入社前(雇い入れ時)健康診断の費用は会社負担?

「入社前の健康診断って、会社が払うもの?」
「自己負担にしても問題ない?」
「飲食店は食品を扱うから特別なの?」

飲食店の採用現場で出る質問が、「雇い入れ時健康診断の費用負担」です。

特にアルバイト・パート・外国人スタッフ・スキマ採用が多い飲食業では、慣習で自己負担にしている、昔からそうしている、他店もやっているから大丈夫といった理由で、法的にグレーな運用になっているケースも少なくありません。


「雇い入れ時健康診断」とは?

法律上の位置づけ

雇い入れ時健康診断は、労働安全衛生法第66条第1項および労働安全衛生規則第43条で定められています。

事業者は、常時使用する労働者を雇い入れる際、医師による健康診断を行わなければならない。

つまり、会社の義務、安全配慮義務の一環という位置づけです。


健康診断の内容(雇い入れ時)

雇い入れ時健康診断の検査項目は以下の通りです。

  • 既往歴・業務歴の調査
  • 自覚症状・他覚症状の有無
  • 身長・体重・視力・聴力
  • 胸部X線検査
  • 血圧測定
  • 血液検査
  • 心電図検査
  • 尿検査

飲食店でよくある「簡易検査だけ」、「自己申告書のみ」では、法定要件を満たさない場合があります。


入社前でも「雇い入れ時健康診断」になる?

ここが一番の誤解ポイントです。

入社前であっても、雇用を前提として実施するなら「雇い入れ時健康診断」です。

なぜ?

「雇い入れ時」とは、雇用契約を締結した時点、または締結予定で、就労を前提とする段階指します。

タイミング扱い
内定後・初出勤前雇い入れ時健康診断
採用選考段階原則として対象外

「入社前=自己負担」ではありません。


費用は会社負担?本人負担?

原則:会社負担

厚生労働省の通達・行政解釈では、雇い入れ時健康診断の費用は事業者負担とされています。

理由は明確で、法律で事業者に義務付けられている、労働者の私的行為ではない、事業運営上必要な安全配慮だからです。


「本人負担にしてはいけない」わけではない?

ここが少しややこしいポイントです。

実務上は、一時的に本人立替、後日会社が精算という形は認められています。

❌ 最終的に本人負担
❌ 給与から天引き
❌ 「自己負担とする」就業規則

これらは原則NGと考えるべきです。


飲食業で特に注意すべき理由

食品衛生=安全配慮義務が重い

飲食業は、食品を扱う、不特定多数の顧客がいる、食中毒リスクがあります。

そのため、健康状態の確認は特に重要です。

「だから本人負担でいい」ではなく、「だからこそ会社責任が重い」と考える必要があります。


パート・アルバイトでも対象?

はい、対象になります。

ポイントは「常時使用する労働者かどうか」です。

一般的には、週の所定労働時間が正社員の3/4以上、継続雇用が見込まれる場合は、雇い入れ時健康診断が必要です。


外国人スタッフの場合

技能実習・特定技能・留学生アルバイトでも、日本の労働法が適用されます。

「母国で健康診断を受けているから不要」
原則不可

日本の法定項目を満たす必要があります。


トラブル事例

ケース① 後から返金請求

アルバイトが退職後に「健康診断費用は会社負担では?」と労基署に相談。

👉 是正勧告+過去分返金


ケース② 不採用時の扱い

「健康診断を受けたが結局不採用」
→ 費用は?

原則、

  • 雇用を前提として実施
    会社負担

採用判断前に受診させる運用は要注意です。


よくあるQ&A

Q1.採用条件として「健康診断書提出」を求めてもいい?

👉 原則可能
ただし、費用負担、個人情報の取扱いには注意が必要です。


Q2.指定病院で受けさせてもいい?

👉 問題ありません
ただし、合理性が必要です。


Q3.簡易検査でもOK?

👉 法定項目を満たさない場合はNG


当事務所(飲食業専門社労士)からのアドバイス

飲食店の現場では、「昔からこうしている」、「他店もやっている」、「少額だから大丈夫」という理由で、知らないうちにリスクを抱えているケースが非常に多いです。

健康診断の費用は数千円でも、トラブルになると、是正勧告、過去分の遡及、労基署対応、SNS炎上に発展することもあります。


こんな飲食店は要注意

  • 入社前に「自己負担で健康診断を受けてきて」と言っている
  • 就業規則に費用負担の記載がない
  • アルバイトは対象外だと思っている
  • 外国人スタッフの扱いがあいまい

まとめ

✔ 雇い入れ時健康診断は会社の義務
✔ 入社前でも雇用前提なら対象
✔ 費用は原則会社負担
✔ 飲食業は特にリスクが高い
✔ 運用ルールを明確にすることが重要


「うちは大丈夫かな?」
「今の運用、グレーかも…」

そう思った時点で、すでに見直しどきです。

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