“今日行けません”が続出!? 急な欠勤への正しいルール作り~飲食店の欠勤・遅刻・シフト変更トラブルを防ぐために~
目次
なぜ「急な欠勤」は飲食店で多いのか
飲食業は「人」で成り立つビジネスです。
ところが、アルバイト・パート中心の店舗では、急な欠勤・ドタキャンが慢性的な課題。
特に繁忙期や土日になると、「体調不良」「家庭の都合」「交通トラブル」などを理由に、当日欠勤の連絡が相次ぐケースも少なくありません。
■ よくある現場の声
- 「朝LINE1本で“今日行けません”」
- 「無断欠勤なのに翌日平然と出勤」
- 「代わりのスタッフが見つからない」
- 「他のスタッフの不満が爆発」
このような“現場の混乱”の多くは、「欠勤・遅刻・シフト変更ルール」が明確でないことが原因です。
つまり、「悪意」ではなく「ルールを知らない」「あいまいな指示」から生じているトラブルが大半です。
まず整えるべき「欠勤・遅刻・シフト変更」の基本ルール
飲食店の現場では、“感覚的運用”になりやすいのが欠勤・遅刻の対応です。
しかし、これを就業規則やシフトルールとして明文化しておくことで、スタッフ間の不公平感を防ぎ、管理者側の対応もスムーズになります。
■ 明文化すべきルール例
| 項目 | 内容例 |
|---|---|
| 連絡方法 | LINEではなく必ず電話連絡(緊急時を除く) |
| 連絡期限 | 出勤予定の○時間前までに必ず連絡 |
| 代替対応 | 自分で代わりを探すルールの是非を明記(推奨:店長が調整) |
| 無断欠勤 | ○日連続した場合は退職扱いにできる旨を就業規則に記載 |
| 医師証明 | 体調不良による欠勤が続く場合、診断書提出を求めることも可能 |
これらを就業規則やシフト管理マニュアルに明記し、「どんな場合に、誰に、いつまでに、どう連絡すべきか」を明確に伝えることがポイントです。
“ドタキャン”を減らす現場の仕組みづくり
欠勤の多い職場ほど、スタッフが「責任感を持ちにくい」環境になっています。
一人ひとりが“自分が休むと誰が困るか”を理解できるようにすることが重要です。
✅ 現場でできる工夫
- シフト作成時に「代替要員」枠を確保する
→ 急な休みでも他スタッフが対応しやすくなる。 - シフト管理アプリの導入
→ 欠勤連絡・承認を記録化。LINE連絡よりも管理が明確。 - リーダー・副リーダー制の導入
→ 店長不在でも現場判断ができる体制。 - 責任感を育てる評価制度
→ “欠勤が少ないスタッフを評価”するルールを明示。 - コミュニケーションを増やす
→ シフト交渉がしやすい雰囲気づくりも欠勤防止の鍵。
「体調不良」「家族の都合」への正しい対応
飲食業では体調不良や家庭の事情による欠勤も多く、対応の線引きが難しい部分です。
■ 運用のポイント
- 体調不良による欠勤:
感染症リスクを考慮し、無理に出勤を促すのはNG。
ただし「診断書の提出」や「復帰時の体調確認」を徹底。 - 家庭の事情による欠勤:
本人責任ではない事由(育児・介護など)もあるため、柔軟な対応が求められます。
ただし、頻発する場合は勤務契約の見直しも検討。 - 悪質な遅刻・欠勤の繰り返し:
「懲戒処分」や「契約更新停止」の対象となることも。
記録を残し、感情ではなく事実ベースで判断することが大切です。
「無断欠勤」への最終対応とトラブル回避
最も対応に困るのが無断欠勤(連絡なし)です。
感情的になって「出勤しなくていい!」と伝えると、不当解雇トラブルにつながる恐れがあります。
■ 正しい手順
- まずは連絡を試みる(電話・メール・LINEなど記録に残す)
- 出勤命令書の送付(書面・内容証明など)
- 連絡がないまま○日経過した場合
→ 「退職の意思表示があったもの」とみなし、自己都合退職として処理可能 - 給与・社会保険の処理を慎重に行う
これらを就業規則に明記しておくことで、後のトラブルを防止できます。
労務管理の実務対応チェックリスト
欠勤・遅刻・シフト変更トラブルを防ぐには、「ルール作り」だけでなく、実際の運用をどう管理するかが重要です。
ここでは、飲食店で今すぐ活用できるチェックリストを紹介します。
✅ 欠勤・遅刻対応チェックリスト
| チェック項目 | 内容 | 対応状況 |
|---|---|---|
| 欠勤・遅刻時の連絡方法が明文化されている | 電話・LINE・メールの使い分けが明示されているか | □済 □未 |
| 出勤前の何時間前までに連絡が必要か明示している | 「○時間前までに店長へ」がルール化されているか | □済 □未 |
| シフト変更依頼のルールが明記されている | 誰に・いつまでに・どの方法で伝えるかを定めているか | □済 □未 |
| 無断欠勤への対応手順が就業規則にある | 退職扱いの基準が明示されているか | □済 □未 |
| 欠勤記録が残る仕組みがある | 勤怠システムまたは記録簿で欠勤を管理できるか | □済 □未 |
