飲食業、小売業で労働時間の基礎知識

飲食業、小売業は、シフト制で労働時間や休日(公休日)が決まることが多く、長時間労働になりやすい業種の1つです。

ここでは、飲食業、小売業などサービス業で少なくとも知っておかなければ労働時間に関する知識について紹介します。

基本は1日8時間労働、週40時間

飲食業、小売業に限らず、労働基準法では1日8時間労働、週40時間と定められています。
労働時間とは、拘束時間ではなく休憩を除いた実労働時間を言います。
週とは、就業規則等で定めていない限り、日曜日から土曜日までの1週間になります。

10人未満の飲食業、サービス業は週44時間

飲食業、小売業だけでなく、理美容業、保健衛生業などで、10名未満の店舗は、例外として週44時間まで労働時間が認められます。
また、44時間制を適用するときであっても、届出は必要ありません。

10名未満とは、会社単位ではなく、店舗ごとに人数です。
人数には、正社員だけでなくパート、アルバイトの人数も含まれ、原則は在籍人数です。

複数店舗がある場合、10人未満の店舗と10人以上の店舗が混在する場合は、店舗間で不公平感が出るので管理がしずらい点がネックになるかもしれません。

また、10人を超えてしまうと週40時間制になるので、10人超えることがない店舗以外は適用しないほうが賢明です。

1週間単位の非定型的変形労働時間制

30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業が対象で、労使協定を締結し、労働基準監督署へ届出をして、1週間単位で毎日の労働時間を10時間以内、週40時間にすることができる制度です。

上記の週44時間制では、週の労働時間を延ばすことができますが、「1週間単位の非定型的変形労働時間制」では1日の労働時間を10時間を限度に延長することができます。

ただし、10人未満の店舗でも週の労働時間は40時間になります。
たとえば、週末と平日で忙しさが違い、土日の2日間は10時間労働、平日の4日は5時間労働、1日は公休にすることも可能です。

また、日々の労働時間をその週が始まるまでに通知する必要がありますので、シフト作成は少なくとも1週間単位で作成することになります。

1か月単位の変形労働時間制

1か月以内の期間を平均して1週間の労働時間が40時間(44時間)以内となるように、労働日および労働日ごとの労働時間を設定することにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間(44時間)を超えたりすることができる制度です。

「1か月単位の変形労働時間制」は飲食業、小売業だけではなく、どの業種は問いません。
また、制度を導入するには就業規則または労使協定を締結し、労働基準監督署へ届出が必要になります。

「1週間単位の非定型的変形労働時間制」では、週40時間以内にする必要がありましたが、「1か月単位の変形労働時間制」は日々の労働時間の上限時間もなく、週の労働時間も1カ月を平均して40時間以内にすることができますし、10人未満の飲食業、小売業では44時間制にすることもできます。

就業規則に規定すれば、労使協定を締結する必要もないため、変形労働時間制の中では使いやすい制度だと思います。

1か月単位の変形労働時間制の詳細は、長くなるので詳細は別で紹介します。

飲食業、小売業でよく使われる「1か月単位の変形労働時間制」について

1か月単位の変形労働時間制は、飲食業や小売業のように曜日や月末月初などで、繁閑の差がある業種で有効な労働時間制です。 1か月単位の変形労働時間制とは 1か月以内の期間を週平均の労働時間が40時間(44時間)以内となるよう […]

このほかにも「1年単位の変形労働時間制」もありますが、1日あたりの労働時間の上限時間は10時間、1週間あたりの労働時間の上限時間は52時間と定められており、対象期間が3ヵ月を超える場合、対象期間について1年あたりの労働日数が280日になるなど、飲食業や小売業には向かないため割愛します。

年少者(18歳未満)の労働時間

年少者とは、中学を卒業した年の4月1日から18歳未満の人を言います。
成人に年齢が18歳に引き下げられたため、現在では未成年と年少者は同じになります。

学校に在籍しているかどうかということは、「年少者」の判断には関係ありませんので、高校三年生でも満18歳になれば、他の従業員と同様の労務管理をしても労働基準法上は問題ないですが、学校とアルバイトの両立については一定の配慮が必要になります。

年少者の労働時間は、原則、1日8時間、週40時間の法定労働時間のみが適用されます。
10人未満の飲食業、小売業であっても週40時間です。

また、時間外労働も深夜労働(22時から翌日5時)も認められません。

なお、次のような働き方は例外的に認められています。

  • 週の労働時間が40時間以内で、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内にする場合は、他の日の1労働時間を10時間まで延長すること
  • 週48時間以内、1日8時間以内の範囲内で、「1か月単位変形労働時間制」または「1年単位の変形労働時間制」により労働させること

法定労働時間を超える場合は、36協定の届出を

上記で説明してきた法定労働時間を超えて従業員を労働させる場合は、36協定(時間外、休日労働に関する協定)の締結と労働基準監督署への届け出が必要になります。

36協定は、法定労働時間を超えて働くことは、法律違反になるところ、協定を締結し、労働基準監督署へ届け出ることで、法律違反を免除する書類ですので、とても重要になります。