家の選び方
- 当事務所がどのようにサポートできるか
目次
事件の概要:なぜ逮捕されたのか
報道によると、逮捕されたのは関東地方の税理士法人の代表。
彼は複数の企業から「社会保険・労働保険の手続き」を請け負い、顧問料を受け取っていたとされています。
ところが、報酬を得て社会保険や労働保険の手続きするには、「社会保険労務士法」により、社労士資格者しか行えない業務と明確に定められています。
▷ 社労士法における独占業務
- 労働社会保険関係の書類作成・提出代理
- 行政機関への申請・届出・報告の代行
- 労務に関する相談や指導
これらを無資格で請け負うと、刑事罰の対象になります。
つまり、税理士資格を持っていても、社労士の資格がない限り、社会保険・労働保険の書類提出を代行してはいけません。
この事件は、まさにその「資格の壁」を越えてしまったことで発覚したのです。
なぜ“無資格の社労士業務”が問題なのか
(1)法令違反であること
社労士法第27条では、「無資格で業務を行った場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金」と規定されています。
依頼した企業側(飲食店など)も、「違法な請負に関与した」と判断されるおそれがあります。
(2)実務リスク:誤手続き・未処理の可能性
社労士の業務は、単なる“書類代行”ではなく、労働法・社会保険法・雇用保険法・年金法など多数の法令を横断的に扱います。
専門知識がなければ、提出内容の誤り・漏れ・遅延が起きやすく、その結果、店舗が行政指導や追徴を受けるリスクがあります。
(3)経営リスク:トラブル対応不能
無資格者に依頼していた場合、労働基準監督署や年金機構の調査が入っても、代理人として立ち会うことができません。
つまり、いざというときに“守ってくれる人”がいないのです。
(4)倫理リスク:従業員との信頼関係の崩壊
「うちの手続きを無資格の人がやってた」と従業員が知った場合、会社への信頼は大きく損なわれます。
労務の透明性を欠く企業は、離職率の上昇・採用難を招くことにもつながります。
飲食業界における「労務の外注リスク」
飲食店では、以下のような特徴があります:
| 特徴 | 労務管理上の課題 |
|---|---|
| シフト制(昼・夜・深夜) | 労働時間の把握が複雑 |
| アルバイト・パート比率が高い | 雇用保険・社会保険の加入基準の判断が難しい |
| 繁閑差が大きい | 変形労働時間制の導入要否を判断する必要 |
| 若手・外国人スタッフが多い | 言葉・制度理解・教育に時間がかかる |
| 多店舗展開 | 統一ルールと店舗ごとの差異の調整が必要 |
こうした現場では、「労務の一部を外注」することが一般的です。
しかし、依頼先を間違えると以下のような事態になりかねません。
- 社会保険の未加入が数年放置されていた
- 労働保険料の計算誤りで追加徴収
- 遅延届出による延滞金・加算金
- 従業員からの「残業代未払い」請求が裁判沙汰に
社労士の「独占業務」とは?
社会保険労務士法第2条では、社労士の業務を次のように定義しています。
労働社会保険諸法令に基づく申請書類その他の書類を、依頼を受けて作成し、または提出することを業とする。
つまり、雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険などの届出や申請は、社労士でなければできません。
また、労働基準監督署・ハローワーク・年金機構などへの代理提出や説明も、社労士にしか認められていません。
たとえば、これらはすべて社労士の業務範囲です。
- 雇用保険の資格取得届・喪失届
- 社会保険の月額変更届
- 労災保険の特別加入申請
- 36協定の届出
- 就業規則の届出
無資格のコンサルタント・税理士・行政書士・会計事務所が、これらを「ついでにやっておきます」と受けてしまうと、法律違反となる可能性があるのです。
飲食店が無資格者に委託してしまう“理由”
実際、飲食業の現場で「気づかないうちに無資格者に任せていた」ケースは珍しくありません。
よくある誤解
- 「税理士さんが全部やってくれると思っていた」
→ 税理士は税務の専門家であり、労務・社会保険は別資格。 - 「行政書士さんも同じような資格だと思っていた」
→ 行政書士は許認可や契約書の専門家であり、労働保険・社会保険は扱えません。 - 「代行業者がネットで“社労士監修”と書いてあった」
→ 実際に社労士が関与しているかは不明。記載だけで判断するのは危険。 - 「費用が安かったから」
→ 無資格者は当然、登録料や責任保険に入っていないため、安価に見えますがリスクは数十倍。
依頼先を選ぶときのチェックポイント
飲食店経営者が専門家を選ぶ際は、
以下の7つのポイントを確認してください。
