飲食業の経営者・店舗責任者が必ず知っておきたい「高額療養費」と「医療保険」
目次
高額療養費制度とは
飲食業は、従業員の年齢幅が広く、深夜勤務や立ち仕事が多い業種です。
ケガ・病気の発生リスクは他業種より高い傾向にあります。
そこで知っておくべき制度が 「高額療養費制度」 です。
高額療養費とは、医療機関で支払った自己負担額が「一定の上限額」を超えた場合、超えた分が後から戻る制度です。
健康保険に加入している人であれば、アルバイト・パート・正社員いずれも対象となります。
■なぜ飲食業に関係が深いのか?
- 調理・接客に伴うケガ(指の切創、火傷、ぎっくり腰など)が多い
- 生活リズムの不規則さから体調を崩すケースが多い
- 外国人労働者も多く、制度が理解されていないまま高額医療費を払う例がある
「高額療養費を使えば医療費が大幅に軽減される」
これは従業員にとっても、企業の労務管理の観点でもとても重要です。
マイナ保険証を使うと「高額療養費の申請が不要」になるケースがある
2024年12月以降、健康保険証が廃止され、マイナ保険証の利用が段階的に広がっています。
そして今、もっとも現場で重要なのが「マイナ保険証を使えば、高額療養費の“事前申請”が不要になるケースがある」という点です。
■通常の高額療養費の流れ
- 患者が病院で3割負担を支払い
- 医療費が高額になった場合
- 後から申請して払い戻しを受ける
または
事前に「限度額適用認定証」を申請し、窓口負担を上限額に抑える
これが従来の手続きでした。
■マイナ保険証を使うとどうなる?
マイナ保険証で受診すると、健康保険組合と医療機関のオンライン連携が行われ、所得区分(標準報酬月額)が自動で医療機関に通知されます。
👉 限度額適用認定証の申請が不要
👉 初めから窓口での支払いが「上限額以内」になるというメリットが発生します。
■飲食業でこのメリットが特に大きい理由
飲食業では以下の特徴があります。
- 若年層・外国人労働者が多い
- 保険制度に疎いスタッフも多い
- 病院の手続きに行く時間がない
- 急な入院が想定される(ケガ・急病など)
特に「限度額認定証を取りに行けないまま入院→医療費が高額に」というケースは非常に多いのですが、マイナ保険証を使えば 窓口での支払いが最初から低くなるため、経済的なダメージが軽減されます。
■飲食店経営者が従業員に伝えるべきこと
- マイナ保険証を利用すると医療費が安くなるケースがある
- 入院時の負担軽減につながる
- 申請漏れによるトラブルを防げる
- 外国人スタッフにも説明することが重要
- 店舗の福利厚生として制度周知が有効
高額療養費の具体的な自己負担限度額
上限額は「年齢」×「所得区分」で決まります。
例:一般的な年収(〜約370万円)で入院し、医療費が100万円かかった場合
👉 自己負担額は約8万円程度に圧縮される
※実際には「標準報酬月額」で判断されます。
入院・手術で必要になるお金
高額療養費でカバーできるのは「健康保険が適用される治療費」のみです。
しかし、実際の入院はそれ以外の費用が大きくかかります。
❌ 高額療養費の対象外の費用
- 差額ベッド代
- 食事療養費の一部
- テレビ・冷蔵庫など生活費
- 先進医療の技術料
- 付き添いサービス
- 仕事を休むことによる収入減
つまり、高額療養費は「医療費の一部しかカバーしない制度」なのです。
必要になるのが「生命保険(医療保険)」
一般的に、飲食店で働くスタッフは「保険に詳しくない」「病気やケガの知識が薄い」という現実があります。
病気やけがで休んだ給与の一部は傷病手当金が支給されることもありますが、医療保険は、以下の費用をカバーするために役立ちます。
※参考:傷病手当金と退職後の取扱い・有給休暇の関係~飲食店で働くスタッフが安心して休めるために知っておくべきポイント~
■医療保険でカバーできるもの
- 入院日額(差額ベッド代・食事代・雑費に充当)
- 手術給付金
- 通院給付金
- 先進医療
- 就業不能補償(収入が減る場合)
特に個人事業主(店主)や幹部社員は「収入が止まる」リスクが大きいため、医療保険の重要性がさらに高くなります。
飲食店の経営者が押さえるべき3つのポイント
■従業員に制度を説明し、無駄な医療費負担を減らす
→ 経済的負担が大きいと離職に直結
■高額療養費の申請方法を案内しておく
→ どこで手続きするか、必要書類など
■事業主自身の医療保険の見直し
→ 「自分が倒れたら店が止まる」リスク管理が非常に重要
当事務所のサポート
飲食業専門の社会保険労務士として、以下をサポートします。
- 高額療養費制度の従業員向け説明資料の作成
- 外国人労働者向け制度案内
- 労務相談(ケガ・病気の休職対応)
- 店主・幹部向けの保険・補償の整理
- 労災保険との関係整理
- 就業規則・休職規程の整備
まとめ
高額療養費制度は「医療費の上限を下げる制度」
医療保険は「入院時の生活費や収入減を補う制度」
両方知っておくことで、飲食店の経営者もスタッフも「安心して働ける職場」を作れます。
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