有給休暇が年間55日取得できることも?
飲食店経営者の方から、「有給って最大何日まで持てるの?」、「40日が上限じゃないの?」といった質問をいただくことがあります。
結論から言うと、条件がそろえば“一時的に”最大55日程度の有給休暇を保有・取得できるケースは実際にあります。
目次
有給休暇の基本ルールを整理
有給休暇はいつ、何日付与される?
年次有給休暇は、労働基準法第39条で定められている制度です。
- 雇入れ日から6か月継続勤務
- 全労働日の8割以上出勤
この2つを満たすと、最初の有給休暇が付与されます。
その後の付与日数は、勤続年数に応じて次のように増えていきます。
| 勤続年数 | 付与日数 |
|---|---|
| 6か月 | 10日 |
| 1年6か月 | 11日 |
| 2年6か月 | 12日 |
| 3年6か月 | 14日 |
| 4年6か月 | 16日 |
| 5年6か月 | 18日 |
| 6年6か月以上 | 20日 |
つまり、入社6年半で最大20日が付与され、その後は毎年20日ずつ付与されます。
有給休暇の時効は「2年」
有給休暇には「永久に使える」というイメージを持っている方もいますが、実際には付与日から2年で時効消滅します。
- 今年付与された20日
- 去年付与された20日
この2年分を合わせて、最大40日まで保有できる、というのが基本的な上限です。
「年5日取得義務」との関係
年5日取得義務とは?
2019年4月から、年10日以上の有給休暇が付与される労働者については、毎年5日以上の有給休暇を取得させることが、会社の義務となりました。
これは、労働者が請求しなくても、会社が時季指定をしてでも必ず5日以上取得させなければならない、という強い義務です。
5日取得している場合の最大残日数
毎年20日付与、そのうち5日以上は必ず取得という運用をしている場合、20日 − 5日 = 15日が未消化として残ります。
前年分と合わせると、15日(前年分)+20日(今年分)= 最大35日
それでも「55日」になるのはなぜ?
ポイントは「付与日」と「取得タイミング」
有給休暇が55日程度になるケースは、違法でも、制度の抜け穴でもありません。
法律上のルールを正しく運用した結果、たまたま一時的に多く見える状態です。
カギとなるのは、有給休暇の付与日、有給休暇を取得し始めるタイミングです。
具体例で解説
【前提条件】
- 入社8年目
- 4月1日入社
- 有給休暇の基準日(付与日)が毎年10月1日
- 毎年20日付与される労働者
【状況】
- 前年分の有給をほぼ使っていない
- 今年も有給を使っていない
この時点で、前年分15日+今年分20日=35日を保有している状態です。
【9月から有給取得を開始】
9月に入り、出勤日に有給休暇を連続して取得。
まずは前年分の有給から消化、続いて今年分の有給を取得という運用をします。
【10月1日に新しい有給が付与】
9月から有給を使い続けている途中で、10月1日になり、新たに20日が付与されます。
この時点では、
- 前年分:ほぼ消化済み
- 今年分:まだ多く残っている
- 新たに20日付与
という状態が重なります。
結果として、一時的に最大55日程度の有給休暇が存在しているように見えるという状況が生まれるのです。
重要なのは「一時的」であること
ここで注意してほしいのは、常に55日持てるわけではない、時効(2年)は変わらないという点です。
時間の経過とともに、古い有給は消滅、新しい有給に入れ替わるため、恒常的に55日が維持されることはありません。
退職直前の有給休暇消化
恒常的に55日が維持されるわけではありませんが、退職直前に有給休暇を消化することがあります。
有給休暇消化時に、この55日の問題が起こる可能性が高いです。
飲食店で特に注意したい実務ポイント
シフト制と有給管理の難しさ
飲食店では、シフト制、パート・アルバイトが多い、繁忙期と閑散期の差が大きいといった事情から、「有給はあるけど、実際には取りにくい」という現場が少なくありません。
しかし、取得しにくい、忙しいから後回しという理由は、法的には通用しません。
有給残日数の管理ミスがトラブルに
よくあるトラブル
- 有給残日数を正確に把握していない
- 時効消滅の処理をしていない
- 退職時の有給日数で揉める
特に、「そんなに有給が残っているとは思わなかった」という事態は、55日近くになるケースでは起こりやすいです。
有給管理簿は必須
有給休暇については、付与日、付与日数、取得日、残日数を明確にした年次有給休暇管理簿の作成・保存が義務付けられています。
これがない場合、労基署是正指導、行政調査での指摘につながるリスクがあります。
当事務所からのアドバイス
「有給は取らせない」は最大のリスク
人手不足が深刻な飲食業では、有給を取らせると回らないという声もよく聞きます。
- 年5日未取得 → 1人あたり最大30万円の罰金
- SNS・口コミによる評判悪化
- 採用難の加速
上記は、経営リスクの方がはるかに大きいのが現実です。
有給取得を「仕組み化」する
- 繁忙期を避けた計画的付与
- 閑散期にまとめて取得
- シフト作成時に有給前提で人員配置
といった、制度として回る形を作ることです。
制度が複雑な場合は専門家へ
今回のように、付与日が統一されている、勤続年数が長い、取得タイミングが重なると、経営者自身でも把握が難しいケースが出てきます。
誤った運用は、未払い賃金請求、労基署対応、従業員との信頼低下につながりかねません。
まとめ|55日は「知っていれば防げる・活かせる」
- 有給休暇は入社6年半で20日、その後は毎年20日
- 時効は2年で、基本の上限は40日
- 年5日取得義務を守ると、一般的には最大35日
- ただし、付与日と取得タイミング次第で一時的に55日程度になることがある
これは、違法でも特別扱いでもありません。
正しい知識があるかどうかの差です。
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