労働基準監督署より怖い?飲食業が今すぐ知るべき「過重労働撲滅特別対策班」の正体と実務対策
目次
「労基署が来るより怖い」と言われる理由
「労働基準監督署が来たとしても、是正すれば大丈夫」
もし、そう考えている飲食店経営者の方がいらっしゃったら、その認識は非常に危険です。
近年、長時間労働や過労死等事案が社会問題となる中、厚生労働省が特に力を入れているのが過重労働撲滅特別対策班です。
この対策班は、一般的な労働基準監督署の調査とは目的も性質も異なります。是正指導が目的ではなく、重大・悪質な長時間労働事案の摘発を前提とした調査を行う組織です。
とくに飲食業は、慢性的な人手不足、長時間労働が常態化しやすい勤務形態、店長・料理長を「管理職」と誤認しているケースなどが重なり、過重労働撲滅特別対策班から重点的に見られやすい業種といえます。
過重労働撲滅特別対策班とは
過重労働撲滅特別対策班とは、厚生労働省および各都道府県労働局に設置されている、長時間労働・過労死等事案に特化した専門チームです。
主な特徴は以下のとおりです。
- 月80時間超、100時間超の時間外労働が疑われる事業場を重点的に監視
- 労災申請、内部通報、相談情報などを端緒に調査を開始
- 是正指導ではなく、刑事責任の追及を視野に入れた調査
- 書類送検や企業名公表に直結するケースも少なくない
つまり、過重労働撲滅特別対策班は「改善を促すための組織」ではなく、悪質な長時間労働を社会から排除するための組織だという点が最大のポイントです。
労働基準監督署との決定的な違い
多くの経営者が混同しがちですが、労働基準監督署と過重労働撲滅特別対策班では、そのスタンスが大きく異なります。
労働基準監督署の場合
- 是正勧告・指導が中心
- 改善状況を見ながら段階的に対応
- 悪質性が低ければ送検に至らないケースも多い
過重労働撲滅特別対策班の場合
- 重大・悪質事案が前提
- 初動から刑事責任を想定
- 書類・データの精査が極めて厳格
飲食店でありがちな「以前、労基署では注意だけで済んだ」という感覚は、過重労働撲滅特別対策班には一切通用しません。
なぜ飲食業が特に狙われるのか
飲食業は、過重労働リスクが非常に高い業種として認識されています。
理由は明確です。
- 慢性的な人手不足により一人当たりの労働時間が長くなりやすい
- 早朝の仕込み、深夜の閉店作業など労働時間が見えにくい
- シフト制でも実際には連勤・長時間勤務になりがち
- 店長・料理長を形式的に管理職扱いしているケースが多い
これらが重なると、行政からは「常習性が高い」「改善の見込みが低い」と評価されやすくなります。
実際にチェックされるポイント
過重労働撲滅特別対策班の調査では、次の点が重点的に確認されます。
- タイムカードや勤怠管理システムの記録
- 36協定の有無と内容、届出状況
- 実際の時間外労働時間数
- 管理監督者に該当するかどうか
- 固定残業代制度の適法性
- シフト表と実労働時間の乖離
特に問題になりやすいのが、「店長だから残業代は不要」という誤った運用です。
管理監督者と認められない場合、過去2年分(場合によっては3年分)の未払い残業代が一気に問題化します。
違反した場合に起こる現実
過重労働撲滅特別対策班の調査で違反が認定されると、次のような事態が現実に起こります。
- 書類送検
- 企業名・店舗名の公表
- 採用活動への深刻な悪影響
- 金融機関・取引先からの信用低下
- 従業員からの残業代請求・集団訴訟
「罰金を払えば終わり」という話では済みません。経営そのものに長期的なダメージを与える点が、最大のリスクです。
飲食店で実際に多いNG事例
実務で特に多いのが、次のようなケースです。
- 36協定を締結・届出していない
- 協定時間を超えて残業させている
- タイムカードの後修正を行っている
- 開店準備・閉店作業を労働時間に含めていない
これらはすべて、言い訳が通用しない明確な違反です。
今すぐ取り組むべき実務対策
最低限、以下の点は早急に確認・対応する必要があります。
- 36協定の内容と実態が一致しているか
- 管理職の該当性を実態ベースで検証
- 実労働時間を正確に把握できているか
- 固定残業代制度が法的に成立しているか
- 長時間労働者への是正措置を行っているか
飲食業専門社労士からのアドバイス
「まだ調査は来ていない」 「うちは小規模だから大丈夫」
そうした油断が、取り返しのつかない結果を招きます。
過重労働撲滅特別対策班の調査は、予告なく突然行われることも珍しくありません。調査が始まってからでは、できる対策はほとんど残されていません。
過重労働対策は、事後対応ではなく事前対応がすべてです。
飲食業特有の勤務実態を理解しないまま制度だけ整えても、かえってリスクを高めてしまうこともあります。
「うちは本当に大丈夫だろうか」と少しでも感じた今こそが、最も安全な相談タイミングです。お問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。

