スキマバイト直前キャンセルは違法?マッチング時点で労働契約成立とした裁判例
近年、飲食業界では人手不足対策としてスキマバイト(スポットワーク)を活用する店舗が急増しています。
「忙しい日だけ人を入れられて便利」
「急な欠勤対策になる」
その一方で、「直前キャンセルは本当に大丈夫なのか?」という不安を感じている経営者・店長の方も多いのではないでしょうか。
今回、まさにこの点が争われた裁判で、飲食店側に未払い賃金の支払いを命じる判決が出ました。
目次
事件の概要|スキマバイト直前キャンセル訴訟
川崎市の男子大学生は、仲介アプリ最大手「タイミー」を利用し、横浜市港北区の飲食店の求人に応募しました。
契約内容
- 時給:1,162円
- 勤務時間:2時間半
ところが、
出勤予定日の前日、
店舗側から一方的にキャンセル通知が届きます。
学生側は、「すでに労働契約は成立している」として、未払い賃金2,905円を請求し提訴しました。
裁判所の判断|マッチング時点で労働契約は成立
神奈川簡裁・小泉孝博裁判官は、原告(学生)側の主張を全面的に認めました。
判決のポイント
- 仲介アプリでの「マッチング成立時点」で労働契約は成立
- 店側の一方的キャンセルは 解雇権の乱用
- よって、予定されていた賃金は全額支払う義務がある
つまり、「出勤していないから払わなくていい」は通用しないという判断です。
厚生労働省の見解も同じ
実はこの考え方、厚生労働省もすでに明確に示しています。
2025年7月、厚労省は「スキマバイトにおける労働契約の成立時期」について、マッチングが成立した時点で労働契約は成立するという見解を公表しました。
これを受け、それまで多くの仲介会社の規約にあった「出勤して所定の手続を終えるまで契約は成立しない」といった条文は、現在では削除・修正されています。
飲食店にとってのリスクとは?
今回の判決から、飲食店側が負うリスクは明確です。
未払い賃金請求リスク
- 実際に働いていなくても賃金支払い義務が発生
解雇トラブルへの発展
- 直前キャンセル=事実上の解雇
- 正当な理由がなければ無効
企業イメージの低下
- アプリ評価の低下
- 働き手が集まらなくなる
「忙しくなくなった」は通用しない
よくあるキャンセル理由として、思ったより暇そう、予約が減った、社員で回せそうといった声を聞きます。
しかし法律上は、経営上の都合は労働者に転嫁できません。
スキマバイトでも、通常のアルバイトと同じ労働契約です。
飲食店が取るべき実務対応
✔ スキマバイト=正式な労働契約と認識する
「お試し」「仮押さえ」という感覚は危険です。
✔ シフト確定前の募集設計を慎重に
本当に必要な人数か、直前変更が起きないかを事前に検討しましょう。
✔ やむを得ない場合は休業手当の検討
不可抗力で休ませる場合、休業手当(平均賃金の6割以上)が必要になるケースもあります。
飲食業専門社労士からのアドバイス
スキマバイトは、正しく使えば非常に有効な人材確保手段です。
しかし、契約の成立時期、解雇・キャンセルの考え方、賃金・休業手当の扱いを誤ると、思わぬ法的リスクを抱えることになります。
当事務所では、スキマバイト活用時の労務整理、問題が起きた際の実務対応アドバイスを、飲食業に特化してサポートしています。
- スキマバイトでも労働契約は成立する
- マッチング成立=契約成立
- 直前キャンセルは原則NG
- 未払い賃金請求の対象になる
「知らなかった」では済まされない時代です。
不安がある方は、お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。

