半日有給休暇後の残業は割増賃金が必要?~時間単位年休との違い・判例・通達から徹底解説~
目次
飲食店で「一番多い残業代の誤解」
飲食店の現場では、次のような相談が後を絶ちません。
- 半日有給のあとに忙しくなって残業した
- 「今日は有給も取ってるから8時間超えてるよね?」
- 店長と給与計算担当で言っていることが違う
そして最終的に出てくるのが、「半日有給のあとに残業したら、割増賃金は必要なのか?」
この問題は、年次有給休暇の法的性質、労働時間の定義、時間単位年休制度を正確に理解していないと、間違えます。
年次有給休暇の法的仕組み(労基法39条)
年次有給休暇の原則は「1日単位」
労働基準法39条1項は、次のように定めています。
使用者は、一定期間継続勤務した労働者に対し、その請求する時季に、有給休暇を与えなければならない。
この規定から読み取れる原則は、年次有給休暇は「1日単位」で与えるものという点です。
例外としての「時間単位年休」(39条4項)
平成22年の法改正により、時間単位の年次有給休暇が明文化されました。
労基法39条4項(要旨)
労使協定を締結すれば、年5日を限度として、時間単位で年休を取得させることができます。
つまり、法律に明記されているのは「時間単位年休」、「半日有給」という言葉は条文上存在しないという整理になります。
「半日有給」と「時間単位年休」の違い
半日有給は違法なのか?
結論から言うと、違法ではありません。
多くの企業(特に飲食業)では、1日の年休を午前・午後に分けて、半日ずつ取得させているという運用をしています。
これは、年休の分割付与、年休の柔軟な運用として、実務上広く認められているものです。
「時間単位年休」とは別制度
重要なのは、半日有給 ≠ 時間単位年休という点です。
| 項目 | 半日有給 | 時間単位年休 |
|---|---|---|
| 法律上の明文 | なし | あり(39条4項) |
| 労使協定 | 不要 | 必要 |
| 上限 | 制限なし | 年5日 |
| 単位 | 半日 | 1時間 |
多くの飲食店は半日有給を「時間単位年休と誤解」しているのが実情です。
労働時間とは何か(割増賃金の前提)
労働時間の定義(判例)
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間(最高裁・三菱重工業長崎造船所事件)
この定義に照らすと、 年次有給休暇の時間は、指揮命令下にない
つまり、半日有給、時間単位年休
いずれも、「労働時間」には含まれません。
行政通達の考え方
厚生労働省の通達でも、一貫して次の整理がされています。
年次有給休暇の取得時間は、実労働時間には算入しない。(昭和63年3月14日 基発150号 ほか)
半日有給後の残業計算【基本原則】
原則整理
👉 残業(割増賃金)は「実労働時間」で判断
ケース別整理
ケース①
午前半休(4時間)+午後5時間勤務
- 実労働:5時間
- 法定8時間未満
👉 割増賃金 不要
ケース②
午前半休+午後8時間勤務
- 実労働:8時間
👉 割増賃金 不要
ケース③
午前半休+午後9時間勤務
- 実労働:9時間
- 1時間分が時間外
👉 割増賃金 必要
よくある誤解
❌ 有給時間+労働時間で8時間超
⭕ 労働した時間だけで判断
時間単位年休でも結論は同じ
時間単位年休を使った場合も、取得した時間、労働した時間は明確に分けて考えます。
時間単位年休を2時間取得し、その後7時間働いた場合
- 実労働:7時間
- 割増賃金:不要
飲食業特有の注意点① シフト制
飲食店では、日によって所定労働時間が違う、繁忙日に長時間労働が集中という特徴があります。
所定労働時間と法定労働時間の違い
- 所定労働時間超
= 必ずしも割増ではない - 法定労働時間(8時間)超
= 割増が必要
👉 ここを混同すると、未払い or 過払いの原因になります。
飲食業特有の注意点② 深夜割増
半日有給の有無に関係なく、22時~翌5時は、深夜割増(25%以上)が必要です。
「今日は有給も取ってるから割増いらない」
これは完全な誤りです。
判例で見る考え方
大星ビル管理事件(最判平成14年2月28日)
- 労働時間該当性は形式ではなく実態で判断
👉 年休時間は労働時間に該当しない、という整理の前提となる考え方。
日本ケミカル事件(東京地判)
- 有給取得日でも実労働時間が8時間を超えれば割増必要
👉 「有給があるから残業にならない」わけではない
行政指導・労基署調査での実務
労基署は次を必ず見ます。
- 就業規則
- 時間単位年休の労使協定
- 勤怠記録
- 給与計算方法
特に飲食業は、アルバイト比率が高い、申告から調査に発展しやすい
👉 制度と運用のズレは即是正対象
当事務所からの実務アドバイス(飲食業向け)
✔ 半日有給なのか
✔ 時間単位年休なのか
言葉ではなく制度で整理してください。
おすすめは、正社員:時間単位年休を制度化、アルバイト:半日有給で運用など、職種別整理です。
- 半日有給の扱い、これで大丈夫?
- 時間単位年休の労使協定がない
- 残業代トラブルを未然に防ぎたい
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