| 代替出勤やシフト調整の責任者が決まっている | 店長・副店長・エリアマネージャーなど | □済 □未 |
| 欠勤・遅刻が多い従業員への面談が実施されている | 状況把握・再発防止策を定期的に行っているか | □済 □未 |
このように可視化することで、店長・マネージャーの感覚管理から脱却できます。
「言った・言わない」トラブルを防ぐには、記録と明文化が鍵です。
店長・マネージャーが知っておくべき法律知識
欠勤・遅刻対応では、労働基準法・民法の基本を理解しておくことが重要です。
誤った判断をすると「不当解雇」「賃金未払い」などの法的トラブルに発展する恐れがあります。
■ 欠勤・遅刻に関する法律の基本
- ノーワークノーペイの原則(労働契約法第24条)
→ 使用者(会社)は、労働者の責に帰すべき事由で労働しなかった場合、その分の賃金を支払う義務はない。
つまり、欠勤・遅刻分は控除可能。 - 懲戒処分の限界(労働基準法第91条)
→ 懲戒処分を行う場合は、就業規則に定めが必要。
曖昧な規定や感情的な処分は違法と判断されることも。 - 退職扱いの基準(民法第627条)
→ 「無断欠勤○日間が継続した場合、退職の意思表示があったとみなす」旨を
就業規則に明記していれば有効。 - 個人情報保護法
→ 欠勤理由が「病気」や「家庭の事情」などの場合、他のスタッフへ軽々しく共有するのはNG。
守秘義務にも注意が必要。
欠勤ルールをスタッフに浸透させる教育方法
ルールを作っても、“現場で浸透しなければ意味がない”のが飲食店の難しさです。
そこで、スタッフ教育の段階から「欠勤対応の意識づけ」を行うことが効果的です。
💡 教育のタイミングと方法
- 採用・入店時のオリエンテーションで伝える
→ 「欠勤連絡は○時間前まで」「LINEだけはNG」などを初日に説明。
書面やスライド資料で渡すと記憶に残りやすい。 - シフト表の掲示にルールを一文添える
→ 例:「欠勤・遅刻時は必ず店長まで電話連絡をお願いします」
毎週見るものにルールを添えることで、自然と浸透。 - 月1ミーティングで“好事例”を共有
→ 「急な体調不良時も丁寧に連絡してくれた」など、良い対応を褒める文化をつくる。 - 欠勤理由の“見える化”を図る
→ 匿名アンケートで「なぜ欠勤が多いのか」を探ると、予防策が立てやすい。
教育で重要なのは、「怒る」ではなく「仕組みで守る」こと。
スタッフが安心して働ける環境をつくることが、結果的に欠勤防止につながります。
実際のトラブル事例と社労士の解決アドバイス
ここでは、当事務所が関わった実際の相談をもとにした、よくある事例を紹介します。
【事例1】無断欠勤3日 → LINEブロックされた!
状況:
学生アルバイトが3日間無断欠勤し、連絡が取れない。
→ 店長が感情的に「もう来なくていい」とLINE送信。
→ 後日、本人が「解雇された」と主張しトラブルに。
アドバイス:
このケースでは「解雇扱い」に見なされるリスクがあります。
正しい手順は、①書面で出勤命令を送付 → ②期日経過後に退職扱いにする。
就業規則に基づいた運用をしていれば、会社側が法的に守られます。
【事例2】急なシフト変更で他スタッフが反発
状況:
体調不良による欠勤者が出たため、他のスタッフに急なシフト変更を依頼。
「前日夜に変更を言われた」「家庭の予定があった」と不満が噴出。
アドバイス:
無理な呼び出しは避け、「代替出勤の希望登録制度」を設けるのがおすすめ。
「入れる日」をあらかじめ登録してもらえば、柔軟な対応が可能に。
【事例3】体調不良が頻発するパート社員
状況:
週3勤務の主婦スタッフが、毎月2〜3回の体調不良欠勤。
真面目な人柄だが、他スタッフの不満が募る。
アドバイス:
「健康状態の確認」「勤務シフトの見直し」「業務軽減」などの対話が第一歩。
それでも改善がない場合は、契約更新の判断材料にすることも検討を。
当事務所からのアドバイス
欠勤やドタキャン問題は、「人間関係」や「働き方の柔軟性」といった店舗運営の根幹に関わるテーマです。
しかし、ルールを整備すれば、現場の混乱や不公平感を大幅に減らすことができます。
✅ この記事のまとめ
- 欠勤・遅刻・シフト変更は、明文化+教育+記録で防げる
- 無断欠勤は「退職扱い」までの手順を明記しておく
- 感情で対応せず、事実とルールで判断する
- 現場管理者にも基本的な法知識が必要
- 社労士のサポートで、トラブルを“予防”する運用へ
🍀 当事務所のサポート案内
当事務所では、飲食業に特化した労務管理サポートを提供しています。
- 欠勤・遅刻対応ルールの策定
- 就業規則・シフト運用マニュアルの整備
- 無断欠勤・トラブル発生時の相談対応
- 店長・マネージャー研修(労務知識教育)
「人が辞めない」「現場が回る」仕組みづくりを、私たちと一緒に整えていきましょう。
👉 お電話や お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。