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| ① 登録番号の確認 | 社会保険労務士名簿(都道府県会)で照会可能 |
| ② 専門分野 | 飲食業・小売業など、自社業種の労務経験があるか |
| ③ 顧問契約書 | サービス内容・料金・責任範囲が明記されているか |
| ④ 対応スピード | 緊急トラブルや調査対応に迅速か |
| ⑤ コミュニケーション | 現場に寄り添い、柔軟に提案してくれるか |
| ⑥ 情報発信 | 法改正情報や助成金などを定期的に案内してくれるか |
| ⑦ 守秘義務 | スタッフ情報や賃金データを厳重に管理しているか |
無資格者に依頼した場合の「責任」
経営者は「知らなかった」では済まされません。
たとえば、無資格者が社会保険の手続きを誤り、保険加入が遅れたり漏れたりした場合、その責任は最終的に事業主に帰属します。
加えて、違法業務に報酬を支払った場合、その契約自体が無効になることもあります。
飲食業における「労務顧問」の必要性
飲食店経営における社労士の役割は、単なる“手続き代行”ではありません。
- 従業員の採用・雇用契約
- 労働時間・休憩・休日管理
- 残業・深夜手当の計算
- 就業規則の整備
- 有給休暇の管理
- 社会保険加入・喪失手続き
- 労働トラブルの未然防止
これらをトータルで整備することで、「人を守り」「会社を守る」体制を作ることができます。
飲食店経営者に多い“見落としリスク”
- アルバイトの労働時間が週20時間を超えても雇用保険未加入
- 103万円・130万円ラインの理解不足で社会保険トラブル
- 深夜・休日労働の割増率を誤って計算
- 就業規則が5年以上前のまま(法改正未対応)
- 店長・副店長の固定残業手当が不適切
- 外国人スタッフの在留資格と雇用契約が不整合
これらは「よくある相談」ですが、実際に監督署調査やトラブルにつながることが多い項目です。
当事務所が行うサポート内容
当事務所は「飲食業専門」の社会保険労務士事務所として、次のような支援を行っています。
| サポート領域 | 内容 |
|---|---|
| 労務体制診断 | 現状の勤務形態・シフト・手続状況を総点検 |
| 就業規則整備 | シフト制・短時間勤務・深夜勤務に対応した規則作成 |
| 社会保険・労働保険手続 | すべて社労士資格者が直接対応 |
| 勤怠管理導入 | クラウド勤怠・ICカードなどの導入支援 |
| 助成金申請 | 飲食業に適用可能な助成金の提案・申請代行 |
| 労務顧問 | 月次で勤怠・人件費・法改正対応をサポート |
| 調査対応 | 監督署・年金機構の調査立ち会い・書類整備 |
| 多店舗展開支援 | 本部・各店舗のルール統一と運用マニュアル化 |
経営者のための“自社チェックリスト”
1️⃣ 社労士と正式契約を結んでいるか
2️⃣ 顧問契約書に「業務範囲・責任範囲」が記載されているか
3️⃣ 社会保険・労働保険の届出を“誰”がやっているか把握しているか
4️⃣ 就業規則が法改正に対応しているか
5️⃣ 勤怠管理・残業・休暇がデータで管理できているか
6️⃣ 深夜勤務の割増率を正しく計算しているか
7️⃣ アルバイト・パートの雇用契約書が最新か
8️⃣ 雇用保険・社会保険加入基準を理解しているか
9️⃣ 労務トラブルが起きたときの相談窓口を設けているか
🔟 無資格の代行業者・顧問が関与していないか
飲食店経営を守る3つのステップ
ステップ1:実態を「見える化」する
まずは勤務データ・契約内容・加入状況を整理し、
現場の“今”を把握します。
ステップ2:ルールを「明文化」する
就業規則・雇用契約書・シフト運用を法令に合わせて整備。
ステップ3:仕組みを「運用」する
定期的に労務監査・相談会を実施し、改善を継続。
当事務所からのメッセージ
今回の事件は、「資格を持つ者しかできない仕事」を無資格で行うことの危険性を改めて示しました。
飲食店経営においては、「労務・社会保険を任せる相手を見極める」ことが、安心経営の第一歩です。
私たちは飲食業界の現場を熟知した社労士として、単なる手続代行ではなく、“経営の伴走者”としてサポートします。
ご相談案内
- 無料初回相談(30分)
→ 現状ヒアリング・リスク分析・提案 - オンライン対応可(Zoom/LINE)
- 秘密厳守・相談無料
👉 お電話や お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。
まとめ
「無資格で社労士業務を請け負った税理士法人代表逮捕」という事件は、一見特殊に見えて、実は多くの飲食店が抱える構造的な課題を映し出しています。
- “安さ”や“ついで”に惑わされず、
- “資格”と“実績”を確かめ、
- “信頼できる専門家”と長くつきあう。
それが、これからの飲食業経営の安心・成長を支える土台になります。


