年末年始・GW・夏祭り…繁忙期のシフト・残業対応マニュアル|飲食店がやるべき労務対策



繁忙期に労務トラブルが多発する理由

飲食店にとって、「繁忙期」はまさに“勝負の時期”。
年末年始、GW、夏祭り、クリスマスシーズンなどは、売上が大きく伸びる一方で、労務管理リスクも急増します。

代表的なトラブルとしては以下の通りです。

  • シフト過多による長時間労働
  • 忙しさによる労働時間の未記録・打刻漏れ
  • 残業代・休日手当の未払い
  • 急な欠勤・代替人員不足
  • 36協定の超過運用

これらは、「繁忙期だから仕方ない」では済まされません。
実際、年末年始やイベント時の労働トラブルで、監督署から是正勧告を受けた飲食店は少なくありません。


繁忙期シフトの基本方針と組み方

1. まず「基準シフト」を作る

平常時の人員配置表を基に、繁忙期の必要人数と時間帯ごとの負荷を可視化します。
「ピークタイム」と「準備・片付け時間」を分けて考えることが重要です。

2. 固定メンバー+応援メンバーで2段構成に

繁忙期は、常勤+短期アルバイトの二層構造でシフトを組みます。
短期スタッフには事前に「短期間・特別手当付き」で契約条件を明確にします。

3. シフト希望の調整とトラブル防止

  • シフト提出期限を通常より前倒し
  • LINEやアプリで希望管理を一本化
  • 店長判断だけに頼らず、“シフト表=労務記録”として保管

36協定の運用と残業管理

1. 「36協定」は繁忙期にも必須

年末年始・イベント対応で「一時的に残業が多くなる」場合でも、36協定の締結と届出がなければ違法残業です。
特に多店舗展開の場合、「店舗ごとに協定締結」が必要になるケースもあるため要注意です。

2. 限度時間を超える場合の「特別条項」

36協定には「特別条項付き」の締結が可能です。
ただし、発動条件(例:年末商戦、繁忙期)や上限(年720時間以内)を超えないよう厳格な管理が必要です。

3. タイムカード・勤怠アプリの連携

繁忙期こそ、実労働時間の把握が最重要
特に以下の点を押さえましょう。

  • 休憩時間の実施と記録
  • 早出・残業の申告制ルール
  • 勤怠システムの導入(アプリ型が便利)

残業・休日・深夜の割増賃金の計算方法

繁忙期の労働時間は複雑になりやすく、誤計算が多発します。
基本を押さえておきましょう。

区分割増率主なケース
残業(法定時間外)25%以上1日8時間超・週40時間超
深夜労働(22時~5時)25%夜営業店舗など
休日労働(法定休日)35%年末年始営業など
残業+深夜50%両方適用される

※「年末年始手当」「繁忙期手当」を別途支給する場合は、労働契約書や賃金規程に明記しておきましょう。


特別営業時の契約・手当・衛生管理

1. 繁忙期限定スタッフの契約書

短期バイトは「期間の定めのある労働契約」を明示。
特別手当・交通費・シフト保障なども書面で明記します。

2. “繁忙期手当”を導入するメリット

  • 残業よりも「頑張り手当」の方が納得感がある
  • モチベーションアップ
  • 人員確保の際に有利

3. 食中毒・体調不良対策

繁忙期は疲労と衛生事故が増えます。
衛生管理責任者のシフト確保、体調申告チェックシートを運用するのも効果的です。


スタッフの心身ケアと離職防止

「頑張りすぎ店長」「年末に体調不良で離職」…というケースも多いです。

  • 残業上限を守る
  • 休憩を取らせる
  • 感謝を伝える(“ありがとうカード”制度など)

これが最終的に離職防止と職場定着につながります。


年末年始明けの振替休日・賃金処理

繁忙期後は“振替休日・代休”の処理が重要です。
誤りが多いポイントは以下の通り。

用語意味賃金処理
振替休日事前に休日を入れ替える通常賃金
代休事後に休ませる休日労働分の35%割増発生

繁忙期明けのシフト調整で「振替」か「代休」かを明確に区別しておきましょう。


当事務所からのアドバイス

  • 繁忙期は“労務管理の総力戦”です。
  • シフト、契約、手当、36協定をセットで考えましょう。
  • 店舗運営の現場感を理解した労務アドバイスが必要です。

高田馬場労務事務所では、以下のことをサポートしています。
✔ 36協定の見直し
✔ 繁忙期手当設計
✔ シフト運用のルール化
✔ 就業規則の繁忙期特別条項設計

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