年金事務所の事業所調査で「指摘が多い事例」
飲食業が注意すべきポイント
飲食店を経営していると、保健所・税務署・労基署など、さまざまな行政調査の対象になることがあります。
その中でも、ここ数年で急増しているのが 「年金事務所による事業所調査」 です。
実は、飲食業は他業種に比べて「従業員の入れ替わりが激しい」「複数店舗での管理がバラつく」「短時間労働者が多い」などの理由から、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入・標準報酬月額の届出ミスが非常に多い業種 とされています。
そのため年金事務所としても重点的に調査を実施しており、特に “短時間労働者の加入判定” と “報酬(標準報酬月額)の届出誤り” の指摘が目立ちます。
飲食店の経営者の方にとっては、今後のリスク管理に大きく役立つ内容です。
特に 多店舗展開されている企業様、小規模店舗でパート比率が高い店舗様は必見 です。
目次
年金事務所の事業所調査とは?概要と流れを理解する
まず初めに、「年金事務所の調査とは何か?」を正しく理解しておきましょう。
調査は“任意”ではありません
年金事務所の調査は任意ではなく、事実上の義務 です。
通知書(調査案内)が送付されてきたら、対応しないという選択肢はありません。
調査で確認される主な項目
年金事務所の事業所調査では、次のような点が確認されます。
被保険者資格
- 社会保険に加入すべき人を加入させているか
- 特定適用事業所(51人以上)や拡大適用の基準を満たしていないか
- 二か月以内契約や学生アルバイトの扱いは適正か
賃金に関する届出(標準報酬月額)
- 資格取得時の報酬月額の届出に漏れがないか
- 昇給・降給・手当変更の際に月額変更届が提出されているか
- 算定基礎届の届出内容が実態と関係しているか
- 現物給与(社宅・食事)を含めているか
従業員管理
- 出勤簿の保存
- 給与台帳の整備
- 労働時間の管理状況
飲食業では、複数店舗管理・シフト制・短時間労働者の多さから、このあたりに大きな落とし穴ができます。
飲食業に多い「指摘の多い事例」
ここからは、日本年金機構が実際の調査で指摘が多いと公表している事例を、飲食業の実例に置き換えて分かりやすく解説 します。
事例1:短時間労働者の適用(要加入者なのに未加入)
労働者51人以上の飲食店で最も多い指摘がこれです。
アルバイトが週20時間未満の契約だが、実態は毎月20〜28時間働いている
- 店舗責任者が基準を把握しておらず、本社が気づけない
- 繁忙期などで一時的にシフトを増やしたが、その後もその状態が続いた
飲食業では「人手が足りず、ついシフトを増やしてしまう」ケースが非常に多く、契約上の所定労働時間<実際の労働時間という状態が長期化し、加入漏れにつながります。
指摘されるとどうなる?
年金事務所の調査で「要加入だった」と判断されると、次のようになります。
- 最大2年遡って保険料を請求
- 事業主負担分もまとめて支払い(数十万〜数百万円の場合あり)
- 従業員との間でトラブル発生(保険料徴収の相談など)
最も重いペナルティは、遡りの保険料負担 です。
事例2:資格取得時の報酬月額の届け出ミス
飲食店の従業員は、通勤手当・住宅手当・食事手当など、多様な手当があります。
入社時に通勤手当の申請が間に合わず、翌月にまとめて支給した
- 初月の給与だけ手当が入っていない
- 資格取得届には「基本給だけ」で申請してしまった
本来、資格取得時の報酬月額は、実際の支給のタイミングではなく、支給すべき内容を基準にする 必要があります。
事例3:非固定的賃金の新設・単価変更
飲食店でよくあるパターンは次の通り。
- 交通費の距離当たり単価の改定
- 役職手当の新設
新設、単価の変更は 固定的賃金の変動として扱われる 場合があります。
事例4:手当の遡及支給
- 住宅手当
- 通勤手当
- 資格手当(衛生責任者など)
- 役職手当
飲食業は手当の支給開始が“事後”になることも多いですが、その場合は 本来の支給月に遡って計算し直す必要があります。
事例5:同一月に複数の手当が変動(昇格+残業手当廃止など)
飲食業の店長昇格時に起こりがちです。
- 店長昇格で役職手当がつく
- 同時に残業手当が廃止
- 基本給も変更される
このように複数の変動が同時に起こると、増額・減額いずれも随時改定の対象になり得ます。
事例6:固定的賃金の日割り支給
転勤、異動が多い飲食企業では頻出の指摘です。
■例:
- 4月1日付けで住宅手当がつく
- でも給与締め日が月末なので初月は“半月分のみ”支給
このケースでは、初月の日割り支給は「満額反映していない」ため、翌月を起算月として判断します。
事例8:現物給与(社宅・寮)の算入漏れ
- 社宅
- 寮
- 店舗併設の住み込み部屋
などを提供しているケースがよくあります。
この時、本人が払っている金額<現物給与としての価値の場合は、差額を報酬に含めなければなりません。
飲食業の寮や社宅は“格安”で提供していることが多いため、指摘が非常に多い項目です。
飲食業で特に多い「誤解」トップ10
ここでは、実際に飲食店の経営者様から聞く誤解をまとめます。
- 入社初月は手当が少ないから報酬月額も低くてよい
- 役職手当をつけたら随時改定が必ず発生する
- 遡及支給は、支給した月で届出してよい
- 社宅で本人が一定額支払っていれば現物給与にはならない
- シフト制だから“所定労働時間”を決めなくてよい
- 給与明細で控除していれば証跡は不要
- パート比率が高くても調査に来ない
- 年金事務所は「加入させすぎ」に対しては指摘しない
いずれも 調査で高確率でチェックされる項目 です。
調査で追加負担が発生する“金額イメージ”
実際の調査立会いの中で、最もトラブルになるのが 遡及保険料の金額 です。
週20h以上働くアルバイト2名が未加入だった
→ 2年遡り
→ 事業主負担+本人負担で 合計50万円〜100万円
店長昇格時の随時改定漏れ
→ 1名でも10〜15万円の追加
社宅の現物給与の算入漏れ
→ 年間で報酬月額2等級程度の差
→ 数年放置で数十万円
指摘されないための飲食店の実務対策
ここから当事務所が実際に飲食店に指導している内容を紹介します。
1. 「週20時間以上の勤務」を毎月チェックする体制をつくる
Excelまたは給与ソフトと連動したシフト管理で、
- 所定20h
- 実際の勤務
を常にモニタリングする。
2. 全従業員の手当一覧と支給開始日の管理
“支給日ベース”ではなく、支給要件の発生日を管理する仕組みが必須。
3. 昇格・異動・転勤の際には必ず「標準報酬月額のチェック」
店長昇格、異動、住宅手当の変更など、飲食業は動きが多いため、人事発令 ⇒ 給与変更 ⇒ 社保手続きの流れをセットで管理する仕組みが必要です。
4. 社宅・寮の現物給与の「畳数計算」を必ず行う
現物給与は正しく計算しないと一発で指摘されます。
5. 資格取得時の報酬月額に「通勤手当・住宅手当」を含める
申請の遅れは関係ありません。
支給すべき内容で計算します。
当事務所からのメッセージ
- 人材の入れ替わりが多い
- パート比率が高い
- シフト管理が複雑
- 多店舗展開で管理が分散しやすい
という理由から、年金事務所の調査で誤りが発生しやすい業種です。
だからこそ、“実務フロー”を整えることが最大の対策になります。
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