飲食店における従業員の横領手口と対策

飲食店は現金の取り扱いや仕入れ、在庫管理などが多岐に渡るため、従業員による横領リスクが潜んでいます。今回は、どのような手口で横領が行われやすいのか、またその対策としてどのような方法があるのかを具体例を交えて解説します。


横領とは?

まずは「横領」とは何かを簡単におさらいしましょう。
横領とは、会社や店舗などの資産を管理する立場にある者が、信頼を背景にして自分の利益のために資金や物品を不正に持ち出す行為を指します。
飲食店の場合、現金、クレジットカード決済、食材や在庫品などが対象となることが多いです。


飲食店でよく見られる横領の手口

現金管理の不正操作

  • 売上の水増しまたは水減らし
    レジ操作の際、売上金を意図的に操作する方法です。
    例えば、実際の売上よりも少なく入力し、その差額を自分のポケットに入れるといった手口があります。
    また、逆に虚偽の売上を作り、払い戻しを横領するケースも存在します。
  • 釣り銭操作
    お釣りの金額を故意に少なく渡すことで、少額ながらも継続的に利益を得る方法。
    複数の従業員が関与して行う場合もあり、店舗全体で気づきにくいケースがあります。

注文票や領収書の改ざん

  • 虚偽の割引やサービス
    実際には行われなかった割引やサービスを自分名義で処理し、その差額を横領する方法です。
    偽の注文票や領収書を作成して、支払い済みと偽装する手口が見受けられます。
  • クーポンやポイントの不正利用
    顧客に付与されるクーポンやポイントを、内部で操作して自分自身や知人に還元する場合もあります。
    システムの隙を突いた手口は、見逃されやすい特徴があります。

在庫管理・仕入れにおける横領

  • 仕入れ品の私的流用
    食材や飲料を自宅で利用する、または転売することで横領するケース。
    定期的な在庫チェックが行われていないと、不正が蓄積されやすくなります。
  • 架空仕入れの計上
    実際には仕入れていないにもかかわらず、架空の仕入れ伝票を作成し、金銭を横領する手法。
    帳簿の整合性を確認しにくい場合、長期間にわたって行われるリスクがあります。

クレジットカードのボイド処理による不正

  • クレジットカード決済の取り消し(ボイド処理)を悪用
    一度お客様のクレジットカードで決済を行った後、不正なボイド処理(取消処理)を行い、その金額を横領する手口です。
    顧客には請求されないため気づかれにくく、特に忙しい店舗では発覚が遅れるケースがあります。

横領行為は刑事事件になるのか

従業員による横領行為は、刑法上の横領罪や詐欺罪、業務上横領罪に該当する可能性がありますが、経験上状況証拠だけで現行犯じゃないと警察は取り扱ってもらえないことが多いです。

  • 業務上横領罪(刑法第253条)
    店舗の資産を管理する立場にある従業員が、その資産を不正に取得した場合、業務上横領罪として10年以下の懲役が科される可能性があります。
  • 詐欺罪(刑法第246条)
    クレジットカードの不正利用や、架空の仕入れ計上による金銭搾取は、詐欺罪に該当し、10年以下の懲役が科される可能性があります。
  • 被害届と刑事告訴
    横領が発覚した場合、被害届を警察に提出し、刑事事件として立件することができます。また、証拠を確保し、弁護士と相談した上で刑事告訴を行うことで、従業員に対する法的責任を追及することが可能です。

横領対策の基本的なポイント

内部統制の強化

  • 定期的な監査と棚卸し:
    定期的に現金出納帳や在庫管理のチェックを行い、不正の早期発見を狙います。
    第三者による外部監査も有効です。
  • 分業体制の徹底:
    レジ担当、仕入れ担当、会計担当など業務を分け、1人に過剰な権限が集中しないようにします。
    例えば、現金を取り扱う従業員と帳簿を管理する従業員を別にすることで、不正を防ぎやすくなります。

システムの導入と改善

  • POSシステムの活用:
    高機能なPOSシステムを導入し、各取引の記録を自動化します。
    これにより、手作業での入力ミスや意図的な改ざんを防止し、リアルタイムでの不正検知が可能となります。
  • 監視カメラの設置:
    店内の現金管理エリアや、従業員の動線を監視することで、横領行為を事前に抑止する効果があります。
    監視映像は証拠としても有効です。
  • クレジットカード取引のログ管理:
    ボイド処理を含めたクレジットカード取引の履歴を厳しく管理し、不審な取引がないか定期的に監査することで、不正の発覚を早めることができます。

従業員教育と信頼関係の構築

  • 定期的なコンプライアンス研修:
    従業員に対して、横領のリスクとその影響、そして店舗全体の利益を守るための倫理観を養う教育を行います。従業員自身が不正行為に対して危機感を持つことが重要です。
  • 風通しの良い職場環境:
    問題が発生した場合でも、従業員が安心して内部通報できる仕組みを整えることで、早期の問題発見につながります。また、従業員同士の信頼関係を構築することで、不正行為が発生しにくい職場作りを目指します。

まとめ

飲食店は、現金の取り扱いや仕入れなどで多くのリスクを抱えがちですが、適切な内部統制、システムの導入、そして従業員教育により、横領のリスクを大幅に軽減することが可能です。
店舗運営においては、定期的なチェックと従業員との信頼関係が非常に重要です。今一度、自店の管理体制を見直し、万全の対策を講じることで、安心して事業を継続できる環境を整えましょう。