飲食店がやりがちな労務違反と、失敗しない是正ポイント
目次
なぜ飲食業は労務トラブルが起きやすいのか
飲食業は、他の業界と比較して以下の要因から労務リスクが高くなりがちです。
- 長時間労働になりやすい構造(ピークタイムに人手が集中)
- 学生・ダブルワーカーなど、多様な働き方が混在
- 店長・料理長など現場裁量が大きく、会社が労務管理を把握しづらい
- シフト制による複雑な労働時間管理
- 人手不足による無理なシフト運用
- 未経験者が採用管理・勤怠を兼務しているケースが多い
この「構造的な問題」を理解しないまま運営すると、次のような労務違反が日常的に発生します。
飲食店で最も多い労務違反とは?
飲食店を支援する中で「ほぼ必ず」見つかる労務違反を体系的にまとめました。
労働時間管理の不備
よくある違反例
- タイムカードがなく手書きの勤怠
- 店長が「早出・残業」を把握していない
- 休憩1時間取れず「実質休憩30分」
- 固定残業代を誤用(みなし残業と混同)
- サービス残業が常態化
違反が与えるダメージ
- 未払い残業代請求 → 数百万〜数千万のケースも
- 労基署是正勧告
- SNS・口コミによる炎上
- 採用が困難に
是正ポイント(飲食店向け)
- 勤怠システムの導入(スマホ打刻推奨)
- 早出・残業の「事前申請ルール」を作る
- 休憩取得をシフトに組み込み“見える化”
- 固定残業代は、「 時間数」、「内訳」、「超過分の支払い」を就業規則に明記
飲食業では「現場の体感時間」と実際の労働時間にズレが生じやすいため、電子勤怠の導入は必須です。
有給休暇の付与義務違反
よくある違反例
- シフト制だから有給はないと思っている
- “忙しい時期は取れない”と店長が判断
- 有給申請書がない
- 年5日義務化を知らない
正社員はもちろん、パートも有給が付与されます。
また、2019年より年10日以上付与される労働者には年5日の有給取得が企業に義務化
是正ポイント
- シフト提出時に「有給申請欄」を作る
- 有給管理簿をクラウド化
- 拒否する場合の“時季変更権”のルール整備
36協定の未締結・未届
よくある違反例
- 時間外労働しているのに36協定がない
- 36協定はあるが“特別条項”の意味を理解していない
- 店ごとに店長が勝手に運用
是正ポイント
- 36協定の内容を店長研修に組み込む
- 特別条項は“繁忙期”に限定し乱用しない
- 月45時間、年360時間が基本
ハラスメント対策不足
飲食業は以下の理由で発生率が高い傾向にあります。
- 忙しい現場で指示が強くなる
- 若手・学生が多い
- ベテラン従業員の感覚が古い
- 顧客ハラスメントも多い
是正ポイント
- 管理職研修(接し方・教育方法)
- ハラスメント窓口の設置
- 記録の残し方(記録化の習慣)
労務リスクが生まれる“飲食店の構造的問題”
1:人手不足による現場への負担
2:勤怠管理が属人化している
3:社員・アルバイトの混在
4:採用・教育に時間をかけられない
飲食店にありがちな“構造的課題”を踏まえてこそ、労務管理の改善は成功します。
飲食店の労務トラブル事例と解決プロセス
実際に当事務所でサポートした事例をベースにした構成。
事例1:未払い残業でアルバイト5名が同時申告
→ 早出・残業の運用を見直し、勤怠DX化で解決
事例2:店長のパワハラによる離職
→ 店長教育+組織風土改善で定着率アップ
飲食店が「今日から」できる労務改善チェックリスト
- 勤怠システムは導入しているか
- 36協定は届出済みか
- シフトに休憩時間を明記しているか
- 有給取得を運用しているか
- 店長教育を行っているか
- ハラスメント窓口はあるか
- 就業規則は最新か(5年以上変えてないのは危険)
当事務所からのアドバイス
飲食店は、「現場を回しながら労務を管理する」という二重構造のため、一般企業より難易度が高いのが実情です。
しかし、正しく仕組みを整えれば、以下の効果が得られます。
- 未払い残業リスクがゼロに
- 労働環境が整い、採用力アップ
- 定着率が向上し、人手不足が改善
- 従業員のモチベーションが上がる
- 労基署・年金事務所調査の不安がなくなる
飲食店は、労務管理を整えるだけで経営が劇的に改善します。
まとめ
飲食店の労務管理は「仕組み化」すれば劇的に改善します。
- 労働時間管理は“見える化”
- 有給は年5日必須
- 36協定は前提条件
- 店長教育が最大の効果
- 就業規則の更新が重要
「うちの店、大丈夫?」と思ったら、お電話や お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。
初回相談はオンライン・無料対応しています。


