飲食業の現場で起こりやすい「解雇」と「退職勧奨」の違い|トラブル防止のポイントと正しい対応方法


飲食業の現場では、人材不足・人の入れ替わり・労務管理の複雑さから、「辞めてもらいたいスタッフがいるのですが、どうすればいいですか?」という相談が後を絶ちません。

しかし、ここには重大なリスクが潜んでいます。


「解雇」と「退職勧奨」は似ているようで、法的にはまったく別物

間違った対応をすれば、以下のことが起こりえます。
◆ 不当解雇
◆ パワハラ
◆ メンタル不調
◆ 労基署・労働局の介入
◆ 弁護士からの内容証明
◆ 数十万円〜数百万円の解決金コース

特に飲食業では、「感情的な注意」、「LINEでの強い言葉」、「勤務シフトから外す」といった“意図せぬパワハラ”が発生しやすく、そこからトラブルへ発展するリスクが非常に高い業界です。

本記事では、飲食業専門の社会保険労務士として、法律に基づきながら、現場向けにわかりやすく徹底解説します。



解雇と退職勧奨の “本質的な違い”

解雇とは

会社が一方的に労働契約を終了させること。
労働者の同意は不要。

つまり、会社が「辞めさせる」行為。

ただし法的には非常に厳しい制限がある。


退職勧奨とは

会社が“退職を提案する”行為。
退職するかどうかを決めるのはあくまで従業員本人。

つまり、会社は提案するだけ。決めるのは本人。


一番の違いは?

種別意思決定者法的ハードルトラブルリスク
解雇会社非常に高い高い
退職勧奨従業員(会社は提案)中程度中〜高い
退職強要会社(強制・威圧)違法最高

飲食店では、「退職勧奨のつもりが、いつの間にか退職強要になっていた」というケースが非常に多いです。


解雇の法的要件は“非常に厳しい”

労働契約法16条では、解雇には客観的合理性と社会的相当性が必要とされています。

つまり、「うちの店に合わない」、「言うことを聞かない」、「雰囲気が悪い」などの感情論はNG。


飲食業に多い「3つの解雇」

普通解雇

勤務態度不良、能力不足、協調性の欠如など。

しかし裁判ではほぼ認められません。
改善指導・記録・配置転換などの“努力”が必須。


懲戒解雇

横領、無断欠勤の連続、暴力行為など。

飲食店では、「 レジ金の持ち出し」、「 SNSでの悪評拡散」、「 顧客への暴言」などが該当します。

ただし“重すぎる処分”と判断されると無効になります。


整理解雇(経営上の理由)

倒産、売上悪化など。

飲食店では、「 コロナ期間の閉店」、「 店舗縮小」、で増えました。

ただし4要件を満たさないと無効です。


退職勧奨と退職強要はまったく違う

退職勧奨

提案するだけ。(違法ではない)
ただし、手法しだいで一瞬で“退職強要”になります。


退職強要とは

◆ しつこく呼び出す
◆ 長時間の説得
◆ シフトから外す
◆ 無視する
◆ 給料を下げる示唆
◆ 「辞めるしかないよね」などを行うこと。

これは完全に違法です。


退職勧奨の正しい進め方(飲食業向け)

事前に改善指導・記録

これが無い退職勧奨はほとんどアウト。


二者面談は「1回15分以内」

長時間の説得は違法リスク。


記録する(日時・場所・発言)

録音が最も確実。


相手の自由意思を尊重する

「考えてみてください」、「持ち帰って大丈夫です」が必須ワード。


LINEで言わない

スクショ問題リスク大。


飲食業で実際にあったNG事例

◆「シフトに入れないなら辞めてもらうしかない」
→ 退職強要・違法

◆「みんな困ってるんだよ?」
→ 同調圧力=パワハラ

◆“勝手に退職願を作成”
→ 違法であり裁判になる

◆“飲み会の場で退職提案”
→ 論外(録音されてます)

◆“無断欠勤ばかりだから解雇で良いですよね?”
→ 記録・事前指導が無いと無効


店舗側がやるべき証拠化

◆ 注意指導書
◆ 就業規則
◆ シフト表
◆ 今日あったトラブル記録
◆ LINEではなくメールでの注意
◆ 報告書の提出

特に飲食店は“言った言わない”が多いため、記録の整備だけで裁判リスクの8割は減ります。


まずやるべきは「改善指導」

解雇・退職勧奨の前に、必ず改善の機会を与える必要があります。

飲食店の場合、「態度」、「接客」、「遅刻」などが多いですが、これも感情論ではNG。


改善指導の具体的ステップ

ステップ1:事実確認

感情的に判断しない。

ステップ2:ルール説明

就業規則が必須。

ステップ3:改善指示

期限を定める(例:3週間)

ステップ4:フォロー

メモ・記録を残す。

ステップ5:結果評価

それでも改善がない場合、退職勧奨へ。


それでも改善しない場合の最終対応

◆ 軽い配置転換
◆ 勤務時間の調整
◆ 最小限の退職勧奨
◆ 法的に認められる範囲の解雇検討

最後は専門家のサポートが必要です。


当事務所から飲食店オーナー様へのアドバイス

“早めの相談で、ほぼ全てのトラブルは未然に防げる”ということです。

飲食業の現場は日々忙しく、法律・労務のトラブル対応まで手が回らないのが現実です。

しかし、労務トラブルは一度起きると長期化し、店舗運営を直撃します。

「辞めてもらいたい従業員がいる」
「改善指導の方法がわからない」
「退職勧奨を進めても大丈夫?」
「解雇しても問題ない?」
「辞めてと言いたいが言い方がわからない」

そんなときは必ずご相談ください。


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